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第1話
039. 初めての街です8
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「ここからなら、一人でだいじょうぶ」
そういってマイは傾き始めた陽の中、黒熊の前でハクを待っていた。
「イツキくんやハクさんにこれ以上迷惑はかけられないから」
アハハと笑うマイからの依頼で街の外にある牧畜農家に牛のエサとして届けた干し草の代金は支払われなかった。
「牛飼さんもアタイたちみたいに困ってるから……
でも、ちゃんとお金は後日払ってくれるって言ってたでしょう?」
「そう、だけど……」
その通りだった。
子ども一人で商品を届けに来たマイの足元を見て、代金を払うのを渋る素振りを見せたので、ボクと(ほとんどは)ハクが抗議をした。
結果、ハクの氷の笑顔で代金の支払いは約束させたけど、手元にお金がないのは事実だったようなので、結果として受け取れてはいない。
「ほら、その代わりにこんなに牛乳貰っちゃったし!」
「そう、なんだけどさ……」
荷車には木でできた蓋つきの桶に入った牛乳が3つ積まれていた。
牛飼のせめてもの誠意という訳だ。
「でも、こんなのって――」
そんなやり取りをしていると黒熊からハクが出てきた。
「報酬もすぐに受け取れたわ。
これはイツキ、アナタの分ね」
ハクがボクに包みをくれた。
思ったよりも、軽かった。
「ありがとう」
精一杯のお礼だった。
やるせない気持ちもあった。
それでも、ハクの持っている包みはボクのものと同じだった。
重みも、手触りも、元々の中身が少ないことはすぐに分かった。
不意の依頼に、急な出費、マイの家や酪農家の経済状況。
全部納得ができる。
チャリッ。
手の中の受け取ったばかりの報酬の入った袋が、音を立てた。
「じゃあ、さ」
一歩、ボクは前に踏み出した。
「その牛乳、売ってくれないかな」
え?
ボクはマイの仕事に耐えて荒れた手を取り、先ほど受け取った今日の依頼の報酬を握らせた。
「牛乳、好きなんだ。
もしよかったら、一つ買わせてくれないかな」
「い、いいけど……
アタイはいいんだけど、イツキくんは……」
その言葉を聞いて、すぐさま荷車から牛乳の入った桶を一つ手に取った。
もう代金は渡してある。
「ありがとう!」
ボクは答える前にお礼を言った。
困惑気味のマイに、ハクも近づいた。
「それじゃあ、ワタシも一つ貰おうかしら。
お代はこれでいいかしら?」
ハクも同じように、受け取った報酬の袋をそのままマイに手渡すとその背後の荷車の方へ向かう。
「あ、あ……
ありがとうね」
マイはその後、家に帰るまで桶の一つ乗った荷車を牽きながら、何度も立ち止まってボクとハクに向かって手を振っていた。
夕日の映し出すボクとハク、足元の二つの桶の影が長くなっていきながら、彼女の姿をずっと見守っていた。
視線を変えないままに、隣に立ったハクに謝った。
「ごめんね。
ボクのせいで」
「ワタシでもそうしたわ。
新鮮な牛乳は美味しいわよ」
ハクはボクの肩に手を置いていてくれた。
そういってマイは傾き始めた陽の中、黒熊の前でハクを待っていた。
「イツキくんやハクさんにこれ以上迷惑はかけられないから」
アハハと笑うマイからの依頼で街の外にある牧畜農家に牛のエサとして届けた干し草の代金は支払われなかった。
「牛飼さんもアタイたちみたいに困ってるから……
でも、ちゃんとお金は後日払ってくれるって言ってたでしょう?」
「そう、だけど……」
その通りだった。
子ども一人で商品を届けに来たマイの足元を見て、代金を払うのを渋る素振りを見せたので、ボクと(ほとんどは)ハクが抗議をした。
結果、ハクの氷の笑顔で代金の支払いは約束させたけど、手元にお金がないのは事実だったようなので、結果として受け取れてはいない。
「ほら、その代わりにこんなに牛乳貰っちゃったし!」
「そう、なんだけどさ……」
荷車には木でできた蓋つきの桶に入った牛乳が3つ積まれていた。
牛飼のせめてもの誠意という訳だ。
「でも、こんなのって――」
そんなやり取りをしていると黒熊からハクが出てきた。
「報酬もすぐに受け取れたわ。
これはイツキ、アナタの分ね」
ハクがボクに包みをくれた。
思ったよりも、軽かった。
「ありがとう」
精一杯のお礼だった。
やるせない気持ちもあった。
それでも、ハクの持っている包みはボクのものと同じだった。
重みも、手触りも、元々の中身が少ないことはすぐに分かった。
不意の依頼に、急な出費、マイの家や酪農家の経済状況。
全部納得ができる。
チャリッ。
手の中の受け取ったばかりの報酬の入った袋が、音を立てた。
「じゃあ、さ」
一歩、ボクは前に踏み出した。
「その牛乳、売ってくれないかな」
え?
ボクはマイの仕事に耐えて荒れた手を取り、先ほど受け取った今日の依頼の報酬を握らせた。
「牛乳、好きなんだ。
もしよかったら、一つ買わせてくれないかな」
「い、いいけど……
アタイはいいんだけど、イツキくんは……」
その言葉を聞いて、すぐさま荷車から牛乳の入った桶を一つ手に取った。
もう代金は渡してある。
「ありがとう!」
ボクは答える前にお礼を言った。
困惑気味のマイに、ハクも近づいた。
「それじゃあ、ワタシも一つ貰おうかしら。
お代はこれでいいかしら?」
ハクも同じように、受け取った報酬の袋をそのままマイに手渡すとその背後の荷車の方へ向かう。
「あ、あ……
ありがとうね」
マイはその後、家に帰るまで桶の一つ乗った荷車を牽きながら、何度も立ち止まってボクとハクに向かって手を振っていた。
夕日の映し出すボクとハク、足元の二つの桶の影が長くなっていきながら、彼女の姿をずっと見守っていた。
視線を変えないままに、隣に立ったハクに謝った。
「ごめんね。
ボクのせいで」
「ワタシでもそうしたわ。
新鮮な牛乳は美味しいわよ」
ハクはボクの肩に手を置いていてくれた。
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