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第1話
024. 登場人物が増え始めます10
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ひとしきり騒いだ翌朝。
初めて身体にアルコールを入れたボクに訪れたのは、胃のむかつきと頭への打撃。
いわゆる二日酔いってやつだ。
「みんなは、だいじょうぶなの?」
見渡すが、誰一人として不調を顔に出している人はいなかった。
あれだけ顔の赤くなっていたフゥも、結果としてずっと飲んでいたハクも、ボクと一緒に騒いでいたアニーもだ。
「お酒、強いんだね」
「あれくらいなら、ね」
ハクはいつものようにけろりとして言って見せた。
今ボクたちが歩いているのは、集落から伸びる道。
例によって舗装されているわけではないけれど、人の行き来があるのかそこまで歩き難いという訳ではない。
なんなら、この世界に来てから最も足の裏への負担が少ない。
「これからどこに行くの?」
「ワシたちの拠点に戻るのだ。
仕事も終えたし、他の収穫もあったから」
「それって例の場所?」
以前にも聞いていた、ハクが案内してくれると言っていた場所の事らしい。
「そうだよー。
いろんな人が集まるから、イツキくんの今後のことも決められると思うんだ」
「いろんな人、か」
正直、楽しみではある。
このファンタジーの世界でどんな人々に会えるのか。
今だって、なかなかのメンバーだ。
色白美人の格闘家 ハク。
野性的な弓の美女 アニー。
アニマルなロリかわいい女の子 マグ。
怖いけどカッコイイ戦士 フゥ。
「ウチのことわすれてない?」
エリィ、女神だけどキミは仲間じゃない。
考えてみると、やっぱり現実世界とは違う。
ヤオ、だっけ?
魔法はあるし、魔物もいる。
動物――は形こそ見覚えがあるやつもいるけど、変な色だったりするし、植物も記憶にあるやつとはサイズや形がおかしい。
「この『世界』てなんていうの?」
ふと思って、前を歩く4人に聞いてみた。
「なんだって?
『世界』……?
オマエ、何言ってるんだ?」
フゥが分かりやすく頭の上に疑問符を立たせるかのように聞き返してきた。
え、意味わからないかな?
「えっと、なんだろう……
名前ってあると思うんだ。
少なくとも、ボクがいたところとは違う世界なんだ。
国って言うくくりで言うと『ニッポン』って世界だったんだけど。
魔法も、魔物もいなかったし。
ボクがいたころは剣や弓を持って戦うことも、なかった」
一同は互いに顔を見合わせた。
「イツキくんの言う、前にいたところがどこかは知らないけど、そんなところもあるんだね」
「いろんなものが違うんだから、きっと世界って言うか――」
「『世界』っていうかどうかは分からないけど、この辺りは国で言えば『ダスタンド王国』。
更にその領内、キャラウッド地方って呼ばれてるね」
地名は初めて聞いた。
ハクは二人での道中でそんなことを説明してはくれなかったぞ。
「あんまり言うことでもないと思って」
ハクは時々、ボクの考えていることを読み取って物を言ってくる。
そういう超能力でもあるんだろうか。
「ともかく、だ。
この田舎の代名詞であるキャラウッドでも人がそこそこ集まる場所があって、オレたちはオマエをつれてそこに行く。
わかったな?」
「わかった、ような。
よくわからないような」
フゥはハッッハハと笑いながら、ボクの頭を大きな掌でグリグリとしてきた。
「いいんだよ。
わからなかったら、行動すれば」
果たして、ほんとうにいいんだろうか?
ボクは何も知らない。
知らないということがどれだけ不安なことか、この人たちは分かってくれるのかな。
「知らなければ知ればいい。
知るためには、見て、聞いて、体験する。
実際に自分が感じることでしか分からないモノってのはあるものよ」
エリィが口にした言葉に、いやに重みを感じた。
これまでの道中、軽口や冗談めいた事ばかりをボクに投げかけて遊んでいる女神の瞳が、この時ばかりは神殿に祀られる神像のように荘厳に見えた。
「じゃあ、教えてくれればいいのに」
「それじゃあ、面白くないじゃない?」
ニヒッとわらった女神にさっきまでの神々しさは見て取れなかった。
コイツ……
絶対、ボクのことをみて遊んでるな。
「さ、さっさとオヤジの飯を食いに戻ろうぜ」
さんせーい。
マグとアニーは手を挙げて同意を示していた。
「その、オヤジってのは?」
「ワタシたちの仕事である依頼を仲介したり、仲間の集まる場所を束ねる人でね。
イイ人なんだけど粗暴でね。
ただ、人望と料理の腕は誰もが認めているわ」
ゴクリ、とノドが鳴る。
「そんなに?」
「そうなのだ。
なんてったって、オヤジさんの料理は……」
「「飯が進む!」」
4人の声が意図せずに重なる。
そんなに、か。
とりあえずの不安は、ボクの胃袋の期待が掻き消してくれた。
初めて身体にアルコールを入れたボクに訪れたのは、胃のむかつきと頭への打撃。
いわゆる二日酔いってやつだ。
「みんなは、だいじょうぶなの?」
見渡すが、誰一人として不調を顔に出している人はいなかった。
あれだけ顔の赤くなっていたフゥも、結果としてずっと飲んでいたハクも、ボクと一緒に騒いでいたアニーもだ。
「お酒、強いんだね」
「あれくらいなら、ね」
ハクはいつものようにけろりとして言って見せた。
今ボクたちが歩いているのは、集落から伸びる道。
例によって舗装されているわけではないけれど、人の行き来があるのかそこまで歩き難いという訳ではない。
なんなら、この世界に来てから最も足の裏への負担が少ない。
「これからどこに行くの?」
「ワシたちの拠点に戻るのだ。
仕事も終えたし、他の収穫もあったから」
「それって例の場所?」
以前にも聞いていた、ハクが案内してくれると言っていた場所の事らしい。
「そうだよー。
いろんな人が集まるから、イツキくんの今後のことも決められると思うんだ」
「いろんな人、か」
正直、楽しみではある。
このファンタジーの世界でどんな人々に会えるのか。
今だって、なかなかのメンバーだ。
色白美人の格闘家 ハク。
野性的な弓の美女 アニー。
アニマルなロリかわいい女の子 マグ。
怖いけどカッコイイ戦士 フゥ。
「ウチのことわすれてない?」
エリィ、女神だけどキミは仲間じゃない。
考えてみると、やっぱり現実世界とは違う。
ヤオ、だっけ?
魔法はあるし、魔物もいる。
動物――は形こそ見覚えがあるやつもいるけど、変な色だったりするし、植物も記憶にあるやつとはサイズや形がおかしい。
「この『世界』てなんていうの?」
ふと思って、前を歩く4人に聞いてみた。
「なんだって?
『世界』……?
オマエ、何言ってるんだ?」
フゥが分かりやすく頭の上に疑問符を立たせるかのように聞き返してきた。
え、意味わからないかな?
「えっと、なんだろう……
名前ってあると思うんだ。
少なくとも、ボクがいたところとは違う世界なんだ。
国って言うくくりで言うと『ニッポン』って世界だったんだけど。
魔法も、魔物もいなかったし。
ボクがいたころは剣や弓を持って戦うことも、なかった」
一同は互いに顔を見合わせた。
「イツキくんの言う、前にいたところがどこかは知らないけど、そんなところもあるんだね」
「いろんなものが違うんだから、きっと世界って言うか――」
「『世界』っていうかどうかは分からないけど、この辺りは国で言えば『ダスタンド王国』。
更にその領内、キャラウッド地方って呼ばれてるね」
地名は初めて聞いた。
ハクは二人での道中でそんなことを説明してはくれなかったぞ。
「あんまり言うことでもないと思って」
ハクは時々、ボクの考えていることを読み取って物を言ってくる。
そういう超能力でもあるんだろうか。
「ともかく、だ。
この田舎の代名詞であるキャラウッドでも人がそこそこ集まる場所があって、オレたちはオマエをつれてそこに行く。
わかったな?」
「わかった、ような。
よくわからないような」
フゥはハッッハハと笑いながら、ボクの頭を大きな掌でグリグリとしてきた。
「いいんだよ。
わからなかったら、行動すれば」
果たして、ほんとうにいいんだろうか?
ボクは何も知らない。
知らないということがどれだけ不安なことか、この人たちは分かってくれるのかな。
「知らなければ知ればいい。
知るためには、見て、聞いて、体験する。
実際に自分が感じることでしか分からないモノってのはあるものよ」
エリィが口にした言葉に、いやに重みを感じた。
これまでの道中、軽口や冗談めいた事ばかりをボクに投げかけて遊んでいる女神の瞳が、この時ばかりは神殿に祀られる神像のように荘厳に見えた。
「じゃあ、教えてくれればいいのに」
「それじゃあ、面白くないじゃない?」
ニヒッとわらった女神にさっきまでの神々しさは見て取れなかった。
コイツ……
絶対、ボクのことをみて遊んでるな。
「さ、さっさとオヤジの飯を食いに戻ろうぜ」
さんせーい。
マグとアニーは手を挙げて同意を示していた。
「その、オヤジってのは?」
「ワタシたちの仕事である依頼を仲介したり、仲間の集まる場所を束ねる人でね。
イイ人なんだけど粗暴でね。
ただ、人望と料理の腕は誰もが認めているわ」
ゴクリ、とノドが鳴る。
「そんなに?」
「そうなのだ。
なんてったって、オヤジさんの料理は……」
「「飯が進む!」」
4人の声が意図せずに重なる。
そんなに、か。
とりあえずの不安は、ボクの胃袋の期待が掻き消してくれた。
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