ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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夢と目合う ※ ※モブユン

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「……ッ!」
 
 片方の腿の上にユンファさんを座らせての至近距離で叫んだ俺には当然、驚いてビクンッと怯えたように肩を竦めたユンファさんは、恐る恐ると俺のことを恐ろしそうに上目遣いで見てくる。
 
「……? だ、大丈夫ですか、…どうかしました…?」
 
「……ぁ…あぁいやごめん…大声を出して…、……」
 
 見えた…見えてしまった、
 ……いや――!
 
「……、…、…」
 
「…いえ、僕は大丈夫です。少し驚いてしまったけど、でも、それだけですから」

 ユンファさんはもう前のめりの体勢ではない。
 ……しかし、彼は驚いたことによって肩を竦めた余韻から今、やや内側に両肩を丸めている。――また、彼はその上でやや腰を丸めるようにして、俺の顔を見ているために――それでなくともオーバーサイズ気味の余裕ある白いカッターシャツが前側にたわみ、そうなれば当然、通常のカッターシャツの第三ボタンまで無く開かれた襟元からは、――っあぁいけない、見えている……。
 
「……? カナイさん?」
 
「…あっ…、…ぁ…、…ぁぁ……」
 
 ユンファさんの丸くなった目、俺の異変を訝しむ薄紫色と目が合う。しかしその次にはまた目線が合わなくなり、白と薄桃と銀色。一瞬ユンファさんと目が合い、また一瞬で合わなくなり、白と薄桃と銀色、ユンファさんと目が、ユンファさんの、……――……っ!!!
 
「……?」
 
「…ぅあぁ…、…ぁぁあ…、あぁぁ……!」
 
 驚嘆に喘ぐ俺の視線が浅ましく上下する。
 ユンファさんの着ているカッターシャツの襟元は平常時でさえ、彼の真っ白い胸板の中央まで見えるほどに緩い。
 そうであるばかりに、彼がそう腰をすこし後ろに引くようにしつつ、両肩を丸め気味にすると前側の布がたわみ――見える、見える、!!!!
 
「……?? ど、どうかし…」
 
「っこれは大変だ……」
 
 これは大変……ゴクリと喉が鳴る。
 いよいよ俺の目は、その官能的に奥まった白さに釘付けである。――な、なんと淫らな…気を抜けば今にもむしゃぶりついてしまいそうである…――その平らな白の左右にちょんちょんっとついている小さな白っぽい薄桃色の乳輪、非勃起状態ながらぷくっと一センチほどはありそうな乳頭、その乳頭の根本から垂れ下がる銀の輪ピアス、…何ならそれより更に奥まったところ…ユンファさんの白い平たいお腹までもが少し覗いて見えている、ユンファさんの白い胸板よりももっと奥深いところが、何という男らしい平たい腹か、全く脂肪のたるみがない……まるで禁足地の神殿のように硬質で平たく、何と影までほの白い。
 
「…大変…?」
 
「…神秘だ…神聖だ…これは大変だ……!」
 
 俺は今にも進みたくなる奥深い禁断の場所に、もはや取り憑かれたよう魅入っている。――この激しい胸の鼓動はどうも独特だ。
 緊張とも警戒とも違う「男の鼓動」だ、とにかく独特なのだ。――俺の長大な肉が息衝いきづくそのためだけに、俺の心臓が速く激しく動いている。本当に独特だ。
 
「……あの、…あの、大丈夫ですか?」
 
 俺が大変大変言い続けていたせいだろうか、ユンファさんは俺の腿の上から退くなり、正座の姿勢から、俺の前の床に両手を着くようにして前のめりの格好を取ると、俺の片方の二の腕を掴んで「大丈夫?」と軽く揺すってくる。――するといよいよ彼の前かがみが深くなるので、余計にを辿っているのだが……ユンファさんが俺をゆさゆさと揺さぶるたび、ゆらゆらと彼のニップルピアスもまた、俺を誘うよう蠱惑的に揺れている。
 
 いやしかし、俺は我ながら明らかにユンファさんの胸元を凝視していたと思うし、というか今もなお……――何ならどう見たって俺、それによって勃起もしているし、それは今もなお…――だというのになぜユンファさんは、なかば本気で『もしかしていきなり体調が悪くなったんじゃないのか?』などと(ド天然な)勘違い、いや心配ができるのかな……?
 
「大丈夫ですかカナイさん? ご気分が悪くなったとか…」
 
「いや……」
 
 むしろ今の俺、それはそれはだと思うのだけれどね…ちなみにそういったユンファさんの、「ド天然勘違い」のもうなかばは『いやまあ多分大丈夫だとは思うけど一応…ずっと思っていたんだが、この人かなり情緒不安定な人だからな…。多分また何かしらをきっかけにして起こった“発作”だろうが…』などと俺のことを不審がっ……。
 
「ああっやめてくれよ! 俺のことを変質者として見ないで、やめて…っ!」
 
 俺はまるでやましいことをパパラッチに撮られて顔を隠す有名人のように、この(やましい自覚のある)顔を隠そうと両手をブンブン、自分の顔の近くで振る。
 
「…え、……はぁ…? いえ、変質者だなんてそんな…あの大丈夫ですか、具合が悪いんじゃ…」
  
「いや違う、どう見ても俺は勃起していr…いや違うのですよこれは、あぁ全く、…またやってしまったよ……」
 
 泣きそう……できる限りこういったは慎もうと決めていたというのに、俺はまた「やってしまった」……己への失望感から泣きそうだ…俺はとりあえず「キュゥゥ…」と鳴きそうな自分の喉仏を摘んでそれを抑え込みながら、落ち着こうと鎖骨の下にもう片手を置き、顔を仰向かせた。神よ……。
 
「…勃起…? また何故突然…いやっすみません、そんなこと聞いちゃいけませんよね、…」
 
「……何故って、甘美なる完熟桃の柔らかさと素晴らしい神聖なる禁足地の神殿が……」
 
「…はあ…?」
 
 ボソボソと俺の声に力無いのは今、にエネルギーが集中しているせいである。――そのせいでユンファさんは今、俺の声を聞き取れなかったのだろう。
 
「えっと、すみません…完熟桃…き、禁足地…?」
 
 いや彼、聞き取れなかったというより単に理解が及ばなかっただけのようである。
 
「ですから要するにお尻の感触とお胸が露わ、…だぁあっいやっだからその、……」

(せっかく誤魔化したというのに)我知らず馬鹿正直に何を言おうとしたのだ俺は、
 はたと我に返った俺は、あぐらに座り直して片手で腰の骨を掴み、もう片手では仮面の額を擦り上げながら俯いた。――いや、俺としては何もわざと仮面の額を擦り上げたわけではない。…今仮面を着けていることを忘れて全く無意味なことをしてしまったが、俺はしばしば後ろに髪を撫で付ける癖があるのである(どうもピョコンと一房だけ俺の言うことを聞かない前髪があってね…)。
 
 いや、今はそんなことはどうでもいい――これではユンファさんの(俺に対する)好感度メーターが、みるみる嫌悪に青褪めてゆく……。
 
「…いえ申し訳ありません…つい、あまりにもお綺麗でその、…つい……」
 
 しまった…変態のようにジロジロ見てしまった……このままでは例の「酷い勘違い」が深まってしまう……。
 いや、ユンファさんのお綺麗な胸元が、――目を奪われるほどに目映いその神秘的な硬質な白が、その硬い平たいところにちょんちょんっとついた薄桃色が、その薄桃色についていた妖艶な銀色のピアスが、あまりにもエッ……お綺麗だったせいである。…はっきりいってあれだけでヌけ…いやあれだけでシコ……いやオナ…センズ……いや、あれだけでまあ、ということ。
 
 だがこのままではマズい――弁明をしなければ、
 俺は俯いたまま、仮面の下で熱くなった顔にダラダラと冷や汗をかきつつ、すぐさま弁明という名の言い訳を早口で連ねる。
 
「…申し訳ありませんでした…あ、あんなのは、セッ…セックハラですよね全く、本当に申し訳無い、今のは忘れてほしい、っというかジロジロ見てしまってすみませんでした、その、つい。…つい出来心といいましょうかお恥ずかしながら男の本能に負けてしまいました…あっあの、あまりにもお綺麗だったもので、いえ決して。決して私は不審者やら変質者やら変態などでは。ましてや私には貴方にセクハラをするつもりなどこれっぽっちもなかったのです、ただ本当に、あまりにもあまりにもお綺麗で……」
 
 それにしてもなんとお綺麗だったことか、感動でも泣けてきた……直に見ると勃…いや、俺が想像していたよりももっと、神々しいほどにお美しかったな……――あれだけでも一生ヌケる。
 
「……え…? あぁいえ。何もそんな……――ふふ…カナイさん?」
 
 ユンファさんは俯いている俺の両頬を、その美しい白い両手で包み込み――そうっと俺の顔を上げさせた彼は、美しく微笑みながらも俺とアイコンタクトを取ってくる。
 
「…えっと…、胸…ですか? 僕の胸…?」
 
 ユンファさんは「えっと」とチラリ自分の胸元を見下ろし、そのあと軽くその辺りを押さえ、それから俺を優しい薄紫色の瞳で見る。
 しゃなり…わずか下手したてに出て傾くそのやさしげな微笑、彼の左耳にぶら下がる銀の十字架とともにキラリと揺れたその美貌は、俺のことを一切咎めるつもりのない、美しい慈愛の微笑を浮かべている。
 
「ふふ…カナイさん」
 
 明らかに咎めようというのではない、ユンファさんのやさしい呼び掛け――に俺はなぜかより酷く罪深いことを犯してしまった気分になり、仮面の下で顔を熱く火照らせながら、罪悪感のまま目を下げる。俺はあまりにも清く美しいユンファさんを見ていられなかったのであるが、彼はそのような俺を励まそうと、優しい声でこう話し掛けてくる。

「…僕はセクハラだなんてそんな、そんなことは少しも思っておりません。…ふ、ふふふ…それに…なんですか、変質者? 不審者って、なんですかそれ。…はは、…いやそっか、僕の胸が見えてしまったんですね」

 ユンファさんが楽しげに笑った気配に、俺がチラと瞳を上げて見れば、可笑おかしそうに目を細めて笑っているユンファさんの優麗な美貌、何と優雅なことか――また見惚れる――しかし、彼は微笑のままやや申し訳なさそうに、少し眉尻を下げる。
 
「…でも、僕の胸を見られたカナイさんには正直、何の非もありません。いうなれば、こんな服を着ている僕が悪いんですよ。――むしろ貴方に恥ずかしい思いをさせてしまって、こちらこそ申し訳ありませんでした」
 
「…いやそんなむしろかなり眼福…んんッ…、と、とにかく、申し訳ありません。…そんな…肌の露出が多い服を着ているからといっても、不躾にその人の体をジロジロと見てよいなどという理屈には、決して……」
 
 …ならない。わかっている。目が泳いでいるまま謝罪していては誠意もクソもないが、これでも俺はかなり心からの反省をしているのである。
 それこそその理屈が許されるのならば、ミニスカートを穿いている女なら痴漢をされても致し方ない、むしろ尻を触られるためにミニスカートを穿いているんだろ、などというような、あまりにも痴漢に都合の良すぎる、とんでもない理屈さえまかり通ってしまうではないか。――俺の理屈を聞いたユンファさんは「なるほど」と笑みながらも、目を大きくした。
 
「……確かに…例えば街にいる女性が、胸の谷間が見える服を着ていたとしても、その方の胸をジロジロ見てしまうというのは…確かに、それは物凄く失礼なことですよね。――カナイさんからはたくさんのことを学ばせていただけるな。とても勉強になります、ありがとうございます。」
 
 柔らかい聡明な声でそう言うユンファさんは、これでかなり「大人の対応」をしてくださっているようではあるのだが、しかしこういった何気ない返答の一つ一つがまた、やはり「No.1キャスト」の裏付けであると思える。――大体の男は自分の「考え」に、多かれ少なかれ矜持きょうじを持っているものである。…そうした己の考えを話した男が、その考えを聞いている相手に、「なるほど、勉強になります」と考えを肯定されながら無垢に目をキラキラされて、気分が良くならないわけがないだろう。
 つまり彼のこれは、さり気なくも実はかなり「上手い返し」だということだ。世渡り上手というか、ね……。
 
「……だけど、…あははは…」
 
 しかし、ユンファさんは俺の言う理屈に理解を示してくださった一方で、その後に破顔し、楽しげな笑い声をあげる。
 
「ふふ、ごめんなさい。はは…カナイさんは凄く真面目な方なんですね。正直、カナイさんが初めてで…真面目なんですね。たかだか僕の胸が見えたくらいで、そんなリアクションをされる方、なかなかいませんよ」

「……グッぅぅ…、……」
 
 た か だ か 僕 の 胸 が 見 え た く ら い で……だって!
 んん゛…まあ女よりか男のほうが、その点に関しては寛容なものなのだろう――女は見られ慣れているというほど胸を見られるそうだが、やはりその視線に聡くなるほど良い気はしないものなんだそうだ――が、…それにしてもユンファさんは、あまりにも自若としているではないか。
 
「…でも、そんなに可愛いリアクションをされると僕、何だか嬉しくなっちゃうな」
 
「……、…」
 
 しかも「むしろ嬉しい」とは、多少本音であるらしい(ほとんど「営業好意」だけれど)……このユンファさんの事もなげな態度から察するに、これまで、ユンファさんの肌を無遠慮にジロジロ見ても許されてきた奴らがごまんといるらしいことが、よくわかった。――まあそりゃあそうか…風俗店のキャストにケグリの店ではストリップショーやオナニーショー……ユンファさんが体を見られ慣れていないはずもなく、何ならむしろ(強いられてのこととはいえ)普段から「見せている」ようなものなのだから、そりゃあこれほど綺麗な人のこの綺麗な肌だ、見ても許されるなら誰だってジロジロ見るか(俺だってショーなら遠慮なく見るだろう)。
 しかも何なら服装を指定可能……確かに『DONKEY』の公式サイトには、キャストにバイブなどを挿れて来させることも可能だとか、公然わいせつ罪に該当しないレベルであれば服装指定も幅広く可能だとか、そういった文言もあった(もちろん別料金でね)。
 
 つまり――下手すればかなり際どい格好をさせられたユンファさんだとか、バイブを膣やアナルに挿れられたまま頬を赤らめたユンファさん、そういったユンファさんとご対面なんてことも可能だと、なるほど命令注文とあらば言いなりの彼はなんだってするわけだ……ムカつくね…考えたら凄く嫌な気分。――ユンファさんが俺の元に来るまでは嫉妬しないと決めてはいるのだけれど、やっぱり妬けるものは妬ける。
 
 
「…見ていいですよ」
 
 ユンファさんの極めて何気ない声が、そう言う。
 
「……え」
 
 俺はあまりの衝撃にさっと目を上げた。
 俺と目が合うなりユンファさんは、はにかみも何もしていない、悠然とした微笑をくいと傾ける。
 
「…僕は見ていただきたくて、わざわざこんな服を着てきたんです。…これ、実は私服ではないんですよ、お店から借りてきたものだから……つまり此処に来る前に僕は、あえてこの服を選んで、着てきたんです。――カナイさんに、少しでもセクシーだと思っていただきたくて」
 
「……、…、…」
 
 そんな馬鹿な……これは明らかに「営業好意」だというのに、俺はなかば真に受けてドッキドキしている…――というかそんなことを仰られたら俺、…今の俺がもはやなけなしの遠慮の心(理性)を無くしたら、最悪今此処(部屋の入り口)でユンファさんを襲いかねないのだが?
 我ながらで事が済みそうにもないからこそ、俺は先ほど取り乱すほどに慌てたのである。――しかし聞くところによるとこうした風俗店ではまず、殺菌効果のあるうがい薬でうがいをしたあとシャワーを浴びて、また殺菌効果のあるボディーソープで俺の陰茎を洗うというステップがあるとか。…というのはもちろん、お互いの性病予防のためである。
 ……すなわちそれだから俺にとってユンファさんの胸元が、「禁足地なる神殿」だったのである。厳密にいえば、ね。
 
「だから…僕の胸でもよろしければ、むしろもっと見てください」
 
 とにっこり笑ったユンファさんだが、
 
「……、…、…」
 
 とんでもないことを仰られていると彼、わかってらっしゃるのだろうか……最悪俺、そういった「ステップ」を飛び越えた強姦にも近しい格好で、ユンファさんにけだもののように飛び掛り、無我夢中で彼の肉体にむしゃぶりついてしまいかねないのだけれど……?
 ……呆然としながら目を熱く潤ませ、その情欲の涙目でユンファさんをただ眺めている俺に、彼はにこっと悪戯な笑みを浮かべた。――深い笑みの形の桃色、ぷっくりと厚い上下の唇の隙間から、白く綺麗な前歯がチラと少し覗く。…可憐だ…。
 
「……もしよろしければ、どうぞ。…はい……」
 
 と、本気で事もなげに「どうぞ」としとやかに微笑んだユンファさんはさっと目を下げ、自分のカッターシャツの、開かれた襟元の最終地点――谷の一番深く狭まっているところ――に人差し指と中指を引っ掛けて浮かせながら、やや前のめる。
 ……すなわち俺が今少しでも目を下げたなり、俺の目にはまたユンファさんの「禁足地たる神殿」が、あまりにも容易に映るわけだが――俺はあまりにもこのシチュエーションに興奮をしすぎて、逆に目を下げられない。
 
「よろしければ、どうぞお好きなだけ」
 
「……、…、…」
 
 初恋のお兄さんに優しく微笑まれながら――「あぁ! 僕の胸ジロジロ見てただろ君、…はは、いいよ。…僕の胸…好きなだけ見ていいよ? ほら…はい、どうぞ♡」と誘われている俺(※甘酸っぱい初恋フィルターによる脚色済み)、…もはや現実とさえ思えない。何度夢見てきたかわからないシチュエーションでさえある。
 自分の心臓の鼓動が煩わしいほどである。速く強く全力で生きている俺の心臓は、生命があればこそ、性欲というものも果てしないのだと教えてくる。
 ……しかし俺は逆に呪われたかのように、石のように固まって動けないでいるのだ。頭がぼーっとしてきた(興奮のあまりに)。
 
「……カナイさん…?」
 
「…いや俺見たら最悪此処で貴方を襲ってしまうのだけれど…」
 
 と辛うじて力なくも早口に、せめてもの「お互いのためにそれは駄目」をユンファさんへと伝えた俺だが、
 
「……、ふふ…――カナイさん…」
 
 しかし、そのような俺を見兼ねたユンファさんは優しげに笑うなり、その切れ長の目を妖艶に細めると――あぐらをかいて座っている俺の上に跨がってきた。
 
「……っ!?」
 
「…はは…よい、しょ……」
 
 そして彼は俺の上体との距離を詰めながら、俺の上に腰を下ろす――(もちろんお互いに服は着たままだが)いわゆる「対面座位」の体勢である。…ユンファさんは当然のように、俺の勃起の上へと腰を下ろし、俺のうなじに軽く両腕を引っ掛けて、俺のことを見下ろしてくる。
 ……俺は妖艶な微笑を浮かべたユンファさんにやや見下される形で、陰りによって群青に色を変えた彼の、その誘惑の切れ長の目に見惚れている。
 
 
 
「……カナイさん。もしよろしければ是非…僕のこと、此処で襲ってくださいませんか…?」
 
 
 
「……、…、…はい…?」
 
 
 いやしかしさまざまなステップがあのお靴も脱いでいないし此処まだ出入り口であるし何より風呂にも何もうがいも、……え……?
 
 
 
 
 
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