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夢と目合う ※ ※モブユン
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しおりを挟むロマンチシストの俺が抱く夢、殊ユンファさんに関係する叶えたい夢は大小問わず尽きない――当然である。俺のリビドーそのものといえる存在が彼なのだ――が、とはいえ幸いにも、俺は降って湧いて出てくるかのように次々生まれては尽きない大小の夢を叶えるための、その土台となる大きな夢を既に一つ叶えている。
既に叶えられた俺の大きな夢とは――あの「夢のような奇跡の一夜」のこと――俺の初恋の人であるユンファさんにもまた、俺に恋をしていただくことが叶った。
まあ要するに、俺と念願の初恋の人であるユンファさんが、まさかというほど奇跡的に両想いになれたということである。
いわば枯松に曇華――枯れ木に花――俺の大いなる夢が叶ったあの夜は、まさに奇跡の夜というに相応しい夜――あの夜はまさに、「夢のような奇跡の一夜」であった。
それは俺とユンファさんが約十一年ぶりに再会した夜のこと――具体的にいえば、俺が客としてあのオメガ専門高級風俗店『DONKEY』を利用し、ユンファさんのことをその店のキャスト「月」として指名した夜のことである。
ちなみに、なぜ「奇跡的だ」などと自信家の俺があたかも慎み深い男のような物言いをしているかというと、……まあそれは追々わかることであろう。
さて、その頃の俺はもうすっかり決心を固めていた。
それは当為我が初志貫徹にもう抗わず服従し、俺はすべからく月下・夜伽・曇華と結婚せねぱならない、という決心である。
そしてとうとう神輿を上げたその頃の俺は、方々に行動を伴わせつつも慎重に計画を立てていた。
如何にしてユンファさんと結婚するか、いや、まずはユンファさんをあのノダガワ・ケグリの元から引き離すことからか――ユンファさんが恋心を抱けない俺との結婚を望まなかったにしても、彼と結婚するためならば俺は、一向手段など選ばないつもりである。
まして俺に課せられた恣意的な事情を鑑みると、どうしたって世間的な正義の順序に囚われていてはままならない。
例えば結婚する時点でユンファさんが俺に惚れていようがいまいが、子供があとか先かなど、その点にこだわれるだけの時間は俺にない。
子供が結婚の契機となるなら俺は、ユンファさんの意思関係なしにも酷薄に彼を妊娠させよう。たとえ彼のことをどこかに監禁拘束してでもね。この場合はストックホルム症候群――加害者に恋をしてしまう被害者の心理――の作用を狙うつもりだ。…念のためユンファさんを監禁するにうってつけの部屋もチェックしておこうか。
またその時にしろ別の機会にしろ、必要ならば、俺はユンファさんのことを拘束した上で彼のうなじに噛み付き、無理やりにもユンファさんを俺のつがいとしよう。
その既成事実が結婚に繋がるのならば、俺はそれもまたやむを得ないことだと考えている――オメガを無理やりつがいにするとは明確な犯罪行為ではあるが、いずれは必ず幸せになれる二人が結ばれるためならば、それも必要悪である――。
どれほど強引で乱暴で野蛮なプロセスを経てしても畢竟俺は絶対に、ユンファさんと結婚をする。
いや、俺とユンファさんはすべからくというほど結婚するべきなのである。完璧なる美貌を持って生まれた俺に相応しいのはあの完璧なる美貌の銀狼であり、あの月華で誂えられた銀の被毛の横に据えられて全く相応しいのは、我が陽光を湛えたこの黄金の被毛の他には有り得ない。
しかしゆめゆめ初手を間違えてはならない。
なまじっかなところで出鼻を挫かれると、その時点で人生を賭した夢のチャンスをまるごと失う可能性もあるわけだ。――まあ、ただでは転ばないのが俺でもあるのだがね。
これは俺の人生を、俺の命を懸けた背水の陣だ。
俺は決めている。――もし月下・夜伽・曇華を手に入れられなかった場合は死ぬ。俺の生命たる彼のいない俺の人生など何にも劣る、呆れるほどくだらない、それならよほど死んだほうがマシなので、何もこれは比喩などではなく――その場合俺は潔く手首を切って今度こそ死ぬつもりだ。
このまたとない命を懸けている以上、俺は何があろうとも、たとえどのような汚い手段を取ろうがどれほどの醜態を晒そうが、もう月下・夜伽・曇華を諦める選択肢など金輪際選ぶことはない。
――とはいえがむしゃらに真正面からぶつかるだけでは、月と見紛えた白熱灯に体当たりする蛾やら蝿やらと同じである。
では――どうすれば上手く事が運ぶか。
すると俺はあるとき、ふと思い付いた。
ユンファさんが本当に俺の“運命のつがい”か否か、ということを確かめておこう。
“運命のつがい”かどうか、という点を明らかにしておくことは、割に要ともなりそうだ。――もし本当にそうであった場合、俺の計画はその時点で勝ったも同然、御の字も約束されたようなものである。
まあ例えばこれで“運命のつがい”ではなかったとしてもそれはそれである。そうであろうがなかろうが、あの日少なからず俺とユンファさんの間に漂った運命の目合いの気配は、そうではなかったからといっても、何かしら特別な宿運であったことには間違いないのだ。
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