ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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目覚まし草は夢を見る

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 そういえばね、ユンファさん――。
 を、俺は随分前から知っていたんだ。
 
 これも定められた運命に違いない。
 
 だから俺は、いずれ貴方をKINGにしてみせよう。
 貴方に奴隷なんていう身分は相応しくない。
 貴方は王となるべき立場の、王子なのですから。
 
 
 貴方は知らないだけだ。
 ――まだ、知らないだけだよ。
 
 
 ところで俺たち、本当はきっと同じ一つの魂でした。
 月下美人貴方はナイトクイーンとも呼ばれていますが、アクアマリンは、夜の女王とも呼ばれています。
 俺たちは同じ光無くして輝けぬ宿命――そして俺は、貴方の太陽となります。貴方の光は、俺の光です。
 貴方は貴方自身の光を認めなければ輝けない。そして貴方の光無くして輝けない俺は、貴方の光でもあるのです。
 
 貴方は俺無くして、輝けない。
 貴方は俺無くして、貴方にはなれないのです。
 俺が貴方無くして生きられないのと同じことです。
 俺たちが一つとなると――俺たちの光と影もまた、一つとなります。
 
 愛しています、曇華ユンファさん――。
 貴方だけを、貴方だけを愛しています。幸い俺はこれまで浮気をしませんでした。共に死ぬ必要は無さそうです。
 
 そういえば俺は、貴方の命が欲しいのです。
 俺が生きるために、貴方の命が欲しいのです。
 ――だからその代わり、俺の命をあげる。貴方が俺を憎むときが来たなら、俺を殺してください。――貴方が俺を愛し続ける限り、俺のことを生かし続けてください。
 
 二人きりでどこまでも参りましょう。
 俺に足りないのは貴方だけです――貴方に足りないのも、たった俺だけなのです。
 もともとは一つだったのですから、俺たちは二人で在ってこそ、完璧な存在となれるのです。
 
 
 だから貴方を幸せにしてあげる。
 世界で一番に幸せにしてあげる。
 ――だからその代わり、永遠に俺の側に居てください。
 
 
 貴方になら何だってしてあげる。
 貴方になら何だってあげるよ。
 ――だからその代わり、貴方の全てを俺にください。
 
 
 貴方だけを愛してあげる。
 まばたきなどしないで、貴方だけを見つめてあげる。
 ――だからその代わり、俺と永遠に同じ夢を見てください。
 
 
 俺は貴方の前でだけは絶対に目を塞ぎません。
 貴方の傷も何もかもすべてを見留め、そして愛すると誓います。
 ――だからその代わり、俺の瞳だけを見つめてください。そして、俺だけをその美しいタンザナイトの瞳に映し、どうか俺の魂をすべて絡め取って、その貴石の中に俺のすべてを閉じ込めてください。俺は貴方の美しい瞳の中で暮らしたいのです。
 
 
 今こそ十一年前の約束を果たしましょう。
 時は満ちた――今こそ貴方を、お迎えにあがります。
 ――俺と結婚してください、我が初恋のつがいよ。
 
 
 やがては必ず永恋――これは必然、これが運命さだめ
 
 
 変わらない夢を求めて――俺は今、変わります。
 
 
 ユンファが欲しい、――俺のユンファ――貴方が欲しい、貴方が欲しい、――俺の月下ツキシタ夜伽ヤガキ曇華ユンファ――貴方が欲しい、貴方が欲しい、……ねえ曇華ユンファ…?
 名字はどうする? 俺……月下になってもいいよ。
 
 
 そんなところは貴方の居場所じゃない。
 死ねばいいのに、汚ぇ手で俺のユンファに触るな!!
 そんなゴミ溜めで生き抜こうとするべきじゃない。
 相応しくない、相応しくない、相応しくない!
 
 貴方は蓮ではないのです。泥の中で咲くような花ではない、貴方は、貴方は、貴方は豊かな木やコケに根を宿してこそ美しい花を咲かせることができる、気高き月下美人なのです!
 クジャクサボテン属の貴方ですから、間違いなく貴方は俺の背に縋るべきなのです。――ですからどうかの幹に宿り、美しい白い花を咲かせてください。
 
 俺のこの身に根を伸ばし俺が身動きできぬほど絡まれ。
 俺の体に根付いて満開の花を、どうぞ咲かせて。
 心配しないで……もう頼り甲斐のない少年の小さく狭い体ではありません。
 
 
 俺が枯木となれば貴方も死ぬけれど、大丈夫。
 ――甘く潤んだ貴方が俺を枯らしはしないだろう。
 それに、俺たちは元より死ぬなら共に死ぬ運命なのですから、何も問題はありません。
 
 
 大丈夫。芳しい色香を漂わせてもこれからは大丈夫。
 これからは俺が貴方を抱擁して、命を懸けて守ってあげるからね――。
 

 
 待って、…俺の夢は軽躁けいそうだ、軽躁、俺の頭は軽躁だ、…軽躁だ、軽躁だ、待って、…問題無い、本当に? 嘘だよ、こんな……――ちょっと、まだ……駄目、…嘘だよ。なんてね。
 
 
 ちゃんと浮気しなかった……?
 大丈夫、それは恋じゃないから、ゆるしてあげる。
 
 
 我が月下美人よ、さあもうそろそろ目を覚まして。俺と永遠の夢を生きよう。これからは目覚まし草の俺と一緒に、おかしくて甘くて耽溺するような夢だけを見よう――運命さだめ通りに、永遠に。
 
 
 
 
    つづく
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