ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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目覚める夢

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「とりあえずご両親に連絡して、お薬すぐ持ってきてもらえるように先生のほうから頼んでおくね。もし無理そうなら、先生が送っていってあげる。――ごめんね、本当なら保健室で待っててもらいたいんだけど…怪我の手当てが終わり次第空くと思うから。ちょおっとだけ待っててくれるかな…」
 
 そのように擁護の先生から断られ、僕は学校の図書室に入った。――文化祭の日はその図書室、本来はその日誰も利用しないということと、外部からの来客に万が一本を盗まれてしまっては困るということで締め切られ、施錠されていた。
 そのため図書室の前までは先生と共に、――たまたまなのかはわからないが――その先生は図書室の鍵を持っていたためそれを開けてもらい、そうして僕はその図書室に入った(つまり僕は、があっては困るから、と人気ひとけのないところに隔離されたのである)。
 
 ……のだが、僕が“最低最悪の文化祭だ”と思ったのには、もう一つ理由がある。
  
「…あっ……」
 
 コンタクトを落としてしまったのだ。
 オメガ排卵期中は、ぽろっぽろっと悲しくもないのに勝手に涙が溢れるくらい目が潤む。…その上僕は、文化祭ともあっていつもより早い時間からコンタクトをつけていたため、そもそもとしては目が乾いていた。
 
 ドライアイの、涙目――そう…そのせいで、せっかく図書室で待つんだし本でも読んで待っていよう、と思ったのも束の間――涙のせいでコンタクトがずれてしまい、直そうと指をコンタクトに、すると乾きで浮いていたコンタクトがパリッと離れ、まばたきの拍子にぽろっ…僕の指先から転げ落ち、コンタクトレンズはひらはらと下へ落ちていった。
 
「…ぁ、コンタクト、……?」
 
 更に――慌てて下を見た僕だったが、コンタクトが外れてしまった片目は瞑りざるを得なかった。
 というのも僕は、本好きがむしろ祟ったか…大学生になるまでは、コンタクトユーザーであったのだ――ちなみに今は両親がお金を出してくれて、目の中にコンタクトを入れる手術をしたために常に裸眼でも見えている――が、実は眼鏡も持っていなかった。
 
 いや実は僕、子供の頃は眼鏡を持ってはいたのだ。
 しかし、あまりにも目が悪すぎてレンズが分厚くなりすぎ(いわば瓶底メガネとなり)、それが重たいせいで耳が若干千切れてしまってから、コンタクトに切り替えたのである。――つまりこのときの僕は、裸眼であると机の上のものでさえ、舐めるような距離でなければ、何も見えていなかったのだ。
 
 要するに、(コンタクトが外れて)かなり目の悪い片目と、コンタクトで視力補正をしている片目では、両目のその視力差に具合が悪くなること請け合いだった、というわけである。
 それで僕は片目を瞑り、まずは服にコンタクトがついていないかを確認、無し。…次には慌てて、その場に膝をついて手をついて、土下座するような姿勢で床に顔を近寄せた。
 しかしどこにもコンタクトは無く――結論からいうが。
 
「……、…っぁ…? あぁ゛…!」
 
 僕は片目を瞑っていたほうの膝で、コンタクトを踏みつけていたらしい。――しかも更に悪いことに、コンタクトを探すため、ずり、ずり…と膝をついたまま小刻みに後ずさってしまい(土下座姿勢じゃないと床が見えなかったせいだ)…――コンタクトは、割れて粉々になっていた。
 いくら柔らかく、比較的割れにくいソフトコンタクトレンズであっても、踏んだ上で床と膝に擦られれば、そりゃあ割れもする…――ただ落としただけならばまだしも――そうしてコンタクトを割ってしまった僕は。
 
「…っはぁぁぁ…ほんっと最悪、……」

 ちなみにコンタクトレンズを割ったのも、人生でこれが最後で最後、一度きりのことであった。
 そりゃあ記憶にも残るというものである――。
 
 
 
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