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目覚める夢
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しおりを挟む「…………」
いや、寒かったから…は、どうなんだ。
ソンジュさんを何だと思ってるんだよ、「寒かったから」(もふもふの)ソンジュさんに抱き着きました、って…――おいおい、我ながら呆れる、ソンジュさんを湯たんぽか何かだとでも思っているのかよ、僕は。
大体、秋ではそこまで寒いというほどのことでもないし、この家自体そもそも空調調整がされているのか、さながら適温というようである――つまり「寒かったから」は、理由にさえなっていない。
しかもそれでは僕、まるでソンジュさんのあのもふもふに住み着こうという寄生虫のようではないか…、いや実際には絶対、ソンジュさんの毛の中にはダニやらノミなんかいるわけもないんだろうが、僕がそうなっちゃあ鬱陶しいそれらと同じようなものである…――とにかく、要約「暖を取りたくてくっつきました」はさすがに駄目だろう。
「……、…、…」
いやでも逆によかった、こうしてシュミレーションをしていなかったらあるいは僕、マジでそう言ってしまったかもわからない…危ない危ない…――さすがの僕でもわかる、自ら思い付いていてこんなこという権利は正直ないんだが――さすがにそれは失礼というか興ざめさせてしまうというか、もう少し何とかならないものか、僕だってもう少しこう、ソンジュさんがしばしば言ってくださるような、ああいうロマンチックな……いやいや、それこそ別に無理して、特別なことを言う必要はないか。
何なら僕はその際、本当のことを素直にいえばいいだけの、……。
「……、…」
素直に本当のことをいう、となると、僕…「ソンジュさんと(恋人として)いちゃいちゃしたくて、抱き着きました」なんて――言わなきゃ、いけないのか…。
「…それは、……」
ちょっと、ハードルが高いな…――ハッとして目を瞠った僕は、また頬が熱くなってしまった。
い、言えるだろうか、僕に、そんなこと…?
いや、いや駄目だ、ここは素直にならなければ。素直に、素直に…――性奴隷であった分、僕にとってはまだスキンシップのほうがハードルが低いようである。
いやしかし、素直にとはいうが――。
「……、…」
僕は顎に人差し指の側面を添えて、首を傾げる。
言葉の件で素直に、というと例えばだが、ソンジュさんのロマンチックな褒め言葉に、素直に喜ぶ…だとか、いやまあ、もちろんそれにも努めようとは思うのだ。――しかしソンジュさんには僕の嘘など、いともたやすく見抜かれてしまうことも事実である。
つまり嬉しいのに「嬉しくない」、というのもバレてしまうということだが、それを逆にいうと――特に嬉しくもない状況で、ある意味では媚びて「嬉しい!」と大袈裟に喜んでしまった場合でもまた、それがありのまま、彼には筒抜けになってしまう…ということでもあるのだ。
そうして、あえて好かれようとオーバーにはしゃぐ演技をしたところで、ソンジュさんがそれを見抜いてしまう以上は、下手すれば逆に薄ら寒いと嫌われる可能性さえある。…そしてそれはもちろん、「いちゃいちゃしたくて」だとか、意識的に甘ったれたことを言った場合でも同様だろう。――そもそも僕なんかがそんなことを言ったところで、正直ちっとも可愛くはない。…それこそ胸がときめくどころか薄ら寒いのはそうか……じゃあ、僕はどうしたらいいんだ。
「…………」
難しいな…それでなくとも恋愛経験のない僕には、恋愛自体が難しいことだというのに――“神の目”を持つソンジュさんが恋人であると、普通の人を相手取るよりも、もっと難易度が高くなっているような気がするのだが。
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