ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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夢見る瞳

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「…………」
 
 僕はダイニングテーブルに戻り、また椅子に腰掛ける。
 そんな僕の目の前には、あたたかいホットココア――モグスさんが「食えないなりにせめてこれ飲みな」と淹れてくださった、白いマシュマロの浮くホットココアがある。
 それが入ったクリーム色のマグカップで、冷えた両手をあたためながら――僕はそのホットココアを見下ろして、…考える。
 
 
 した…とはいえ、これはただの憶測だ。
 こんなのは僕の、ただの憶測だが…――ソンジュさんは、もしや。
 
 
 “「ね。よっぽどソンジュにピッタリじゃん。似た者同士仲良くやれよ、このお~」”
 

「…………」
 
 あのユリメさんのセリフ、正直僕にはもう、としか捉えられない。
 
 よっぽど――。…つまり。
 
 ソンジュさんにはもう――んじゃないのだろうか。
 
 彼の…――それが、…僕。
 つまりソンジュさんは、ご両親に決められた自分の人生の道筋――九条ヲク家の当主を継ぐことを受け入れる代わりに、として。
 ご両親に決められた相手ではなく、。――そればかりのは、せめて許してほしいと。
 
「……、…」
 
 彼のいうとは、なんじゃないだろうか。――僕はどうも、そう考えてしまうのである。

 ソンジュさんは――。
 これまで必死に耐えて、十分でやってきた。
 なんにでも従い、一生懸命期待に応えようと努力し続けて――本当は自由に自分のやりたいことを、自分の人生の舵取りを自分でやりたいところをぐっと堪え、両親の舵取りにおもねることを決めた。
 
 
 “「…なぜだ…? 俺はただ幸せになりたいだけなのに、…というのか、俺は幸せになったらいけないのか、俺は…操り人形なんかじゃないんだ、…幸せに、なりたい…愛されたい…愛されたい、愛されたい…愛して、…俺を愛してよ…俺を見て、俺の話を聞いて、俺を見てよ、俺を見て、お願いだ……」”
 
 
「…………」
 
 これは悲痛な、彼のご両親への願いだったのではないだろうか。
 自分の人生のその他は、もう全て九条ヲク家に明け渡すから…だからその代わり、せめて、せめて結婚ばかりは――生涯を共にする伴侶を決めることばかりは――本当に好きになった人としたい、という…悲しい我儘。…好きな人と結婚をして、好きな人と子を成し、好きな人と生涯を共に歩んでゆく幸せばかりは俺にも、許してほしい。
 
 
 
 そのばかりはどうか、自分にも与えてほしい。
 ちゃんとこれからも、初めから何もかもが決められていた窮屈な人生にも、自分は甘んじるから。だからどうか、それだけでも――好きな人と結婚をすることだけはどうか、許してほしい。
 
 
 
 もし、ソンジュさんのであるなら…――。
 
 
 
「……、…――。」
 
 
 僕は、どうしたらいい。
 
 
 
 
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