ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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夢見る瞳

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「…こういうことに関してはあまり恥ずかしがらないのですね、ユンファさん……」
 
 どこか呆れた様子のソンジュさんは、はぁ…とため息をつきながら顔を伏せる。――目線も伏せてはいるものの、彼は下にいる僕を見ているわけではない。やはり僕のことをできるだけ見ないように、と努めているようだ。
 
「いや、そんなに恥ずかしいことでしょうか。…エロいというのはつまり、僕に釣られてムラムラしてしまうから、お辛いということでしょう」
 
 ましてや僕は性奴隷であったわけであり、するとソンジュさんの中にもやはり、ある程度はセックスと僕がイコールされているところもあるだろう。――そもそも僕とソンジュさんは実際セックスもしたわけだし、僕が感じている姿を見て、セックスを連想しないほうがおかしい。
 それこそ“狼化”していて、それでなくともムラムラしているのだろうソンジュさんなら、誰の何を見たってムラムラしてしまうくらいかもしれないわけだ。
 
「…………」
 
「恥ずかしいことではありません。僕も別に恥ずかしくありませんし、気にしてもいません。仕方がないことかと」
 
 僕は目こそ合わないにしても、ソンジュさんの顔を見て微笑んだ。
 それこそケグリ氏たちが僕にオナニーをさせ、そしてその感じている僕の姿を見ているうちにムラムラし、勃起するのと同じようなものである。
 性的に見てもいい対象が、性的な反応をしている様に唆られてしまうというのは、あくまで人として当然のことであり、ましてや、そもそもムラムラしている状態でそんな姿を見たら、さすがに誰だってセックスしたいという衝動が生まれるものだろう。――すると僕は別に、その件に関しては慣れているというのもあって、本当になんら思うところがないのだ。
 
「……、…、…」
 
 僕は口角を上げて気にしないで、とソンジュさんをおもんばかったつもりだったのだが、大きく裂けた口の端をひくひくひく、とさせたソンジュさんは顔も目も伏せたまま、「思うに、勘違いしていませんか」と低くボソリ、そう尋ねてくる。
 
「……? 勘違い、ですか」
 
「そうです。俺は何も、貴方が性奴隷だったからとか、貴方とならいつでも気軽にセックスができるからとか、そんな馬鹿馬鹿しいことを原因にしてムラムラしたわけじゃありません。」
 
「……はあ…」
 
 どうもまた見透かされている上で、言ってもいない僕の考えは明確に、ソンジュさんに否定されてしまった。
 そしてソンジュさんは、やはり下方をぼーっと遠く見ながら、どこかうんざりと不機嫌そうに、ボソボソと早口でこう言うのだ。
 
「…それでなくとも綺麗すぎて高嶺の花だとさえ思っている美しい人が…そんな俺の大好きな人が、だけで感じてしまう…――可愛すぎる。エロすぎる。感じている顔さえ綺麗すぎる。襲いたくなる。…言ってしまえば、仮にユンファさん以外の人がそうなろうがなんだろうが、たとえ俺が“狼化”していてその人が目の前にいようが、たとえその人が裸で誘ってきたとしても、俺は別に、ここまでそそられることはないです」
 
「……、……」
 
 それは…そう、なんだろうか。…しかし、まさか裸の人よりものほうが唆られるなんて、そんなわけ…――僕が詳細な思考する前に、ソンジュさんは下のほうへと向け、更に恨み言に近く続ける。
 
「我ながら言いたくはないが、俺にねっとりとしたいやらしい目で見られているんですよ、ユンファさんは。下心を持って。見られているんです。今にも襲ってしまおうかと、今にもめちゃくちゃにしてやろうかと、ムラムラと欲情の目線で見られているんですよ。男の無理を通そうという目を向けられているんだ、ご自分の綺麗な顔や体のあちこちに。――本当に恥ずかしくはありませんか?」
 
「…ぁ…そ、それは……」
 
 チラッと尋ねる上目遣いが僕を見たが、今度は僕が瞳を伏せた。
 いや、別に下心を持って誰かに見られるも、いやらしい目で見られるも、そんなことに対しては別に、僕はもう今更なんとも思わない。――以前は恥ずかしいというより嫌だった、気持ち悪かったが――今にそんなことをいちいち恥ずかしいだなんだと思っていたら、それこそ大人数の前でオナニーショーなんかできなかったし、初めて会った人とセックスなんかできるはずもなかった。
 ただ…その相手がソンジュさんである、と思うと、恥ずかしいというより…何というか、――ソンジュさんにいやらしい目…というより、今すぐ抱きたい、とムラムラしていただけたということは、何というか。
 
「…そ、それは…恥ずかしくはありませんが、あの……正直、嬉しい、かもしれません…、淫乱で、ごめんなさい……」
 
 かあっと頬や耳が熱くなる。――思えば嬉しいような気がして、ナカがキュンと、ちょっと…濡れてしまった。
 すると、ソンジュさんは上を向いて目元を手で覆い隠し、ボソボソと早口でこうつぶやく。
 
「クソほんっと可愛い…襲うぞマジで、嬉しいのかよ、俺にいやらしい目で見られて喜ぶとか、あのユンファが…高嶺の花、高潔な俺の銀狼ぎんろう様が…っ大体と言うだけで感じるとか可愛すぎるだろ、どう考えても俺のにしてほしいんじゃねえかよ、マジで愛しすぎる、エロすぎる、最高…」
 
「…ぁ、♡ …ぁ…♡」
 
 遣り場のない思いを呟いているようでもを聞いてしまうと、やはり僕のナカがきゅうっとなって、度に体がぴくん、ぴくんと反応してしまう。――すると眉が寄り、僕は自然と顔を伏せた。
 
「可愛い……俺の
 
「…んっ…♡ や…やめて…」
 
 先ほどはわからないが、これはソンジュさん、確信犯で口にしているだろう。…僕はきゅうっとなった子宮――下腹部を押さえてうなだれる。
 しかしソンジュさんは、次々と、悪戯に。
 
「俺の可愛すぎる
 
「…んふっ…♡ や、…」
 
「俺の“運命の”」
 
「…はぁ…っ♡ いや、やめてください、…」
 
…」
 
「んぁ…♡ ぁ、♡ ぁ、♡ やっ…♡ やめてください、ソンジュさん、…」
 
 言われるたび言われるたび、ビクッビクッとしてしまう僕は、太ももがカタカタ震えはじめ、今にもその場にしゃがみ込んでしまいそうだ。――そこで顎を掴まれ、くう…っと上に顔を向けさせられた僕は、困っているが目も潤み、顔中熱い。
 
「…はぁ……はぁ……」
 
「はは、可愛い…ほら、こんなに可愛い顔してる…」
 
 するとソンジュさんは妖しく目を光らせると、「自分でも見てみる…?」と色っぽく囁き声でいい、くるりと僕の体を返した。
 そして、僕の顎の下に人差し指の背を添え、くいっと顔を上げさせて――僕に、洗面台の鏡を見せてくる。

 
「……――。」
 
 
 僕は、見てしまった――。
 
 
 
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