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目が回る

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「……わからないなら…、わからせてあげる……」
 
 ソンジュさんはやけに甘ったるい声でそう言う。
 僕は不穏な気配を感じて何もいえなかったが、身の危険を察してはいた。さっと逃げようと上体を前に倒したが結局――案の定というべきか不意に、
 
「……ッぁ…?」
 
 次の瞬間にはひょいっと、僕は、ソンジュさんに軽々横抱きにされてしまった。――ふっと見上げた先、狼の顔…口が大きく、また鼻も長く伸びて、豊かなホワイトブロンドの毛に覆われた――人狼の姿、薄水色の瞳は翳り、うつろながらも僕を睨むように見下ろして、凝視してくる。
 
「……、…、…」
 
 怖い――。
 僕の体は凍り付いたかのように竦み硬直して、震えている指先一つ、上手く動かせなくなる。
 グルル…と怒っているのか、威嚇するように喉を鳴らしているソンジュさんに、僕はどこかへ運ばれていく。
 僕はさあっと血の気が引いて、――恐ろしい――彼を見ないように目線を伏せながら、だらだら冷や汗をかいている。
 
 そうして僕は、僕たちはこの部屋の扉から外に――つまり僕らは、廊下に出た。
 
「…ぁ、…ぁ…ぁ……」
 
 今、叫べば、
 今叫べばモグスさんたちに聞こえる、
 助けて! でもいい。モグスさん! でもいいはずだ、…今叫べばきっと、モグスさんたちが駆け付け、助けてくれる。
 
「……も…、……さ…っ」
 
 駄目、だ…――叫ぶどころか、声がもう出ない。

「……貴方はもう俺だけのものなのに……どうしてわかってくれないの…?」
 
「…ご、ごめ…ごめ、…さ……ごめ…なさい、ごめんなさ…ソン…さ……」
 
 ソンジュさんのそれは、僕のことを責め立てるような、静かでありながらも鋭い声であった。
 僕はそれによくわからず、何もわからないまま、ほとんど形にもならないが、とにかくひたすらに謝ってしまう、いや、そうとしかできないのだ――今謝らなければあるいは何をされるかわからない、最悪殺されてしまう、という凄まじいほどの生命的な危機感を覚えているからだ――。
 
 ただ僕は、どうやらソンジュさんに抱えられてどこかへと運ばれているらしいのだが、ぐらぐらと僕の視界が揺れているせいで、彼がどこへ向かっているのかも判然としていない。…一応はゆさ、ゆさ、というゆっくりとした揺れで彼が歩いているということばかりはわかるのだが、いわばそれくらいしかわかっておらず――それどころかもう、ソンジュさんが今どのような顔をしているのかもよく見えていないのだ。
 
「……、…、…」
 
 どうするべきか、暴れることさえできない。
 震えてはいるくせに、体のどこにも力が入らないのだ。
 それでいてぞわ…ぞわ…と断続的な悪寒が全身を粟立たせ、そのせいで僕の乳首はつんとしこって集まり、ドクンッ…ドクンッ…と僕のうなじが脈打つのと同じテンポで、僕の背骨が、自身が、子宮も、腰の裏まで、大きく脈打っている。
 そればかりか、ナカがにゅるにゅると激しく蠕動ぜんどうしている――オメガ排卵期中のそれだ――まだ抑制薬が効いていないのだろうか。
 
「……は…、…はぁ……はぁ……」
 
 頭が…ぼーっとして、きてしまった…――マズい…凄く、ムラムラしている…――下半身がじんわりと熱くなって、ツーンと自身が鋭くもどかしくなり、くぱくぱと膣口やアナルが物欲しそうにしゃべろうとする。…「おちんぽを挿れてください」と――全身にじっとりと火照るような汗をかき、くったりと全身が気だるく、まぶたまで重い。
 
 このままではマズい…早く抵抗しなければ、僕、…僕は…ソンジュさんに……――、に、
 
 
「――んぁ…ッ♡♡」
 
 
 
 ――え…?
 
 
 
 
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