ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

文字の大きさ
上 下
355 / 606
翳目 ※

5

しおりを挟む

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…もう頭でぐるぐる考えるのはやめて。貴方の素直な気持ちのままに、俺を求めてほしい。…俺を信じてくれ、ユンファ。全部俺に任せてくれよ、頼むから…――一人で全部何とかしようって背負うんじゃなくて、頼って、俺を。…守らせてくれよ、俺に、貴方を。」
 
 
「……、……は、…」
 
 息を呑むと、それを吐き出せないでいる。
 僕は、その切ない色をしたアクアマリンの瞳に、魅入られた――どう、してだ…?
 しかし、僕はソンジュさんを見ていられなくなって、さっと目線を伏せた。――なぜか泣きそうだ。
 まるで深くも、透き通った海のようだった。
 表面は潤んで淡い水色、しかし見れば見るほど奥まって…奥まって奥まってゆくと、どんどん青が濃くなってゆく――アクアマリンの瞳とはその通り、まるで透き通った海のように美しい、青の瞳。
 
「……、…、…」
 
 今こう言ったソンジュさんは、何か…――神様ではなく、お上品な九条ヲク家の紳士というのでもなく、癇癪も起こしていない、にもなっていない、ただ、
 
 ただの、一人の青年。
 一人の美しい青年が、僕のことを好きになり、ただ思惑も何もなく、ただ素直に、まっすぐに、僕への恋心だけを理由に、僕を熱心に求めている――だけ、のように思えた、すると。
 
 瞬時、痛いほど胸がドキッとした。
 そしてかああっと、耳から頬が熱くなった――。
 いつものようにロマンチックな、綺麗で丁寧に飾られたようなセリフでは、なかった。――むしろ、普段のソンジュさんに比べたら、ほんの少し稚拙ちせつなところがあったような、…それなのに僕は、
 
「……、…、…」
 
 今もなお、どうしようもなくドキドキしている。
 凄く、顔が熱い。――目がほんのりと潤み、胸の中に膨らんでいる…軽くて柔らかい、何かとてもむず痒くなるような気持ちが、風船のように膨らんでいる。
 
 僕の胸の中、胸骨にぴったりと添うほど大きく膨らみ、ドク、ドクと大きく速くなった僕の鼓動が刻まれるたび、今もなお膨らみ続けている。
 どこか心地良くすらある、ワクワクしているというのに近いようだが…これじゃ今にも口からはみ出てしまいそうだ、これが爆発したらどうなってしまうんだろう…――悪い予感も、良い予感も、不思議な期待感もある――少し痛い、だけど、軽くて柔らかい、だから決して、嫌じゃない。
 
「……、……?」
 
 目を瞑る。
 どうしてこんなに、ドキドキ、してしまうんだ。
 なぜ僕は、ソンジュさんの新しい顔を見るたび見るたび、ドキドキしてしまうのだろうか…――。
 
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...