ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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恋は盲目 ※モブユン

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 もしかして、僕のことを心配して…探し、追いかけてきてくださったのだろうか、彼女…――。
 
「…っ大丈夫? 間一髪…?」
 
「…ぁ、……」
 
 まず何よりも先に、真っ青な険しい顔をして、僕の身を案じてくださったこの彼女――僕は咄嗟に何も言えなかったが――中性的な声のこの女性は背が高く、大体僕と同じくらい…いや、ピンヒールを履いているようなので、実際は僕より十センチほど低いくらいだろうか。
 
「…あ、おさとうちゃあんっ♡ えへへっ♡」
 
 と…ゴスロリの女性は、側に来たその人を見上げ振り返るなり、嬉しそうに笑って、その彼女の片腕にぎゅっと抱き着く。
 
「……あなたも一人で、危ないでしょ…? もう、…」
 
「…だってぇ」
 
「…………」
 
 ヒールのあるパンプスを履いているからこそ、僕と同じくらいの背の彼女――ゴスロリのほうの彼女もまた、よく見れば厚底の黒い靴を履いている。――すると彼女たち、並ぶとおよそ20センチは差がありそうだ。
 
「……?」
 
 ていうか、――レディ……?
 
 
“「……あぁ、…あぁ…、いや。とりあえず、今日のところは俺のリップクリームを貸すからいいよ…――あと、せっかくだから明日、全員呼びましょう。…はもちろん…うん、まあ何とかなるさ…」”
 
 
「………、…」
 
 ま、まさか…――いや、まさかな。
 まさか…そんな奇跡的な、――そんなまさか。
 
「…見てぇ、変な色の髪の毛っ…かわいくなぁ~い、あははっ♡」
 
「…だめちょっと、…煽るようなこと言わないで…」
 
 と、レディさんに、甘えるよう片腕に抱き着かれた――おさとうちゃん、と呼ばれた――一方の声がハスキーな女性のほうは、レディさんを諌めているが。
 赤髪の男は万事休すを悟ったか…――ベルトのバックルを直すでもなく、慌てた様子で僕の肘を掴んでグッと掴んで無理やり引き、…何も言わずに行こうとした。
 
「…っあの、…もう行けません…」
 
 が、僕はさすがに踏みとどまる。
 そもそも逃げ出すつもりだったのだ、着いてゆくわけがない。
 
「…おいっ…」――男は一瞬驚いた顔をしたが、すぐ怒った顔をして僕を睨みつけてくる。しかし、中性的な声の女性が逆に、男の二の腕をガシッと掴む。
 
「…ねえあなた、どこ行くつもりよ。あたしたちの車のそばで、何してんのよ…」
 
 と…男を睨みつける――薄い緑色の瞳。
 丸目がちではありながらも、どこかハンサムでクールな美人、というような…紫がかったピンクの髪は長い、凛とした美しい女性だ。――彼女は白いハイネックに、ふっくらとした胸を強調するような黒いコルセット、そして青いスカートを穿いて、黒いストッキングに高いヒールの赤いパンプスだ(足の甲にバッテンの紐? があるデザイン)。
 
「…すんませんほんと、…っほら行くよ、…」
 
「……、…っ」
 
 ぼんやりと彼女たちを眺めていた僕は、慌てて謝る男に再度、ぐっと腕を揺らされた。――しかし僕はやはり、足に力を入れて踏みとどまる。ましてや緑目の彼女も、まだ男の腕から手を離していない。
 すると、レディと呼ばれているゴスロリの女性が、「ん~?」ときょとん、首をかしげ。
 
「……どこに行くのぉ?」
 
 赤髪の男を、あからさまに睨み付けているハスキーな声の女性の腕に、甘えるように抱き着いたままのレディさん――その人の丸いピンク色の瞳は、じいっと赤髪の男を見つめている。…二重、人形のように目が大きく、透き通ったその丸い目…しかし、それでいてどこか彼女も、その男を睨み付けているような、恐ろしくうつろな目だ。
 
「…まりあ気になるんだけどぉ…、ねぇ、その人さぁ…ほんとにあなたの、お知り合いなんですかぁ?」
 
「…いや、そうっすけど……ねっ?」
 
「……え、……」
 
 焦り、助けを求めるように僕へ振り向いた男の顔、…その目は険しく、「はいと言えよ」と圧をかけてくるようだ。――しかし僕は、そうは言えない。
 
 自分が完全なる被害者かといわれたら、その自信はない。…僕は完全に、この赤髪の男を加害者に仕立て上げることは間違っているような気がした。――というのも、少なくとも僕は、自分の意思でこの男に着いてきた…つまり途中までは、合意していたにも等しいのである。
 
 だが僕は、直感していた。
 彼女たちは、僕の身を――よほど僕よりも――案じて、僕のことを助けてくれようとしている。
 自業自得の果てにこうなったにせよ、…僕は、藁にもすがる思いである。
 
 しかしなんと言うべきかわからず、僕が何も言わずにうつむくと、痺れを切らしたような男は、しどもどしながらもやっぱり僕の肘を引いて「ほら、早く行こうって」と急かしてくる。
 
「…い、嫌です…嫌だ、行けません…」
 
 だが、さすがにもう、僕は動かない。
 ――この時点でも僕は大馬鹿者には違いないが――何人もに輪姦されるとわかっていて、それでもなおのこのこ着いていくほど、自分のことがどうでもよいわけではない。
 
 そこまで馬鹿にはなれないのだ。
 レディさんはここで、にっこりと笑う。
 
「……ふーん…、じゃーぁ、おにいさんってぇ……」
 
 彼女はにっこりと、あまりにも可愛らしい顔を傾けて、甘えるような笑みを男へと向ける。
 
 
 
 
「…その人のことぉ…、ってことなんだね♡」
 


 
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