ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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幸福に浸りながら望む貴石※

22※

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「――だーめ。…もっと恋人的に言ってくださらないと…、それに、そもそも恋人同士って、しませんでしょう…? ねえユンファ…?」
 
「………、…」
 
 優しい声でそう言ったソンジュさんに、僕は悔しいやらそれはどうなんだろう、という疑念やらで黙り込む。
 いや、年齢差のあるカップル、ことに年下が年上に向けての呼称は、別にさん付けの人たちもいるんじゃないのか。よく知らないので、そう口答えする勇気はないが。
 
 するとソンジュさん…ゆっくりと、僕のナカから二本の指を軽く立てつつ抜く方向に、膣口のほうへじっくりと向かっている。――ヒダを一つ一つ撫で付けながら抜けてゆく指に、僕は焦る。
 
「…ぁ…っだ、駄目いかないで、…お願い抱いて、ソンジュさん…、そ、ソンジュ……」
 
「…んふふ…」

 思わず哀願してしまった…お願い、お願いと浅ましくねだって彼の指を食らおうと動く、僕の膣口と共に。すると彼、抜きはしたが…また浅く指先を挿入して、今度は入り口付近をしきりに、その指の腹で引っ掻いてくる。――やっぱり…呼び捨てにしろということらしい。
 
「……はぁ…、お、お願いします…抱いて…」
 
「…………」
 
 これは駄目らしい。…敬語だからか、僕が下の立場的な言い方だったからか。――非情にもぬる、と出て行ったソンジュさんの指先と、とろりと溢れてきた粘液。…それはケグリ氏の精液なのか僕の愛液なのか、見ないことにはわからない。
 ひく、ひく、と余韻にひくつく僕の腰は疼き、僕はもう頭の中いっぱいに、男性器が自分のナカに入って来たときの快感を想像しているだけになっている。
 
「…僕…貴方と、ぇ…えっちしたい……」
 
「…なんですって…?」
 
「……~~ッ――ソンジュが欲しくて、僕の子宮きゅうきゅうしてる、僕のこと、早くめちゃくちゃにして、…」
 
 ヤケになってきた僕は、もう言ってやるよ、と固く目を瞑ってそう言った。――するとソンジュさん、…僕の後ろで、ニヤニヤ笑みを含ませた声でこう言うのだ。
 
「…あぁ駄目だよユンファ…、はは、俺の目を見て言ってくれないと。…可愛い恋人としてのおねだりなら、それくらいのことは当然だと思わないか? それに俺、上目遣いでって言ったでしょう……」
 
「…………」
 
 あぁ、死ねと。
 それはすなわち二十七歳の男にということだ。――正直、お尻を向けているからかろうじてだ(いや、性器を晒しているほうがまだセーフ、という僕の感覚もおかしいんだろうが)。
 
「さ。浴槽のヘリに座って」
 
「……、……」
 
 あぁもう僕は死ぬしかないらしい。
 僕は諦め――あるいは覚悟を決め――、浴槽のヘリに座った。…ニヤニヤしているソンジュさんは、オールバックの金髪がややほつれ、前髪がいくらか下りてきている。…上裸ともあってセクシーだ。
 僕はぼーっとソンジュさんの、ニヤついた水色の瞳を見上げ――ようかと思ったが、まともに見ると羞恥心で言えそうもないので、彼の濃茶の美しい眉根あたりをぼんやりと見る。…いわく、自分の眉かあるいは目の間(鼻)を見られていても、相手は自分の目を見ていると感じるものだそうである。
 
「……いっぱい、気持ち良くして…、いっぱい僕を愛して…、僕の…ぇ、えっちな…声、いっぱい聞い……」
 
「…あれ? なぜ俺の目を見ないんです、ユンファさん…」
 
「…………」
 
 よく見える目だな。――確かにである。
 …僕は自然と眉を寄せ、眉をピクピクさせながら目元を熱くして、ソンジュさんのそのねっとりと期待の熱を孕んだ瞳、いやに透き通って妖艶な、美しい水色の瞳を見上げる。――が、正直視界がぼやけている。
 
「…そ、ソンジュさ…」
 
「さん…?」
 
「…そん、ソン、ジュ…、ぃ、いっぱい……」
 
 なんだっけ…もうあまりのことに、さっきまで覚えていたセリフが全部ふっ飛んだ。
 
「…いっぱい…、…いっぱいに、して……」
 
「…ん…?」
 
「……僕の子宮…ソンジュのザーメンで、いっぱいにしてほしい、…にゃ…」
 
 しかもう残っていなかった(悪い意味でインパクトがあったからだろうか)。
 ニヤリと妖しく目を細めたソンジュさんは、す…と身を屈めて僕に顔を寄せ――「それもいいね…?」と、僕の頬をするりと撫でてきた。
 
 
 
 
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