ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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幸福に浸りながら望む貴石※

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 泣いていた僕の両頬を、その大きな手でそっとはさみ、軽く上げ…ソンジュさんは何度も、ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを、僕の唇に落としてくれる。――慰めてくださるようなキスに、僕はだんだんぼーっとしてきた。
 
「…ふふ…、うっとりして…どうしたんですか」
 
「……ぇ…、…」
 
 うっとり…――僕、これ…うっとりしているのか。
「ずいぶん色っぽい顔をしていますね…」そう言って、僕の唇の端にちゅっと口付けてきたソンジュさんは、至近距離、僕の目を見つめてきながら不敵な笑みを浮かべる。
 
「…はは、まさかユンファさんは、俺に惚れてしまったのかな」
 
「……、ええ、多分…惚れてしまったかと…」
 
 そうソンジュさんも冗談っぽく言ってきたため、僕も冗談のつもりで、ぼんやりした意識のなかでも彼へ頷いて見せた。…というのは、正直嘘、なんだけど…でも、もしかしたら伝わるだろうか…僕、本当は、…もう…――するとソンジュさんは、嬉しそうに目を細めて、ニヤリとした。
 
「…じゃあ…――。」
 
「…はい…」
 
「……ユンファさん、俺にキスをして…」
 
 ソンジュさんのほうが、うっとりとした目で僕を見つめ、そう言うのだ。――その透き通った水色の瞳が、じんわり…僕の瞳に熱い潤いを移してくる。
 
「……、…、…」
 
 僕は、ソンジュさんのあたたかい両頬にそっと触れた。
 その痩せた頬は、少しだけ桃色に栄えている。…何かしらの、感情の高ぶりの色をしたソンジュさんの頬が、少年のようで愛らしい。――いや…桃色は、恋の色なのかもしれないと、僕はそっと、彼の艶めく唇に顔を寄せた。
 
「……でも、キスをする前に、俺が好きと言って…」
 
「………、…」
 
 それは、キスよりも、勇気が。
 そう逡巡して一旦離れた僕を見ながら、ソンジュさんはにこ、と目を細めて温和に笑い、自分の頬にある僕の手の上から手を重ね――押さえ、すり、と頬擦りをして、僕のことをうっとりと見つめてくる。
 
「……では、先に言いますね。――好きです、ユンファさん…、貴方を愛するこの世の誰よりも、俺は、貴方を愛しています……」
 
「…………」
 
 胸が熱い。…胸焼けをしているようなもぞもぞとした感覚が、僕の喉を窄めて緊張させる。
 
「…貴方は俺の、たった一つの願いだ…、俺が何よりも欲しいのは…ユンファさん――ただ一人、貴方だけなのです」
 
「……、…」
 
 僕は、緊張しながらもやや傾けた顔を寄せる。
 そして目をつむり、僕は素早くちゅ、と…ソンジュさんのふくよかな唇へキスをした。――すぐ離れ、僕は水色の水面を覗き込む。…揺れはない。しかし、温度は増している。
 あ、言うのを忘れていた…――伝わって、くれ。
 
「……ぁ…貴方がす、…好きです…、はぁ…」
 
「……ふふ…、…」
 
 僕はため息とともに、目を伏せた。――それでも僕のことをじっと見ているソンジュさんに、僕はこう聞いてみる。
 
「僕はいま、どんな、…顔をしていますか…」
 
 チラリと見れば――ソンジュさんは優しげに目を細め、僕の顔を眺める。
 
「…とても美しい、やさしげな、慈しみの微笑みを浮かべています。――見惚れてしまうほど、美しい微笑みを…」
 
「……、…」
 
 僕、…笑っていた、のか…――。
 照れ臭い思いに目を細める僕は、それこそふふ、と笑みがこぼれ出でた。…すると、目を丸くして固まったソンジュさん。
 彼のその表情から目を逸らすよう、俯く。――まるで、また見惚れてくださったようで、…照れてしまった。
 
 
 ソンジュさんは、また僕のことをそっと抱き締め…僕の耳元で、甘い声を、こう優しく響かせる。
 
 
 
「…ユンファさんの全てを、俺にください。…」
 
 
「…全て……?」
 
 僕の、…全て――。
 僕の両手が、ソンジュさんの背中に翳される。
 彼の声が、僕の耳元で悲しげなほど、熱く響く。
 
「…貴方の涙も、傷も、痛みも、悲しみも…貴方の喜びも、幸せも、楽しみも…ユンファさんの肉体、髪の先からつま先まで、貴方の精神、その気高き魂さえも…貴方の全てが、俺のものになるのならば…――俺はユンファさんに、何だって差し上げます……」
 

 
 
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