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Pale blue-eyed jealousy ※微 ※モブユン
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しおりを挟む「そんなことより…衣類のことですが、…ゥゥゥ゛…ッ」
うなだれている僕の前――突然ソンジュさんが唸る。…ビクンと怯えた僕にソンジュさんは、獣が唸っているかのごとく地を這うような低い声で。
「だいたい、なっなんですか、あんな下着やらあんなアダルトグッズの数々は、――あの変態が貴方にあんなものを持たせたのですか、…」
「…、変態…? あぁ、ケグリ氏…」
いや、今言われて思い出したが…そういえばたしかに僕は、もともと持ってゆく予定ではなかったアダルトグッズ――各種さまざまなバイブやローター、エネマグラ、アナルプラグに拘束具(麻縄や手枷、足枷、口枷など)、リード、ローション、バラ鞭に低温ロウソクなどなど…――それから…女性もの風のヒラヒラスケスケパンツやブラジャー、キャミソールみたいなやつなど(僕は男なりに図体がデカいので、本物の女性ものは入らないのだ)、いわゆるお誘い用のそういった服というか、そうしたいやらしい下着をケグリ氏に持たされたのだ。
それこそ乳首も丸見え、下も穴空き、あるいはスケスケ、みたいなものばかりを。――というのもそれらは、「これらを差し出して、“僕は変態マゾなので、これで僕を思う存分いじめてください”と誘え」と言いながらケグリ氏が勝手に詰め込んできたものたちだ。
ちなみに僕のボストンバッグはよっぽど、僕の日用品よりそのアダルトグッズの数々のほうが幅を取っていたくらいである。
「……、……」
いや、ということは、…血の気が引いてゆく…――ソンジュさんはもしかして、モグスさんから何かしらそういう連絡を受け取ったとかで、僕が持ってきた荷物の内容を知っているのではないか(さっき確かにスマホ見ていたよなソンジュさん、で、いきなりこの会話になっている)。――もしそうならば十中八九、あんな中身を、あの優しそうなモグスさんにしっかり見られたということである。
というか勝手に荷解きされた、ということにも若干、なんともいえない気持ちにさせられるのだが――ひやりとしたり熱くなったり、僕の頬は今どうかしている。
「…チッ、あの変態オヤジが…――っ俺のユン…いえ。んンッ…」
「……、俺の…はい、馬鹿にしていますね…」
ソンジュさん…今、俺のユンファ(さん)、とでも言いかけたんだろうな。いや、もう今更じゃないか? さっきはあんなにはっきり言っていたじゃないか――とは思いつつ、僕は気を遣ってそう助け舟を出した。…するとソンジュさんは、険しい顔をうんとうなずかせる。
「ええそうです。正直俺のことを馬鹿にしていますよ」
「……それは申し訳ありません。…ただ、ソンジュさんを馬鹿にするつもりは、ご主人様もなかったかと…」
僕はうなだれて頭を下げ、心から申し訳なく思って、小さな声でそう謝った。――ただむしろ…あれらは、ある意味ではソンジュさんのためにケグリ氏が詰め込んだもの、とも言えなくはないのだ。
「…なんですって…? ご 主 人 様…?」
「……ハッ…ぁ、いえいえ、いえごめんなさ、いえ、違います、すみませんつい癖で、…」
失言にも程がある、と僕は自分の口を押さえた。
が、それよりも何よりも弁明するべきだとソンジュさんを焦って見るが――彼はもはや唸りもせず、サーッと青ざめた冷ややかな真顔である。
「…………」
「ご、ごめんなさい本当に違うんです、――あの、僕のご主人様は、ソンジュさんだけですから、…」
僕は縋るようにソンジュさんを見るが――ソンジュさんはボソリと。
「というかユンファさん…あんな格好、するん…いや、させられていたんですか…? ふーん…普段からユンファさんは、あの変態クソスケベガマガエル男に…あんな……」
「…………」
あんな格好といわれたひらひらスケスケパンツやらマタドール(?)やらの件に、僕はYESと言っても大丈夫なんだろうか。――下手に嘘なんかついても、ソンジュさんにはバレてしまう…それはよくわかっているのだが。
「…あれを、着て。――ユンファさんは、ケグリなんかと…? 何を。していたんです…?」
「……ぁ…あの…ぇ、えっと……」
ケグリ氏――マジで殺されるんじゃ?
いや、確かに僕にとってもケグリ氏は憎むべき相手なのだ。それこそ何度も殺してやると思ったし、いまだに殺してやりたいと思わないでもない。――が…、なぜか言ってはならないような気がするというか、…怖い。
シンプルに、この真顔の圧の凄いソンジュさんに言うのが怖い。
「……どういうふうに。何をしていたのか言わないなら。アイツ今すぐ殺しm…」
「あっあぁあっあの、あの格好をするとケグリ氏凄く喜んで、だからある意味ではソンジュさんのためにああいう下着を入れたのかと思いますし、――いえ正直、男の僕があんな格好をしても気持ち悪いだけだとは思うんですが、いやほんとソンジュさんの感覚が正しいと僕も思います、…ただ…あの、何って……その……」
焦りから早口にまくし立ててしまう。…かと思いきや言いにくくもなる。
なぜか僕があの、スケスケひらひらパンツにブラジャーやマタドールみたいな名前の下着を着ると、ケグリ氏は“ラブラブいちゃいちゃ旦那様モード”のスイッチが入る。――「今晩はご主人様ではなく、ケグリおじさんと呼びなさい」から始まり、「私のお嫁さんは変態だなぁ…こんなにいやらしい格好して、旦那様を誘うなんて…」と(自分で着ろと言ったくせに)喜び、よほど上機嫌になるのか「ユンファの可愛いクリちんがはみ出ているぞ」と珍しいことに、僕自身を舐めてきたりするのだ。…ちなみにクリちんと言われるほど僕のモノは小さくない…何ならケグリ氏のソレより大きいのだが。
それほどケグリ氏は僕のその姿がいたく気に入っているようで、「今夜は寝かさないぞユンファ、夜通し夫婦で子作りをしようじゃないか」との宣言通り、すると僕は一晩中、彼の勃起を体のどこかしらに咥え込むハメになるくらいなのだ。
「何が気持ち悪いだよクソ、うぅぅ゛羨まし…いや、俺とするときもたまにそういうの着てください。…」
「……は…?」
あまりにもボソボソと言われたのが、…最後だけ聞こえた。――目を瞠って驚いている僕を、ソンジュさんは気迫たっぷりに見てくる。
「いえ。何をされていたと…?」
圧が凄すぎて、僕はうつむく。――じゃなきゃ言えない圧だ。
「…ぁ、だから、…その、あれを、着て…着ると…ケグリ氏は凄く、ぃ、イチャイチャしたがるんです…恋人、いや、――夫婦的な夜通しの子作りになる、というか…ぁいや、本当に子供を作っていたわけじゃなくて、あくまでも、そういう雰囲気のプレ…」
「あぁそうですか。つまりあんな可愛いヒラヒラ着た俺の可愛いユンファがあのクソキモいガマガエルにあんあん可愛い声で一晩中鳴かされめちゃくちゃにされ可愛いトロ顔晒しながら延々と中出しされまくっ…わかりました結構。」
「……、…?」
早口すぎて理解が、…何をわかったというのだ、ソンジュさんは。
ふっと僕が顔を上げた先、彼は虚空を睨み付けながらその片耳に、濃紺のスマートフォンを宛てがっていた。
そしてソンジュさんは、低い声で――。
「…もしもし俺ですモグスさん。――ユンファさんの荷物全部捨てておいてくれ。全部だよ全部。あとケグリへの報復は追加で考えなければなりません、とても許せないことが発覚しました。とりあえずアイツの目を潰しましょう。」
「――へ…っ?」
捨て…――全部…僕の荷物、…捨てる…っ?
つづく
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