ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

文字の大きさ
上 下
218 / 606
Pale blue-eyed jealousy ※微 ※モブユン

30

しおりを挟む

 
 
 
 
 
 
 
「…………」
 
 とん、とん、とん――と僕の背中を、一定のテンポで優しく叩いてくれるソンジュさんに、僕の意識はまた微睡みはじめる。……そっと目を瞑ると、胸の中の黒いモヤがほんの少しだけ薄れてゆく。
 浅く速い僕の、薄いはぁはぁとした呼吸――わずかに開いた唇の隙間からしか息を取り込めず、僕の唇は乾く。
 
 まるで熱にうかされているかのように、体中がゾクゾクと悪寒に震え――全身にじっとりと嫌な汗をかき、…浮かぶケグリ氏の顔に、ハッと目を開ける。
 バッと思わずソンジュさんの体に抱き着き、は、は、と荒立つ心臓と同じように短く浅くなる呼吸に苦しめられる、――怖い、
 
「……、怖いね…でも大丈夫、側にいるよ…」
 
「…っはぁ、…は…、…は…」
 
 すると、僕を抱き締めてくれるソンジュさんは、優しく静かな声で。
 
「…ゆっくり呼吸をして…? 大きく吸って、吐いて…、深呼吸を……」
 
 僕はその指示に従い、「思いっきり吸って」と言われれば、大きく息を吸い込んで胸を膨らませ――「ゆっくり、細く吐いて」と言われれば、ゆっくりと口から、息を細く吐き出した。
 
「そう…上手だ。――じゃあ今度は…俺の匂いを思いっきり、肺に満たすように吸い込んで…、そして吐き出すときには、辛くて嫌な気持ちや、嫌な記憶…モヤモヤしたものを、はーっとすべて、吐き出してみて……」
 
「……、…」
 
 僕は頷き――すう…っと、ソンジュさんの甘くて清潔な、優しい香りを肺いっぱいに満たした。
 それからケグリ氏や、辛いこと、胸のモヤモヤをすべて吐き出すように――肺の底から、それらすべてを口から吐き出すイメージで、息を吐く。
 
 すると、ほんの少し――胸の中が楽になる。
 
 繰り返してみる。――僕に寄り添ってくれるソンジュさんは、その間もずっと、僕の頭を撫でていてくれる。
 
「…上手だね、ユンファ…、眠れるようなら、もう少し眠って…? 今は何も気にせず、何も考えなくていい…ただ憩う自分を、そっと受け入れ、許してあげてくれ……」
 
「……はぁ…、……」
 
 深呼吸を繰り返してみると…じんわりと額の裏がしびれ、ぼやけてゆく…――僕はそっと目を閉ざし、ソンジュさんのその許しの言葉に、憩う。
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...