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Pale blue-eyed jealousy ※微 ※モブユン
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しおりを挟む「………、…」
ソンジュさんに「さあ、本当に少し、もうおやすみください」と促された僕は、そっとまぶたを閉ざした。――ソンジュさんは僕の髪を撫でて続けてくれる。
自分が思っていたよりも僕は、疲れていたらしい。…すぐにとろりと、意識がぼやけて、宙にふわりと浮かんでくる。
『…ユンファ…、お前は私のものだ。ユンファ、お前は私の性奴隷だ。』
「――…ッ!」
まぶたの裏に、ニヤニヤしたケグリ氏の顔が浮かび、その人の声が耳の奥に聞こえて、僕はハッと警戒心から目を開けた。
「……は、…っ」
恐怖にドクドクドクと速く動く心臓、全身にじわりと汗をかいて、…目を瞑るのが、怖い。
「……大丈夫…?」
「……、…、…」
ソンジュさん。――今僕の側にいるのは、…ソンジュさんだ。…その人の美しい、心配そうな顔を見る。しかし、それでもまだ僕の心臓はドクドクと痛い。
「……ユンファさんが眠っていても、俺、ずっと側にいるよ…、ずっと起きて、貴方を守っていてあげるから…」
「……、はぁ…、…」
ソンジュさんのその言葉に、はた、と気持ちは安心する。それが一番安心する。――それなのに、まだ僕の心臓は早鐘を打ち続けている。…目を瞑って、目が覚めたら…僕の隣にいるのが、…ケグリ氏になっていそうだ。
夢が覚めたら――僕は、あの家のベッドにいそうだ。
犯されていそうだ。――目を瞑るのが怖い。…疲れていて、眠りたい、眠気はあるのだが、…起きていたほうがマシな気がする。
「…手を、繋ごうか」
「………、…」
ソンジュさんは僕の指先が冷え、汗ばんだ片手を取り、そっとあたたかい手で握ってくれた。――そういえば、…と、僕はこわごわながらも目を瞑る。
「…………」
僕が小さなころ、小学生くらいのころか――何か怖いテレビ番組を観てしまったとき、だっただろうか。
そのときにはもう、僕は一人部屋――自分の部屋――で眠れるようになっていたが、どうしても、怖くて怖くて…こうして目を瞑ると、背後に誰かがいるような、テレビで見た幽霊がぼーっと僕を見ているような、それが僕に襲い掛かってくるような、…そんなゾッとする怖い感覚がして、とても眠れなかった夜があった。
でも恥ずかしくて、僕は、父さんと母さんの部屋に行くことはできなかった。――僕はなんでもないふりをして、一階のリビングに行って、電気を付けて…飼い犬のことを撫でていた。あわよくば、自分のベッドに飼い犬を連れて行って、せめて一緒に寝ようかと考えていたのだろう。
そうしていたら、おそらく物音で目が覚めたのか、あるいは、すりガラス越しにリビングの明かりを見たのか――両親の部屋は、すりガラスの扉を隔てたリビングの真隣であった――、…母さんが、起きてきてくれて。
「…ユンファ…? まだ起きてたの?」
と…少し仕方なさそうな笑顔を浮かべた母さんに、途端にホッとした僕は、うん、もう寝るけど、ちょっとリリ(飼い犬の名前だ)が気になって、と強がった。――そう強がった僕に、母さんは「あらそう。…眠れないんでしょ」と、僕が怖くて眠れないでいることを見抜いたのだ。
そうして母さんは、「ママも怖かったのよねぇ、だからパパにやめてって言ったのに。ママホットミルク飲んじゃおうっと。とびっきり甘いのにしてやる」――そう何でもないように笑って、僕と自分のぶんのホットミルクを淹れてくれた。
そのうちに父さんも起きてきて、「ごめんなぁユンファ、明日仕事なのに、パパも怖くて寝られないよ…」と。――結局三人でソファに座り、リリと四人で甘いホットミルクを飲んだ。
そのあと…――僕はその日、二人のベッドで眠った。
二人の間に挟まって、父さんに頭を撫でられ、母さんと手を繋いで、リリも一緒に眠った。
僕が眠るまで彼らは頭を撫でて、とん、とん、と僕の体を優しく叩き続けてくれた――「もしお化けが出ても、パパがお化けのことなんかやっつけてやるからな。…パパが守ってやるから、大丈夫だよユンファ」――「パパが悪いんだからね。もう駄目よあんなの。パパ責任持って、ユンファが寝るまで起きてるって、大丈夫よ」――すると僕は安心して、その夜、二人の間で眠ることができた。
「…………」
これは…同じ、安心感だ――。
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