ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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Pale blue-eyed jealousy ※微 ※モブユン

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「……、……」
 
 え、じゃあ、――ソンジュさんはわざわざ、僕に着替えさせるためだけに…僕の服を脱がそうとしている、ということなのか。
 いや、なら、別に…――あんな変態みたいなセリフ言ってしまったのに、――そのほうがよっぽど、とたんに恥ずかしくなった僕はワイシャツの胸元を合わせつつ、カアッと目元を熱くしながら目線を伏せた。
 
「いえ、なら自分で着替えられますから、」
 
「…はは、…いえ、ここは俺にお任せください。…」
 
「……ん、…」
 
 すると身を屈め、抑えるように僕の唇をぱくりと食んできたソンジュさんは、やさしくはむ、はむとまるで空気を食むような力加減で、僕の唇を食みながら、…カチャ、カチャリ、僕のベルトのバックルを外そうとしている。――やはりというべきか、それはずいぶん手慣れた手つきだ。…どういう…脱がせようして、…本当に…着替えさせるために脱がせている、のだろうか。――それにしても…、
 
「……、……」
 
 ソンジュさん、本当に経験豊富な人なんだろうな…――付け加えて、僕と交わしているような“恋人契約”を、何人もの女性と結んでいたそうだ。
 
 じゃあ――あの優しい笑顔も…?
 優しく触れてくるこの指も…、キスも…?
 綺麗だ、美しいよ、愛している…あの甘い言葉たちも、ソンジュさんの、何も、かもが――?
 
 
 たくさんの女性に、向けられて、きた…――。
 
 
「…………」
 
 僕は目を瞑り、
 
 僕が初恋の人…ありえない。
 目を瞑り、今はソンジュさんのやわらかいキスのペースに合わせている僕は――あ…と、ここで思い出した。
 
「……ふ…、…」
 
 僕は出掛けに、ケグリ氏にたっぷり中出しをされたのだった。――シャワーを浴びないと、それでなくとも嗅覚が敏感だというソンジュさんは、嫌がるかもしれない。
 ただ…このしっとりとした雰囲気でそんなことを言い出すのは、はばかられる思いがある。――いや、そもそも僕に、彼が愛撫をしてくださる必要はない。
 
 僕がソンジュさんを愛撫すればいいだけの話だ。
 それで、彼のが勃起したら挿入していただいて…いや、でも、――人によっては、誰かの精液が入ったままの膣に自身を挿れることを気持ち悪い、と嫌がる人もいる。…ソンジュさんは潔癖そうだし、嫌だと思うタイプのような気がする。
 
「……っ、…」
 
 あ…どうしよう、――ソンジュさんの手が、僕のベルトのバックルを外し終え、するりと下着に手を入れてきている。…僕の腰骨あたりの、下着のゴムのあたりに差し込まれた彼の手が、僕のそれらを脱がせようとしている。
 
「……は、…ソンジュさん、ごめんなさ……」
 
 僕は申し訳ない気持ちで、息継ぎにソンジュさんが唇を離した隙に、彼へ断りを入れようと――。
 
「…僕…ぁ、あの…ソンジュさん、僕の、ぃ、いやらしいおまんこ…、ご主人様に、たくさんザーメン、中出し、していただいた…淫乱な、僕の中出しおまんこを…どうか、見てください……」
 
 なぜか…そう、言ってしまった。――これが言いたかったわけではない僕は、焦りと羞恥に目元が熱くなり、目が潤む。…なんで僕、こんなこと言ってしまったんだろう。
 僕が本当に言いたかったのは、ケグリ氏の精液がまだ膣に残っているから、嫌ならシャワーを浴びてきます、と…そういった断りの旨であったのだ。――それなのに、「中出しされたおまんこを見せつけてこい」というケグリ氏の命令を、遂行するようなことを言ってしまったのだ。
 
 するとソンジュさんは、鼻先同士が触れるような距離で目をみはり、それから真剣な表情をすると、うんうんと浅く納得したようにうなずく。
 
「それはそれは…わかりました。…ではとりあえず、腰を浮かせてください」
 
「……ぁ、はい…、…」
 
 ソンジュさんは嫌な顔をするでもなく、また軽蔑の色をおくびにも出さないで、さらりとそう。
 …僕が思っていたよりもその件はさっと流され、僕は内心まだ動揺していながらも、言われた通り軽く腰を浮かせた。――するとソンジュさんは、するり…僕の下着とチノパンを脱がせてゆく。
 そして彼は、ふっとほのかな微笑をその美しい顔に浮かべ、「すみませんが、少し脚を上げて」と言う。…つまり、僕の脚からそれらの衣類を完全に抜き取ろうというのだろう。
 
 その意図を察している僕は膝を曲げて両脚を浮かせ、すると彼は僕の予想通り、僕の脚から、そのレースの下着とスラックスを、優しい手つきで抜き取った。
 そして、それらをポイッとベッドへ捨てたソンジュさんは、…僕の足元で、ぼそり。
 
「……う゛っうわ綺麗だね、…ゆん、ユンファさんの、こ、こんなに神々しいほど綺麗だっt…いや、」
 
「……、…、…」
 
 僕は思わず膝の横同士をつけて、顔を横へ背けた。
 じわぁ、と頬や耳が熱くなる。…隠したらいけない、とは思うのだが、無意識にも下へ手が伸び、やめて…下腹部にゆるい拳を置く。…胸の前で躊躇い、胸の中央にも緩んだ拳を置く僕は、――別に恥ずかしいわけではない。…と思うのだが、…やけに息が苦しい。でも、嫌な苦しさではない。反応に困る。…困っているのに、眉が寄るのに、…胸の中が、じんわりと熱くなる。
 
「…はぁ…ごめん、ごめんなさい、つい見てしまった…」
 
「……、…、ぁ、ぁぃぇ、い、いぃ、いえ、…ぁ、ぁ、ぁの、だ、大丈夫です、……」
 
 な、なんでか、…喉が上手く動かない。焦ったように変な、細切れな声しか出ないのだ。――無意識とはいえ、自分で「見てください」と言ったはずの僕なのだが、妙に動揺している。…なぜだろう、性器を見られることには慣れているはずなのだが、…恥ずかしいとも違う、嫌とも違って、でも、嬉しいとも、感じるとも違う、…いつものようにもっと見てください、とも言えない、見られたくないという気持ちはあるが、完全に見ないでほしい、と嫌な気持ちでそう思っているんでもない、気持ち悪いとかではない、焦りはある、でも、怖いから、怯えているから急き立てられるようではない、――…経験が、ない。
 
 
「………、…」
 
 
 はっきり言って、この今の自分の感情や状態に、名前をつけることが、僕にはできない…――。
 
 
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