ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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愛する瞳

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 そしてソンジュさんは、あいかわらず僕の手を引き、僕の腰の裏を抱いて、ゆったりとしたピアノの音に合わせて緩やかに踊りながら――人形のように整った真顔を、くいと少し傾けて見せる。
 
「…俺が思うにケグリは、ユンファさんに異常なほど執着しているように思います。――それこそ最終的には、貴方と本当に結婚したかったのかもね…」
 
 ソンジュさんの言っていることは、僕もはなはだ同意するところだ。――「ええ」と合わせてステップを踏みながら答えた僕に、ソンジュさんは確信の自信を深めたのか、やや口調を強くする。
 
「…やはり貴方もそう思いますか。ケグリは、どうやらユンファさんに、本気の恋をしている。――分不相応な、ね。」
 
「…そうかもしれませんね…」
 
 そこでかなり真剣な顔をしたソンジュさんは、さらにケグリ氏を責めるような、激しい強さのある口調で。
 
「…ですが、単純な恋心というのも少し違うかと。――あの男はおそらく、ユンファさんをあのまま支配し続けたかったのですよ。…」
 
「…………」
 
 支配…――性奴隷として、ということだろうか。
 ソンジュさんは僕のその考えを、やはり僕の目を見ただけで神妙に見透かしてきた。
 
「……ユンファさんはきっと、性奴隷としての立場のみのことだとお考えでしょう。…貴方は今、自分は心の底からケグリたちに支配などされていない、とお思いかもしれません。――しかし、。…いいですか、ユンファさん。」
 
「………、…」
 
 僕は――ソンジュさんの、僕の目を射抜くような真剣な眼差しをぼんやりと見ている。…その人の、ゆったりと言い聞かせるような強く固い声が、僕の頭にこう響く。
 
 
「貴方は、ケグリたちに、のですよ。…肉体のみならず、精神、思考も、感情も…、ね。」
 
 
「……、…、…」
 
 僕…――僕、…支配…支配されて、いる。
 ソンジュさんは、少しまぶたを細めて目を翳らせる。
 
「ユンファさんの尊厳を壊し、言いなりの性奴隷として…もう戻れない、あとには引けないという状況になったユンファさんを支配し、最終的には……」
 
「わからないんです…、…」
 
 そうなのか、どうなのか…僕にはもうわかっていない。判別がつかないのだ。――自分の意思なのかもしれないし、ケグリ氏の意思なのかもしれない、ケグリ氏に言われたから、指示されたからそうなのかもしれないが、…彼らの命令に頷くのはたしかに、僕なのだ。
 
「わからないんです……、僕、でも…ケグリ氏たちが見えない僕の思考まで、支配できるわけがないんじゃないですか…、それに、彼らを憎んでいました、僕、ちゃんと……」
 
 するとソンジュさんは真剣な目をしたまま、「いいえ」ときっぱり否定した。
 
「……それこそが、の恐ろしいところなのですよ…」
 
「……マインドコントロール…?」
 
 なんだっけ、それ…――。
 ソンジュさんは立ち止まり、つう…とその切れ長のまぶたを鋭く細めると、さらに僕の腰の裏を抱き寄せてくる。
 
「…マインドコントロールというのは…――他人の精神を支配し、人知れず操るものです。…しかし、そのマインドコントロールをされている人は、あたかも自分の意思で決定、判断したというように感じている…、貴方は元来、とても賢い人だ。」
 
 ソンジュさんは、鋭く真剣な目をしている。
 
「…ユンファさんには、多角的かつ複雑に思考する能力がある。現に…――先ほども決して、貴方は二元論で物を語りはしなかった…、ユンファさんは、属性によって判断できることはない、とおっしゃいましたね……」
 
「………、…」
 
 僕は、小さくそれに頷いた。
 するとソンジュさんは、その眼光を強めたのだ。
 
 
「…しかし…――ご自分を淫魔と称するユンファさんは、は…善と悪、そのでしょう……」
 
 
 
 
 
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