ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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愛する瞳

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 ――チィンッ
 
 
 
「――…っ!」
 
 また誰かが乗り込んできた。ソンジュさんはビクッと驚き、離れようとした。――しかし僕は、ソンジュさんの背中に腕を回して強く抱き寄せ、今度は僕が離れなかった。
 
「……ん…、…んふ…」
 
 顔を大きく傾け、ソンジュさんの唇を強く、大きく、何度もちゅぷちゅぷと食む。…声も誘うように出す。――ソンジュさんの口の中に舌を差し込み、クチュクチュ音を立てながら彼の舌を、舌の裏を激しく舐める。
 
 そうしてキスを続けた僕に、結局ソンジュさんも人を気にするのをやめ、いよいよ身を乗り出しては、僕とねっとり舌を絡め合わせてくる。
 
「…ん…、んぅ……♡」
 
「…ふ……、ふふ……」
 
 僕たちのキスシーンを見せ付けられている人は今、どんな顔をしているのだろうか。軽蔑しているだろうか。睨み付けてきているだろうか。――あるいは顔を背けて、ただ目的地へと早く着けと願っているだろうか。
 
 僕たちの関係性はなんだと思われているのだろうか。
 恋人同士か、いや。もっと危うい恋愛関係か、いや。男娼と買い手…近い。きっと間違いなく近い。
 
 ――首輪をした性奴隷と、その性奴隷を飼っているご主人様…そういったところだろう。
 
「……ん…、ん……♡」
 
 僕は宝物なんかじゃない。僕なんか、ぎょくなんて美しいものじゃない。愛液とともに流れ出てきた、ケグリ氏の精液を太ももに伝わせている。

 
 ――僕はこういう、浅ましい性奴隷のオメガなのだ。
 
 
 だから優しくなんかするなと言ったんだ。
 きっとこれで、ソンジュさんも思い知ったに違いない。
 
 ソンジュさんは僕の両頬をその大きな手のひらで包み込み、額同士を合わせて僕の目を見つめてくる。――すう…と細まったすこしタレ目の切れ長、淡い水色の瞳が熱っぽい色気をやどし、うっすらと妖艶な潤みをまとっている。
 
「…は…、ふふ、激しいですね、ユンファさん…」
 
「…はぁ…、は…、…ふふ…」
 
 僕は目を細めて笑った。
 僕の中の淫魔が笑ったのだ。
 
「……、……」
 
 その僕の笑みを見て、ひょいと片眉を上げたソンジュさんもまた、とても暗く妖艶な目をしている。
 
 そして、また顔を傾けた彼は、僕の唇に噛み付いてくる。――今度は強く、背後の壁に僕を押し付けるような力強いその唇は、僕たちの唾液に熱く湿っている。
 
 ぬるりぬるりとしたそのやわらかい唇が、僕の唇をはむはむと食むたび、ちゅぷ、ちゅぷと小さな水音が鳴る。
 
 僕はそっとソンジュさんの片頬に触れ、彼とは反対の方向へ顔を傾ける。――そして、そのまま大きく口を開け、ソンジュさんのふくよかな唇をあむあむと食みかえす。
 
「…んふ…♡ …んん……ん……♡」
 
 キスだけで鳥肌が立つ。――僕の、ニップルピアスをつけた乳首の先端はきっともう勃っている。…それどころか、僕の自身さえもう芯を持ちはじめている。
 
 僕の速くなった心臓の鼓動にあわせてドクドクと脈打つ僕のソレは、誰かに触れてもらえないのはもちろん、もうずいぶん自分で慰めていないからか、最近勃起しにくくなっていた。
 
 いや、もちろん疼くし勃つのだが、勃っても完全には勃たず、今もあくまで疼く以上のものではない。――どうせソコじゃイかせてもらえないと、僕の体まで学習してしまったようだ。
 そしてそれは、たとえケグリ氏のそばに居なくとも、ご主人様がソンジュさんになったとしても、きっと変わらないことなのだろう。
 
 だからか――こうして興奮してしまうと僕の体は、むしろ嫌というほど快感を叩き込まれた乳首や膣、アナルばかりが遠慮なく物欲しさを訴えかけるようになっている。…そこにならから――僕が、メス奴隷、だからだ。
 
「……ん…、…ふ…」
 
「…ふ…、……――ッ♡」
 
 浅ましい体だ。――男のくせに、メス奴隷。
 男性器を悦ばせるためだけの、メス奴隷の体。――キスだけで、…軽くイってしまった。
 あまりにも興奮してしまった。――エレベーターという、外で。人に見られながら。…いやらしく体をくねらせ、キスをし…僕は乳首も、ピアスも、下腹部のタトゥーも…上半身の肌を、すべてその人らに見せている。
 
 
 興奮してしまった…――。
 
 
 
 この変態。マゾ。肉便器。浅ましいメス奴隷。
 
 
 
 
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