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ぼくはぼくの目をふさぎたい※モブユン
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やけにふわふわとした、非現実的な感覚が僕を襲う。
これで許せるか、許せないかと聞かれたら――正直、まだわからないのだが。
ほとんど泣いている三人に――ソンジュさんは、ふふ、と暗く目を細めて笑うと、その場にしゃがみこむ。
そしてやけに甘ったるい、優しい声を出すソンジュさんは、こう言うのだ。
「…さあお前たち、頭を上げていいですよ…? 今こそユンファさんの目を、恐れ多くも見るのです。…」
「……っは、…っは、は、…」
まず先に頭を上げたケグリ氏は、ガタガタ震えてながらも床に手を着いたままでおもむろに、頭を上げた。――僕に向けられたその怯えきった顔は、その涙ぐんで充血し、見開かれた目は、今にも殺されようという、命乞いをしている人のようだ。…鼻水もダラダラ流し、脂汗まみれのその顔は、正直見るに耐えない。
それから次に頭を上げたモウラは――怯えの中に、僕に媚びるような笑みを浮かべた。…許してくれるよな、ユンファなら俺を許してくれるよな、もうやめさせてくれよ、というようなその目を、僕はただ冷めた気持ちで見下ろしている。
許すわけ、ないだろ、と。
またほとんどモウラと同じタイミングで顔を上げたズテジ氏は、もはや怯えの感情以外は何もないからっぽな顔をして、ただ許しを乞う子供のような目をして僕を見上げている。
「…………」
ぼうっとその惨めな三人を、誰ともなく眺めている僕の側――ソンジュさんはすっくと立ち上がると、また僕の腰を抱いて、寄り添ってきた。
そして、そんな三人を伏し目がちに見ているソンジュさんの笑みは、恐ろしいほどに美しいが、恐ろしいほどに冷ややかで、威圧的だ。――ソンジュさんは優しい、優しい声で、また彼らにこう言えという。
「…わたくしたちは臭くて醜い、どうしようもない、惨めな変態です。…わたくしたちは人間ではありません。人権なんか持っていない、本当は…とても惨めで気持ち悪いガマカエル、とても惨めな太った家畜のオス豚、とても惨めで穢らわしいドブネズミなのです。…」
「…っぅわ、わたくし、…」――そう各々が口にしようとしたとき、ソンジュさんは「待て」と犬の躾をしているかのごとくそれを制する。
「…おいおい、ユンファさんの靴を舐めながらだろ…? そうして彼に縋りながら、許しを乞いなさい。…」
「………、…」
え、――かなりサディスティックなその命令に、僕こそがゾクリとして慄く。
しかし――あまりにも従順に、ケグリ氏はドタドタと身を低くしながら四つん這いで、僕の足元に這い寄ってきた。…僕はとっさ怯えて、というか…嫌悪感から、何歩か後ずさったが。
ケグリ氏の手が僕のふくらはぎを捕らえ、――僕の、ホコリだらけの黒い革靴を、彼はベロベロ舐めながら。
「わたくしケグリは、…んっ…臭くて醜いぃ゛、惨めな変態です゛、…はぁ、…どうしようもない変態で、…私ノダガワ・ケグリはぁ、…にっ…人間では、ありません゛、…人権などありません、とても惨めな気持ちの悪いガマカエルです、…」
「…………」
足元に這いつくばり、僕の革靴を舐めているケグリ氏は、真っ赤になった顔中に粒になるほど脂汗をかき、鼻水をダラダラ流して、見開いた目を充血させて泣きながら、その横に伸びた唇をぶるぶる震わせて――あまりにも悲痛な表情、あまりにも悲惨で、僕は目を背けたくなってきた。
ただ…なぜか僕は、食い入るように――その醜く歪んだケグリ氏の泣き顔を、そうして僕の革靴を舐める惨めなその人の姿を、ただじっと見下ろしている。
「おいおい…、誰が。その汚い手で――ユンファさんに触れていいと言ったんだ、ケグリ。…」
と、僕の隣であざけりの笑みを含めながらそう言ったソンジュさんが、僕の片脚を取ったケグリ氏の手をドカッと踏み付けて外した。――ケグリ氏はその痛みからかグガッと唸ったが、……いまだステージ上にいるモウラとズテジ氏、ズテジ氏は泣きそうな顔をしているが、…モウラは僕と目が合うなり、ニヤリとした。
「…ユンファ…? 本当に、俺に靴を舐めてほしいの?」
「……、…」
やけに甘ったるい声でそう僕に聞いてくるモウラの、そのつぶらな瞳が僕の目を見つめてくると――僕は、息ができなくなる。…モウラは続けて「ユンファが舐めてほしいなら、もちろん舐めてあげるけど…」と、そして、
「…その人に無理やりやらされてるんだよね、ユンファは……ねえユンファ、その人が新しいご主人様なの…? ユンファは嫌なのに、その人、無理やりそういうことを俺たちにさせて…こんなの、その人の自己満じゃないか、ねえユンファ…、そうでしょ…?」
「………、…」
と…上ずった猫なで声で言ってくるモウラに、僕は凍り付いてしまい、今にも「もうやめてください」と言いそうになった。――それはこんなことを三人にさせているソンジュさんに対してなのか、…あるいは、ご主人様である三人へと許しを乞うものなのか、ぐちゃぐちゃになっている今の僕の頭ではわからない。
「…ふふふ…」
しかし僕がそういう前に――ソンジュさんが、僕の隣で不敵に笑う。…はた、とした僕は、唇を引き結ぶ。
「…ドブネズミが何か、排水口からチューチューチューチュー…戯れ言を言っていますね。」
「………、…」
一瞬ムッとしてソンジュさんを見たモウラは、すぐさまふっとうつむく。――しかしソンジュさんは、おだやかな声でこう続けた。
「…いつ、誰が。自己満足でないと言ったのです? これは全て、俺の自己満足だ。――だが、そうであっても…」
「……っ」
グッと強く僕の腰を抱き寄せてきたソンジュさんに、僕はややぐらついたが、…彼は強い眼光で、うつむいたモウラを見据えた。
「…俺は正直、お前らほど傲慢ではないと自負しています。――俺は、ユンファさんに無理やり性奉仕をさせているわけでも、自己満足なセックスで彼を傷つけているわけでもない。…まして、ユンファさんにはさんざん同じようなことをさせてきたのでしょう、お前は。つまりそんなこと、ドブネズミのお前が言えたことではないのですよ。なあ、モウラ……」
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