ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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「やっと見つけた」

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 しかし昔のヤマトであれば、オメガ属の赤ん坊が生まれただけで両親は歓喜していたそうだが――現代のヤマトでは、オメガが生まれたということを嘆き悲しむ両親ばかりである。…だから僕も、オメガで生まれたというだけで実の両親に捨てられたのだろう。
 
 さて…そんなことより、オメガ属にももちろん男女という分類は存在しているが、誇張して言ってしまえばオメガ属は、“妊娠するべき種族”と呼ばれている。
 ――自分もオメガ属であるから、正直言っていて悲しくはなるが――オメガは、女性も男性も関係なく子供を妊娠することができるためだ。
 
 ということはもちろん、オメガ女性はもちろん、オメガ男性にも女性器が存在している。――簡単にいえば僕らオメガ男性は、アルファ女性のの“両性具有者”だ。
 いや、もちろん“両性具有”であるので、オメガ男性にも男性器がある。……あるにはあるが、一般的なオメガ男性の陰茎は他種族に比べて衰退しており、いわゆる“短小”の人が多いし、睾丸にしても小ぶりなことが多い。
 ただし不思議なことに、僕はそうじゃないのだが――下手なベータ男性よりは、また、確実に一般的なオメガ男性、アルファ女性よりは…その…――。
 
 また、アルファ属の体が大きく屈強であるのに比べ――オメガ属は男女共に、小柄な人が多い。僕らオメガ属は、いわゆるネオテニー幼形成熟ともいわれている。
 たとえ成人していたとしても、華奢な体付きの、言ってみれば少年・少女のような風貌の人ばかりということだ。…また、筋肉もどの種族より一番発達しにくいとされている(下手すればベータ女性より筋力がないとか)。…そして、オメガ属は童顔が多い。…体の骨格同様、顔の骨格自体もあまり発達しないため、彫りが浅く、鼻が小さい。また目も優しげな人が多く、子供のように目が大きくて、つぶらな人がとても多い。
 
 ただ、ことにオメガ女性はそのように小柄でありながら、胸、お尻がかなり発達し、とくに下半身(お尻から下)にたっぷり脂肪がつくという特徴がある。――筋肉量もないために彼女たちは太りやすく(全身に脂肪がつきやすく)、脂肪も多いが、オメガ女性は骨盤そのものが発達して大きい。
 またオメガ男性のほうは、逆に痩せ型となりやすいものの、子宮がある都合上、やはり他種族の男性よりは骨盤が広いとされ、お尻には脂肪がつきやすいそうだ。――そして一般的なオメガ男性は、まるで女性のような風貌の人も珍しくないのにも増して、声変わりをしない(高い声のまま)の人もわりと普通にいるのだ。

 ちなみにその中性的な見た目や声から、元来はゲイやバイではない男性であっても、オメガ男性ならイける、という人はかなり多い(僕個人としては、小児性愛的であるのが何とも引っかかるが)。
 
 だから名前にしてもオメガ男性は、中性的な名前を付けられる人が多い。――そう、僕もその一人である。
 しかし、男とはいえオメガの僕にしてみれば、もはや諦めているところだ。――まさか僕が生まれた時点でとは、誰も予測していなかったことだろう。
 
 そう…これに関して、僕は全く当てはまらない。
 やや面長気味のうりざね顔、鼻は長めでしっかりと、薄紫色をした目のまぶたは鋭い切れ長ツリ目がち――身長は下手なベータ男性より高い178センチ、筋肉質というほどでもないが、まあベータ男性くらいには筋肉がつきやすく、おまけに骨太なほうだ。…学生時代はそれこそ、運動にしても得意なほうであった。
 また、僕はしっかり声変わりしていて、男性的に声が低い。…特別低いということもないが、それであってもやや軽めの青年声である。やはり当てはまらないのだ。
 
 それからオメガ属は、まるで赤ん坊のように肌が白く、やわらかな肌を持っており――白くというと黒人の方に失礼だが、すなわち生まれ持った以上のメラニン色素が増えることがなく、日焼けにも弱いため日焼け止めは必須なのだ――、また、成熟しきっていない子供のように、体毛にしても限りなく薄いか無毛である。
 そのため乳首や性器にしても淡い色合いで、また無毛であること、一般的には性器の見た目も子供のような発達具合であることから、さながら子供っぽい未成熟な下半身をしているようにも見える。
 
 ちなみにこれに関しては、僕もなぜか当てはまっている。――全身の肌色は青白く、それにともない、性器や乳首の色もな色合い、それから、恥ずかしながら鼻から下はまったくの無毛である。オメガ男性にして思春期のころあまりにも背が伸びたので、ヒゲやらスネ毛やらも生えるかと思っていたが…幸か不幸か、それは生えなかった。
 
 ちなみに生物学的にオメガ属は、それこそアルファ属の対極の存在、“つがい”として生まれたんじゃないかとのことで――基本的にオメガ属は、アルファ属に守られる存在であったため、そうした中性的かつ子供っぽい風貌は、よりアルファ属の庇護欲を掻き立てられるように進化したのではないか、とのことだ(非力な子供を守りたい、という本能は、通常どの動物にも共通しているだろう)。
 
 つまり、オメガ属が非力かつ小柄であるのは、あくまでも退化ではない――逆に、守られることで生き残ってゆくためにそう進化した結果、オメガ属はそうなっていった…と、いわれているのだ。
 
 しかし、その守りたくなるような要素は皆無の僕…確かにオメガ男性であるはずの僕は、どうもパッと見はあまりオメガらしくなく、それどころか、どこかである――いや実際、しばしばアルファに間違われることがあるのだ。
 
 それこそ本当に、僕はアルファ属の血が入っているのかもしれない、とは自分でも思っているのだが――現状で、実両親に捨てられた僕にそれを知る術はなく、真相は闇の中である。
 ただおそらく…僕のこの容姿もあってケグリ氏は、オメガにして大学院にまで進学した僕に対し「お前はをしている」なんて言ってくるのだろう。――ある意味ではやっかみである。
 
 
 

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