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神の目は見ている※モブユン
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しおりを挟む「…申し訳ない、先ほどからご無理ばかりさせて…」
「…っい、いえ、大丈夫です、ごめんなさい、ごめんなさい取り乱して、…――大丈夫ですから、…僕は、大丈夫です…、僕が勝手に話したことです、大丈夫です…」
ソンジュさんは心配したように僕の片手を握り、うつむいている僕の顔を覗き込んでくる。――僕は軽く顔を上げてぼんやりと、その心配そうな色をした彼の瞳を見て、…なぜだか、笑っている。
「――僕の体…もう、もう二度と元には戻らないんです…、タトゥーもあるし、…もう…誰に何をされても、気持ち良いから…」
それどころか、僕の精神も、もう元には戻らない。
僕は一生このまま、この汚れた体と魂のままだ。
だから諦めている。いやらしいタトゥーにピアスまである。もう全部、どうでもいい…――もう、誰も信用なんかできない。
「…だから、僕は綺麗じゃありません」
「………、…」
「レイプされても…今はもう、きもちいいんです」
騙されるのはもう嫌だ。
せめて誰かに騙される人生ではなく、僕は一人で生きていきたい。――こんな体で、こんな僕で、…どうして大好きな両親に会えるだろう。
ソンジュさんが僕を美しいだ、綺麗だと言うたびに覚えていた、忌避感の原因はこれだ。
「…だから…自業自得なんです。…抵抗しようと思えばできるのに、しないから…きもちいいから…、だから…ソンジュさんが、僕を美しいとか、綺麗だとか言えるのは…僕のこと、何も知らないからです…――だから、ちゃんと言っておこうと思って……」
はじめから助けを求めようなんて思っていなかった――今も、誰かに助けを求める気はない。
ソンジュさんは険しい真顔をして、眉を寄せる。
「違いますよ、ユンファさん。…貴方は今でも、…」
「そういえば、…モウラも、僕に結婚を迫ってくるんですよ。はは、…本当…僕って、完全にオモチャなので…」
そう…――聞きたくないと切り出したが、…僕のことを騙したモウラもまた、いまだに僕へ結婚を迫ってくる。
あの一件からこの家に、ケグリ氏とズテジ氏と暮らし始めたモウラは、僕のことを性奴隷として扱ってくる。――それこそ『KAWA's』の上にあるアダルトショップ『Cheese』では、ときおり僕を呼びつけ、僕の体を実演販売に使うような男だ。
ただ、モウラはそうして僕のことを扱い、僕がオメガ専門風俗店の『DONKEY』で稼いだ金は、すべて自分の懐に収めているというのに――ましてや僕を抱くときはサディスト全開で、首を締めてきたり、前戯なく挿入してきたり…イラマチオなんて日常茶飯事のくせに――『ユンファを愛してるという言葉は本当だったんだよ…? ねえ、命令じゃないよ、恋人として言うけど…俺のところに来る日だけは、こっそり避妊薬を飲まないでおいでよ…』と。
事が終わると僕に優しい後戯をしながらそう囁いてきて、『あんなブサイクどもの赤ちゃん孕みたいの…? ユンファ、このままじゃアイツらの赤ちゃん妊娠することになっちゃうよ…――結婚するなら俺だよね…、ね。俺の可愛いユンファ…』と、やけに甘く囁いて、優しいキスをしながら、微笑んでくるのだ。
もちろん僕は、もうモウラにそういった感情なんか微塵もないし、ああして派手に裏切られた時点で僕は、むしろあのモウラを殺してやりたいほど憎んでいるくらいなのだが。――表面上言いなりの人形と化した僕に何を勘違いしたのか、モウラまで僕にそんなことを言ってくるのだ。
「…全部、彼らの、ゲームなんです。――僕が堕ちるところまで堕ちるのを見て楽しむ、ゲーム。…一番僕を地獄に堕とした人が勝ち。根を上げた僕が、ノダガワ家の三人の誰かに求婚したら、その人の勝ち。僕が誰かの子供を妊娠したら…その父親である人の、優勝です。」
ケグリ氏が決めたその千日間の期限――一見生やさしいようなそれの意味は、僕は今になってやっと理解していた。
ケグリ氏…いや、ノダガワ家の人々にとってこの状況は、ただのゲームだったのだ。――その千日間のうちに、僕の身も心も魂までもが、そのみじめな性奴隷として地獄に堕ちてゆく様を、楽しむゲーム。
僕がもう戻ってこられなくなるように、結局は一生僕のことを性奴隷とするために、ただし期限がなくてはゲームとしては面白くないと、ケグリ氏は千日間なんて期間を設けたのだろう(厳密にいえば千日間ではなく、借金を加算してズルズルと契約期間を引き伸ばすつもりなんだろうが)。
僕が根を上げ、いつか誰かと結婚をする、と答えた時点でその誰かが勝ち。――あるいは僕がノダガワ家の誰かの子供を妊娠した時点でもその人の勝ち、なんだろう。
ただ――現状はツケでありながらも避妊薬を渡されている僕が妊娠したことは、まだ一度もない。…しかしそれを言い換えれば、その避妊薬のせいで、僕が性奴隷である期間は今もどんどん伸び続けている。
また契約書にもあるとおり、僕がノダガワ家の誰かに「避妊薬を飲むな」と命令されたら――たとえオメガ排卵期中だろうがなんだろうが、僕はそれを飲むことができない。
しかし、まだ誰もそうした命令はしてこない。――まだまだ僕をオモチャとしてもてあそび、壊して、楽しみたいからだろう。
「…多分僕…いつかきっと、――僕、本当に…ノダガワ家の誰かの子供を、妊娠させられるんだと思います。」
つまり、彼らの命令ならば僕は、妊娠さえもしなければならないのだ。
まあ実際、もうこんな体では――僕はもう二度と、元の世界へなんて帰ることはできないだろう。――もちろん僕は、そのあたりはもう、とっくに諦めている。
「…僕を妊娠させられたら、“KAWA's”も、“AWAit”も、全部自分のものになるんですって。――それで、…僕と結婚して、…僕を一生、性奴隷として利用できるんですって。…」
あの契約書にあるとおりだ。
ノダガワ家の人々が、性奴隷である僕に求婚してくるのは、利益が生まれるからだ。
僕を性奴隷として使って、金を稼ぎ放題になるからだ。
そういえば…あるときケグリ氏は、僕のアナルを犯しながらこう言ってきた。
『気に食わなかったんだ…、馬鹿オメガのくせに、賢しら顔して大学院だ? 金をドブに捨てるとは馬鹿な親だな、お前の親も馬鹿だよ。まあたいそうなことだ。分不相応だ。――お前の本質は、ココだよユンファ…』
僕のことを好きだったと言っていたわり、ケグリ氏は気分によって僕をもてあそびながら、こんなことをよく言ってくる。
このときは…僕の四肢を縛り付けて固定し、乳首にローターを貼り付け、僕の自身にはコックリングをはめ…膣内に挿入したバイブで奥を突きながら、僕のアナルを犯していたケグリ氏は、『ケツまんこでまで感じる変態オメガが、贅沢なのだよ』と、ほの暗いつぶやきをもらした。
『んぅっ…もう、やめ、てぇ、…』
『…何がやめろだ。無駄についてるちんぽ固くして、ぐちょぐちょにまんこを濡らして、亀頭から糸まで引いているぞ…所詮お前などおまんこなのだ。お前など所詮ちんぽのついたまんこだ。分かるか、ユンファ…ココで私たちに媚びるしか能がないのだ、お前たちオメガは。――それどころか穴という穴をまんこにし、おちんぽ様に媚びを売って生きてゆくのが…お前たちオメガの宿命なのだ。わかったかね…?』
『…あ…っク…♡ は、はい、ご主人、さま、…』
――耐えるんだろ、ユンファ。
違う、こんな酷い目に合ってるのは僕じゃない。アナルでまで感じてしまうのは、乳首で感じてしまうのは、乳首にピアスなんかつけて、お腹に淫紋なんか彫られて、みっともない、情けない、淫乱そのものだ、違う、気持ちよくない、気持ちよくない、違う、違うんだ、…――駄目。
もう…無理。
わかってる…――もう、僕は逃げられないんだ。
「…僕、きっと…もう一生――彼らの性奴隷でいるんでしょうね。…期限付きだからって性奴隷を選んだけど、結局…どちらにしても、あの日の時点で僕は、どうせ彼らからは一生逃げられなかった…、此処に来てしまった時点で、もう僕の運命は決まってた…、僕の、負けだったんです」
「…………」
僕は顔を伏せ、震えている唇に力を込め、笑った。
「…僕、本当に馬鹿でした。世間知らずで、頭が足りなくて…わかっているんです。もうどうせ、一生このままなんだって…だから、たまに…ふっと…――どうせそうなら、いっそ、…本当に……」
どうせもう、逃げられないんだし。
別にもう、今更…――妊娠することが怖いとも、思わないし。…というかいずれ、遅かれ早かれ妊娠させられるんだし。
結婚か、性奴隷か。
ケグリ氏は、はじめから――僕がどちらの選択をしても、結局は僕のことを手に入れられるように、と計画していたんだし。
別にもう…全部、どうでもいいから。
命令される前に――自分の意思で、妊娠したい、結婚したいって言ったほうが…少なくとも、性奴隷としての契約は、破棄されるんだし。
「…最近、たまに思ってしまうんです、本当に…もういっそのこと――…僕、ケグリ氏と、…いっそ結婚してしまおうかな、って……」
嫌だけど、でも、ただ、楽になりたくて――でも、
でも、僕は家族のために、死ぬことはできないから。――生きながらに、少しでも楽に、なりたくて。
でも、僕――あんな人の子供、…正直、生みたくない。
その子を愛せる自信がない――でも、
でも…――でも、でも、でも。
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