ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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月下美人はおかしな夢を見る

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 サングラスをかけているその目元はやはりよく見えないが、その輝くようなホワイトブロンドを、上品にもオールバックにセットしたこの男性は今――何か、そのふっくらと艶のある唇を妖しい笑みの形にして、とても楽しそうだ。
 
「さて…――ですか…?」
 
 こんなに上品そうな紳士が、悪魔的な優しい微笑みを浮かべ、またそのような猫なで声で、僕にそう聞いてきた。
 
「…………」
 
 しかしと聞かれても、僕は、そのを庇って、をこの男性へと告げることはできなかった。――それでも彼は、遠慮なく追求を続ける。
 
。ユンファさんのナカにあるバイブのリモコンを、持っているのですか。」
 
「……、…」
 
 僕は直感している。
 彼はもうすでに、僕のナカにあるをわかっている上で、このような質問をしているのだ。
 
 もはや僕が返答する意義などないだろう。
 きっと彼にとっては、それが重要なのではない。――ただこの人は、人の罪を暴いて楽しんでいるだけなのだ。
 
 その見えない目で――僕の青ざめた顔に浮かぶを、舐めるように楽しんでいるだけなのだろう。
 
「……ねえ、ユンファさん…? ですか…?」
 
「…………」
 
 僕は何も言わなかった。
 顔にしろ体にしろ冷え切って、凍り付いたように固くなり、もう感覚がない。
 
 しかし男性は、わざとねっとりとした猫なで声でゆっくりと、更なる追求をこう続けた。
 
 
 
「教えてください。いったい誰なんでしょうか…、どなたです…? ねえユンファさん…、貴方の――は。」
 
 
 
「………、…」
 
 その実僕は今も、僕の背中に向けられている鋭い視線を感じて気になってはいるが、それでも怖くてことはできなかった。
 
 この男性が何も見えていないのはわかっているのだが、それ以上に、普通に視力のある人よりもずっと彼はなにもかもがような人だ。
 ならば、その行動はあわやそれがの答え合わせにもなり得るという、また布ずれの音や、気配なんかでこの人はどうせすべてがのではという、僕にはそうした妙な警戒心があるのだ。――しかし、いや、そもそももう彼は、おそらくもうわかってはいるのだろうが。
 
「…………」
 
 僕は自分を守るために――振り返らない。
 もう貴方はわかっているのだろう。――もう僕の口からを告げようが、あるいは嘘を告げようが、彼には何がで、何が嘘なのか、そのすべてをわかっているのではないか。――事実これまでがそうであったように、わざわざ僕の口から、そのを聞く必要などないだろうに。
 
 たとえ貴方の目に視力はなかったとしても――貴方の目は、孔雀の羽根に付いたあまたの神の目のように、何もかも、この世のすべてが見えているのだろう。
 
 
「もう、わかっていらっしゃるんじゃ、ないですか」
 
 
 
 
 神の目を持つ貴方には――もうはずだ。
 
 
 
 
 
 
 
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