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101 君がための侮蔑※微モブユン
しおりを挟むはぁ、はぁ…というあえかな吐息が聞こえ――ときおりユンファ様の「あぁ…ぁ…」という嬌声が吐息に混じって、俺が背にする扉越しに聞こえてくる。
俺は、ジャスル様の部屋の扉の前に立ち竦み――ただ、虚無感に襲われながらも一夜を明かした。
――もう朝だ。
窓の外から見える空は曇り、白い。
途中俺の、そして部屋の中でまぐわうお二人の食事を持ってきた下女がいた。――しかし俺は食欲もなく、それどころか吐き気まで催していては、無下にそれを断った。
ただ、お二人はこの部屋の中で、共にお食事をとられたようである。
…すると扉越し、かすかに聞こえてきた会話――俺は内容が内容なだけに、耳を澄ませてよく聞いてしまった。
「…ユンファよ…、お前、まさか昨日の夜、あのソンジュとつがってやいないだろうな?」
おそらくは食事をしながら、ジャスル様は共に食事をするユンファ様にそう聞いていた。そう聞かれたユンファ様はというと、即座に。
「…まさか、あり得ません。どうして旦那様がいるのに、あのような下男にうつつを抜かせましょう」
そうさらりと答えたユンファ様に、ジャスル様は「うぅん…?」と意味有りげ唸る。
「…しかしなぁユンファ、昨夜…――何やら部屋の中から、怪しい音が聞こえてきたとの報告が……」
「…怪しい音、でございますか…?」
「…ぐふふ…お前たちがひそひそ会話をしている声、更に――ユンファよ、お前の喘ぎ声まで聞こえてきた、とな…?」
俺はさっと視界が狭まるような感覚に襲われ、ドクンと荒立った心臓に、冷や汗をかいた。――最悪の場合は部屋の中へ入り込み、せめてユンファ様だけでも免責を免れられるようにとも考え、――それと同時に、「そうだ。昨夜俺とユンファ様はつがい合い、契りを交わし合った」と正直に白状して、かの人の手を引き逃げられる機会の到来やも、とも考えた。
しかし、ユンファ様は何か、したたかなまでに事も無げ、さらりとこう答えた。
「……あぁ…、それなら…申し訳ございません。確かに昨日、僕は、あのソンジュと話をしてしまいました……」
「なにぃ?」
あまりにも正直な告白に、ジャスル様が不機嫌そうな反問を低くするが、…ユンファ様は気持ち申し訳なさそうに、固い声で。
「……お叱りは謹んでお受けするつもりではございますが、というのも…――寝間着の場所がわからず…。それに、僕はお腹が空いていたけれど、机の上の果物を食べてよいものかわからなかったものですから…、聞ける相手もあのソンジュしかおらず、それでいろいろと……」
「……、まあそれはよしとしてやっても、…じゃあ喘ぎ声はなんだったというのだ。」
「…そ、それは……お恥ずかしい、話が……」
「……んん…? 何だ、何でも申してみろユンファ…」
ここでなぜか、ジャスル様の声が甘ったるくなる。
…そしてユンファ様の声も、何かはにかんだように、可愛らしいものとなる。
「そ、その……、実は…ジャスル様に抱かれたあと、体が熱くて、熱くてたまらず…、…こ、こうして…は…♡ こうしてはしたなくも、…自分を、慰めてしまったのです……」
「……もっと脚を開いて見せろユンファ」
察する…――ユンファ様は俺を庇うために、恥を忍んでおそらくは、ジャスル様の前…ご自分を慰めはじめたのだ。
「…は、はい…、…あぁ…♡ ジャスル様、ジャスル様ぁ…あ…♡ あぁきも、ちいい…♡ はぁ…んん…♡」
甘い声でジャスル様の名を呼びながら、ちゅくちゅくとわずかな水音まで聞こえてきては、いよいよ歯噛みをする俺だ。――一方のジャスル様は、すっかり気色の悪い湿り気を帯びた声で。
「…そうやって昨夜も、ずーっとおまんこをくちゅくちゅしておったのか…、気持ち良いか…?」
「…ぁ…♡ はい…、とても恥ずかしく、ジャスル様の、お顔が見られぬほど…何度も、何度もこうしてしまいました…。はぁ…ジャスル様が昨日、僕のナカに子種を出されたあと、洗うなとおっしゃられたから…――ずっと…ずっとここに、貴方様がいらっしゃるようで…たまらず……」
震えた艶めくユンファ様の声――無かったことにされた、昨夜の俺とのつがい合い。…いや、俺を庇うためだ、そうだとは理解していても、…本当に夢であったと、ユンファ様のお言葉の通り、本当に無かったことになったのだ、と示されているようで、俺はあまりにも悔しかった。
「…全く…、どうしようもない色狂いよ……」
「…っあぁ…♡ あ…♡ きもちいい…♡ ジャスル様、ジャスル様…もっとしてくださいませ……」
「…ワシなんぞより、あの狼のほうが若く、見目も良かろうに…、初めて会ったときにせよ、お前はあのソンジュに見惚れておったじゃないか…?」
「……そう、でしょうか…? 僕はあの男に、魅力など感じませんが…、いえ、確かに初めてのときは、あの男を見てしまいましたが…あれは見惚れたのではなく、その人が縁談を持ちかけてきたのかと、ただ恥ずかしい勘違いをしてしまっただけで……そんな悲しい勘違いを、なさらないで……」
そう言ったユンファ様は、「なんて逞しい腕、本当に素敵でございます…」と…もしかするなら、ジャスル様の腕に抱き着いてでもいるのか。
「…それに…ジャスル様に力強く抱かれたあとだと、とても魅力は感じません…。僕にとってはあのソンジュ、醜男もそのようでございます……」
「……そうか…?」
「…ええ、至極どうでもいい…。あんな男、昨夜も、居ても居なくても同じでございました…。夜通し貴方様を想い、体を熱くしていたほどに…――逞しいジャスル様のほうが、僕は見目も好みです……」
「…しかしなぁ…先は嫌がっておったろうが、お前…」
「…だって…二人きりで蜜月の時を過ごせると思っていたのに、他の者がいるなんて…、あれじゃあ、貴方様の目を見つめることすらできないではありませんか……」
「……可愛いことを言うのぉユンファ…」
すっかりユンファ様の手玉に取られているジャスル様、世間一般に対する知識こそないが――ユンファ様はかなり、賢いお人のようだ。…まるで、男娼。
はたと激しい嫉妬心からそう思ってしまった俺は、自己嫌悪と怒りが綯い交ぜになり、ビキリとこめかみが、まるでひび割れたように力んだ。
「…ふふふ…本当は…ジャスル様、本当に僕、ジャスル様に見初めていただけて、こんなに逞しい貴方様と結婚できて、本当に幸せなのです……、ほら、こんなに…濡らしてしまうほど……ん…♡ あっあ…♡ ジャスル様、…」
「…こんなぐっちょりと濡らしおって…、まだ飯を食ってる最中だぞ…?」
「…恥ずかしい…けれど、これも大好きぃ…、んん…♡」
「…おぉっぐふふふ…自分からちんぽにしゃぶりつくか、この変態め。…こんな…しゃぶりながらダラダラ涎垂らしおって、なんだこのちんぽこは?」
「……んっ…♡ っはぁ…愛しておりますジャスル様、はしたないコレは、貴方様を愛しているからです…、僕の体が濡れるのも、ひとえに貴方様への愛の証……もっと僕を愛してくださいませ…、お食事は、また…あとで……」
「……、…、…」
媚態だ、俺を庇うための媚態だ、媚態だ、媚態だ、媚態だ、媚態、媚態、媚態、媚態、媚態媚態媚態媚態――。
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