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14 淫蕩の罪
しおりを挟む玄関…その開けた場所を更に進み、ちょうど中央あたりで立ち止まったジャスル様に、腰を抱かれていたユンファ殿も自然、足を止めた。――するとジャスル様は、あたかも彼を見せびらかすよう、ユンファ殿の体をなかば返して向かい合う。…玄関口にちょうどお二人の体の側面が向くような形、…俺は玄関口から、やや進んだ場所で立ち止まる。
そしてジャスル様は「さあて、まずは我がものとなる、その美しい顔をよく見せておくれ…」とねっとり言いながら、俯きがちなユンファ殿の口布の下、顎を持って軽く顔を上げさせ――その顔をまじまじと見て。
「…おぉ美しい、美しい…、いやに艶めかしいが、どうも上品な造りをしておるわ…、まるで何も知らぬ、初心な生娘たらしい顔だのぉ、ユンファよ…?」
「…………」
ユンファ殿は真顔を凍り付かせ、ただぼんやりとその薄紫色の瞳を曇らせて、ニヤつくジャスル様の顔を眺めている。…するとジャスル様、その目をぬらりと色欲に光らせた。
「……しかし…うぅん、どうもお前、隠しきれぬ色狂いの目をしておるわ…、こんな物知らぬような綺麗な顔して、お前、ユンファよ…――いわく、色事が好きで好きでたまらぬ淫乱だそうじゃないか…?」
「……っ、…」
そうジャスル様に言われたユンファ殿は、きゅっと眉を顰めた。――しかしジャスル様は、むしろぺろりと醜い唇を舐めて。
「…お前…何をそんな、違います、という純情ぶった顔をしておる? 年端もゆかぬうちに、自ら下を見せつけ叔父さえ誘って、いや、お前なぁ、こんな顔して、随分といやらしいんだのぉ…? この顔で、そんな下品でやらしい淫乱だとは、ワシゃ思いもせんかったぞ……」
「……っ、それは……」
その恥辱の言葉にユンファ殿は、泣きそうに顰めた顔を、それは違うとふるふる、横に振った。…カタカタと小さく震え、くらくらと薄紫色の瞳を揺らしているユンファ殿に、ジャスル様はニヤリとすると――更にその人を、この大勢の前で貶める。
「…よいよい、旦那様のワシにそう嘘をつくでないわ。…ぐふふ、お前、聞けば“淫蕩の罪”とやらで、あの小屋に閉じ込められておったそうじゃないか…――あの籠の中で一人寂しく、毎日毎日抑え切れぬ色欲に、体を熱くしておったのか…?」
「……いいえ、…、…」
ユンファ殿は口布の下、下唇を噛み締めた。
しかしジャスル様は、どんどん赤くなってゆくその人の、その恥辱を受けて屈辱に歪む美しい顔を、むしろ楽しんで見ているようだ。
「…なあユンファ、もうかまととぶらずともよい、素直に言ってごらん。本当は色事が大好きなんだと、なあ…本当はお前…――毎日毎日おまんこをぐっちょり濡らして、狂ったようにあそこで一人、ずうっとおまんこをくちゅくちゅ、くちゅくちゅとひたすらいじって、なあ…? なあユンファ…そうして自分の疼くまんこを、一人寂しく慰めてばかりおったのだろ…?」
「…っそんな、そんな淫らなこと、…僕しておりません、…」
ほとんど泣いているようなユンファ殿は、震えた小さな声でそれを否定し、キッと涙目でジャスル様を睨み付けている。――しかしジャスル様は、ほとんど彼のそれを無視して続ける。
「…嘘をつくでないわ。…朝も昼も夜も、ずーっとおまんこくちゅくちゅしながらお前、あぁココに硬くて立派な魔羅が欲しい、この疼いて疼いてたまらぬおまんこに早く魔羅をおくれと、あぁ誰ぞ此処へ来て、誰でもよいから早く、早く己を犯しておくれと願っておったんだろ、本当は…なあ? 童貞のくせしてなあ…?」
シーンと嫌な空気感のこの屋敷玄関に響く、このわいせつなセリフ、俺でさえ気分が悪い。――しかしジャスル様は、違う、と嫌がっているユンファ殿を見つめながら、さらにねっとりとした声を響かせる。
「…なんだその顔は…? 聞いたぞ、人があの小屋へ立ち寄るたびにお前、その者をいやらしく誘っておったそうじゃないか。――むふふ…どうやって誘った? またおまんこでも見せ付けていたのか?」
「…っそ、そんな真似しておりません、誰も、誘ってなんか、…そんな淫らなこと、…願ってすら、…」
「ぐふふ、いやらしいのぉ、童貞のくせして、お前……」
そう、泣きながらのユンファ殿の言葉を遮るジャスル様は、かなり興奮しているらしい。――逸物を膨らませているのが、服の上からでもしかとわかる。
「……なんて卑猥なことを、…っ」
ユンファ殿はいよいよ顔を顰め、ほろ、と涙をその険しい切れ長の目からひと粒こぼすと、非難するようにジャスル様を睨み付ける。
「…おぉ泣いても可愛いのぉ…、しかしなぁユンファ、もうそう可愛こぶらずともよいのだぞ…? ――ワシはな、むしろお前が淫乱だと聞いたからこそ、お前を娶ってやったのだ…。お前にたんと子を生ませるてやるためには、お互いに夜伽好きでなきゃならんだろう…? なあ…?」
「……、…、…」
は、は、と泣いて短くなった呼吸をもらしているユンファ殿は、ジャスル様に掴まれた顎を、いよいよパッと振り払い――そうして横へ背けた顔を俯かせ、羞恥にか、その白い両手で覆い隠した。…彼はひ、ひ、と小さくしゃくり上げて泣いている。
「顔を隠すなよぉ…、泣くな泣くな、ユンファ…もっと可愛い顔をしておくれ……」
さすがに焦ったのか、なんなのか…ジャスル様は猫なで声で、どこか気色の悪い寂しさを醸し出すと、ユンファ殿の震えている両肩を撫で回しつつ、そのまま更に言葉を継ぐ。
「…よかったじゃないか、ユンファ…なあお前、やっとあの小屋から出られたんだろう。…それもこれも全部ワシのお陰じゃ…な…? もうワシにそう冷たくするなよ、感謝してくれたっていいだろう…? なあユンファ、なあ…ワシの可愛い可愛いユンファよ……」
「……っ、…は、…っはぁ…」
しかしユンファ殿は、ジャスル様の慰めらしいそれに何も言わず、ただ顔を覆い隠したままに、ひくひくと泣いているだけだ。――いよいよ焦ったか、ジャスル様はユンファ殿の両肩を持ち、…それからその人をガバッと抱き寄せ、抱き締めた。
「……っ! 嫌、…嫌だ、離して、…」――ただユンファ殿は、赤くなったその顔を露骨にも嫌そうに顰め、逃れようと暴れているが。…彼はジャスル様を押し退けようともがき、身をよじり、「嫌ぁぁ…っ助けて、嫌、…」と、いっそ混乱までしているか。
しかしもちろん、誰もユンファ殿のことを助けはしない――そしてジャスル様は、強い力でその人を抱き締めて離さないまま、ねっとりとした優しげな声で。
「…何もそう嫌がることないじゃろうが、な、な…ユンファ、ユンファ、これからはもう、ワシがお前に寂しい思いなどさせないよ。…ぐふふ、メオトとなるんじゃ、たっぷり睦み合おうな、お前の欲しがりなおまんこが寂しがる暇もないほど、ワシがお前の中も外もたっぷりと満たして、悦ばせてやるからな……」
「…は…っ、……――。」
いよいよ諦めたようなユンファ殿は、ひたりと抵抗をやめた。…すると彼は途端に、その薄紫色の瞳を曇らせ――横向き、下方斜へ伏せられたその美しい顔は、涙に濡れていながらもぼんやり、虚ろな表情となった。
そうして大人しくなったユンファ殿に味をしめ、ジャスル様は彼の尻から腰までをいやらしく撫で回しつつ、ニヤリ。
「…お前の淫乱な体が、お前の淫蕩な魂が欲しておる、旦那様の大きく立派なちんぽも子種も、これからいくらでも、たっっぷりとくれてやるぞ…? なあユンファ、なあ…そうしてたんとワシの子を産んでいいんだぞ。喜べユンファ、なあ、お前の望み通り、何人だってワシの子種で孕ませてやるから…――なあ、これからいっぱい、いぃっぱい楽しもうなぁ、ユンファ……」
「…………」
「…………」
ユンファ殿はもはや、何も感じないようにかぼんやりとし、まるで血の通わぬ人形のような顔をしているが…――はらり…赤らんだその美しい切れ長の目から、またひと粒涙をこぼした。…それですら美しいのだから、あるいはそれが罪なのやもしれぬ。
……哀れな…――しかし、やはりどうしても俺には、このユンファ殿が淫蕩なようには見えぬ。先も、下に関しての恥辱に顔を歪めて赤面し、泣いてしまった彼が、…この、どう見たって初心そのもののユンファ殿が…――“淫蕩の罪”?
いや、どう考えてもやはり、それは何かの間違いだろう。――とはいえ…確かにリベッグヤ殿は、ユンファ殿の居ないところでこっそりと、「あのユンファ、その実あの小屋に食事を運ぶ者さえ誘惑するような、大変どうしようもない淫乱なのでございます。」と、ジャスル様に耳打ちをしてはいたのだ。
ただ結局、ユンファ殿を娶りたいと申し出たジャスル様にリベッグヤ殿は、では少々二人になれますか、あのユンファのことで更に、お教えせねばならぬことがございますので、と――もちろん、そのとき彼らが二人きりでしていた話など、俺は知らぬ。
今も泣きそうになっていたあのユンファ殿が、年端もゆかぬ年頃に――叔父に自ら下を見せ付け、誘った…それに関していえば、真偽不明ながらも俺は、初耳だ。
にわかには信じられぬ。…が…――。
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