食べる喜び噛み締めて

中学二年生のクラス替えの直後に、大木萌子の平和な日常は崩れ去った。

あいつらから酷い暴力を受けるようになったからだ。

この部屋から出られなくなって、もう五年になる。

ひとりぼっちの部屋で萌子は、いつものように悩んでいた。

夜中に食べたら太ってしまうだろうか?

分かりきった疑問に「太るに決まってんだろ!」と、声に出して自分にツッコむ。狭い室内に虚しく声が反響した。

ふと、姉の事を思い出す。

二年前まで一緒にこの部屋で過ごしていた姉は、体重が八十キロを超えた頃に出て行ってしまった。

部屋に鳴り響くノックの音と共に、意外な結末への扉が開かれた。
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