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第一部 第十三話 二人の男の対峙 ④

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部屋の狭さのわりに広々としたバスルームで互いに体を洗いっこしたりして… 最後にバスタブに漬かりながら俺達はルールを決めあっていた。そんなことをしていると、まるで青臭いクソガキ同士の恋愛みたいで少しくすぐったいけれど。

「二人きりの時だけじゃあ寂しい気もするんだよね」

「だけど、マネージャーさんはともかく撮影スタッフさんやメディアの前で呼ぶわけにもいきませんから」

「まあ、そうなんだけどさ」

触れ合っている素肌が気持ちよくて、俺の下半身はそろそろまた限界を訴えそうだ。この空気を壊したくないんだけど、空気を読んではくれないらしい。

「そうだ。日本に帰ったら新しい簪をプレゼントしたいなあ」

以前から気になっていたことを少し勇気を出して言ってみると、志鶴さんは少し考えてから、

「そうですね。…少しずつ思い出にしないといけないですね」

と複雑そうな顔で言った。聞いたことなかったけど、どうも嫉妬しそうな予感がするなあ。こういう時の俺の勘はよく当たるんだよ。

「実は…」

「その顔、海翔さんがらみでしょ? じゃあ、余計に! 俺がもっと使いやすいのを選ぶよ。バリエーションとかもっと使い分けた方が良いって。もっとかしこまった席に呼ばれることもあるかもしれないしさ」

後ろから抱き寄せているので顔は見えないけれど、よほど思い入れがあるらしい。それはそうかもしれない。きっと長く大事にしてきたのかもしれない。けれど、俺とこれから作っていく思い出を大事にしてほしいから。

しかし、意外だなあ。あんだけ稼いでる人が髪留めを一つ送ることも思いつかないなんてさ。

「そうですね。髪留めというとこれだけでしたけど、不便は感じなかったので… でも、普段着に合わないカラーもあるし、もっと使いわけないといけませんね」

「無理にとは言わないけれど、俺と一緒に生きていくってこういう事でしょ? この簪は似合ってるから使い続けてもいいけれど」

深く抱き込むと、下半身のものが志鶴さんの背中に触れる。さすがに雰囲気が変わってしまう。志鶴さんが泣き出しそうに恥ずかしそうにしながら、振り返る。

「あの……」

「うん、ごめん。実は話してる途中からこうなっちゃった。もう一度付き合ってくれる?」

「なんだかのぼせそうです。でも、ずっと我慢してくれてたんですよね。いいですよ。アラン」

バスタブの温度は温いけれど、俺でさえ汗ばむほどに興奮しているんだから余計なんだろう。

「OK。じゃあ、俺に任せて。のぼせないようにしてあげるし」

自分でも分かるくらいいやらしい顔で笑っているだろうと思ったけど、気にしない。

「俺の上に乗ってもらうよ。大丈夫… あとは任せてくれればいいから」

そう言いながら足を大きく開かせて膣を探り当て、一気に志鶴の体を持ち上げると、バスタブのお湯に力を借りて中へ入っていく。

「ぁ、ぁあ、あ… なんで、見えてるみたいに…!?」

俺がどうしてこんなに慣れてるのかは知ってても、不思議でならないんだろう。声を漏らしながら戸惑うのが目で見えてるように分かる。白くきれいな背中に幾つもキスマークを散らしながら緩く腰を使う。

その間も俺の指先は悪戯好きで手のひらサイズの可愛いおっぱいをマッサージとは違う仕草で揉んでいた。

「だめ、それ、ぁ、あーー…!」

ビクビクと震えて、いくらもしないうちに膣がギュウッと締まる。その締め付けに導かれるようにして幾度か大きく突き上げ、俺も射精した。ゾクゾクと鳥肌が立つほどの強烈な快楽が全身を駆け巡る。

「っつぁ…!! あー… カッコ悪い… 声出たし」

射精する快楽なんて誰とどうしようが同じだと思ってたけれど、恋しい女相手だとこうも違うのか… さっきはそこまで思う余裕なかったけど、なんだか中毒になったようだ。

「はぁ… お風呂のお湯、汚れちゃいましたね」

少しけだるそうな様子で志鶴が呟く。ここで終わらせてあげたいけどなあ。ダメだな。今日の俺。

「もう一度だけ付き合って。そうしたら昼メシまで休んでていいよ」

と、耳の形に添って舌を這わせる。湯舟のせいでなく汗が額から滴り落ちた。

「俺は撮影に行くからさ。英語のセリフも覚えてるし、大丈夫。ね?」

緩く腰を使いながら言うと、声を漏らしつつ頷く。

「少し休んだら、ぁ…! 私も行きます」

俺のスケジュール、なかなか過酷だったけどなあ。だけど、この人ならやりかねない。嘘の言えない思いつかない人なんだから。

「それじゃあ、気合入れないとね! NGなんて出さないよ~」

「ふふっ、それはそれで撮影所の皆さんも楽ができますね」

そうはいっても甘くないだろうなと、俺は内心で気を引き締めていた。なにしろ人生初のハリウッド映画だ。どれだけ厳しい世界が待っているか知れたものじゃない。

帰りもどれだけ遅くなるか分からないし、休日はしっかり休んでおきたい。だけど、今ならどれだけ過酷なスケジュールでも乗り越えられる気がした。だって、俺にはなにより恋焦がれてやまなかった人がいるんだから。

「約束するよ。志鶴、俺は必ずあなたの所に帰ってくるから」

「…はい。待ってますから」

こめかみにそっとキスして、その後は互いに快楽を分かち合う一対の男女になった。
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