魔王なんだから人を殺しても合法だよね!!〜クズな神様に無茶振りされた人間嫌いの魔王がおりなすダークな物語〜

残念な隣人さん。

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魔王の始まり

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 3人は冒険者ギルドを出てシーヴァルを回収しつつ、宿屋に向かい以前の憲兵にした演技をかまし…それを食らった宿屋の店主は豪快に号泣しつつ

「大変だったなぁー、いい!好きなだけいろ!なに?宿代なんてあれだあれ、いつか支払ってくれりゃいいんだよ!子供なんだから大人に甘えとけ、な?」

ヒスイは店主をガン見して

 だまされるなおっちゃん!そいつは魔王様以外は雑草としか思ってない吸血鬼だっ!!(※雑草どころか道端の石ころだと思ってます)

と、必死で訴えていたが…その視界はコハクによって遮られ失敗に終わる。

 明らかにギルドでのことを根に持っているのだろう…。

「いえ、そんな悪いです…せめて今あるぶんだけでも払わせていただかないと。」

「しっかりもののにーちゃんじゃねーかよぉ…いいっていってるだろー」

 と、言うように店主は純粋な好意からネメシス達はパフォーマンスとしてこの押し問答をしばらく繰り返し…結果店主の手伝いをするということで落ち着いた。

 子供はもう寝る時間だと言われるまでネメシス達は店主の手伝いをすると、男三人部屋に集まり…

「なぁ魔王様、これからどうするんだ?」

「冒険者をしつつ魔王城を目指すんじゃないの?」

 兄弟のそんな疑問に彼女は爆弾を投下する。

「明日、魔王城へ向けて徒歩以外の手段で行く。」

「馬車にでも乗るのか?」

「魔王様、僕…なんか嫌な予感がするだけど…気のせいだよね?」

 うまく言えないけどなんかすごく嫌な予感がするとばかりにジト目を魔王に向けるが、彼女はもともとほとんど表情が変わらないので変化があまりわからない。

 憲兵と店主には名演技だったことから表情を表に出せないわけではない。
 ギルドではよく見ればわかる程度には雰囲気が出ていたが、今は特になんの表情も雰囲気もないので何を思っているのかわからない。

「馬車ではない…乗り心地は保証しないが安全は保証しよう。」

 つまり安全以外は保証しないと…コハクはものすごく嫌な予感がする。

 具体的に何が?と問われるとコハクにもわからないが…

「安全なら大丈夫だな!」

 脳天気な兄に大丈夫なわけあるか!と言いたいが言ったところで無駄なため、思わず遠い目をしてしまうコハク…。

「それに…冒険者ごっこは面白そうだがめん…時間がかかるからな。」

((この人、明らかにめんどくさいって言おうとしたな。))

「では、私は使い魔をアグニールの元へ向かわせて知らせておきましょう。」

 そう言ったシーヴァルは影から出てきたコウモリを窓から飛ばす。

















 多くのものが寝静まった深夜…宿屋の2階の窓からふわりと飛び立った人影は、屋根の上で星空を眺めていた。

 そしてその人物の後ろには、いつの間にかもう一人…

「なぁ、シーヴァル…これから私は、多くの人間やそれ以外の尊厳や命そのものを立場も歳も関係なく奪っていく。」

後ろを振り向かずに、星を眺めながら語る彼女…

「えぇ…あの神のオーダーでもあり貴方様が望んでいたことでもあるのでしょう。」

 表情があまり出ない彼女にしては珍しく、少し苦笑いがもれる。

 自分の眷属はどうやら主のことをよく理解しているようだ。

「ふっ…そうだな、望んでいなければここにいないな。」

 シーヴァルには彼女が気落ちしているように感じられた。
 その理由はわからないが、彼女が言わないのならば聞かれたくないことなのだろう。














 ネメシスは迷っているわけではない…正確には他者に何も感じていない。

 平和な国で、死ぬ直前までは平凡な日常を過ごしていたのに…彼女はその世界で生まれ落ちたにもかかわらず、どこかおかしかった。

 何が?と聞かれると本人もうまく言えないため、困る。

 なんとか言葉にするならば、最初から人として必要な何かがかけているような?そんな感じ…こちらの世界に来る以前の話なので、そのことに神は関与していないだろう。

 不安要素はある…だからといって何もしないという選択肢は彼女にはなかった。

 前世は普通の社畜に過ぎなかった自分に神によって新たな人生を歩むことになった。いや、前世の記憶を覚えているのだから…一人の一生の延長と言えるだろう。

 他者に対する“心”の欠落という大きな不安があるが、彼女はどこかワクワクもしている。

せっかくの新たな世界と生…

それに…神が魔王にしたのだ、間引くなり滅ぼすなりの指示以外は好きにしていいと…

彼女はどこかスッキリしたように答えを出す。”偽ること“をやめよう。

「なら、好きに自分勝手に…最低災厄な魔王になろうじゃないか。」

 立ち上がり、両手を星空に向けて大きく広げ…薄っすらと桃色に色づいている美しく整った口元を子供の姿でありながらどこか妖艶に微笑む…
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