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カツアゲされる神様
しおりを挟むシーヴァルとヒスイがギクシャクしている頃…ネメシスは二人からある程度離れたところにいた。
「アグニール、見張りを頼む。」
「キュッ!」
ネメシスに向けてビシッと返事をしたアグニールは見張りのためにその場を離れる。
ネメシスは、手元を眺めながら魔力を練りイメージどおりに魔法を形作っていく。
やがてできやがったのはネメシスの元の世界でのおなじみ、便利な道具…スマホである。
ただのスマホではなく、神様に直通できるようにイメージしたがいけるだろうか?
『ハイハイ!こちら神様ですけど~』
どうやら問題なく機能したようだと、安心したあと早速本題を切り出す。
「神様、金よこせ。」
『神相手にカツアゲするなんて…恐ろしい子っ!!』
神様はツボったのかスマホ越しでもわかるほど爆笑している。
『あ~笑った。僕も君が気づいたときに気づいたんだよね~』
なんて適当な神様なんだ…転送先がじつはランダムだったとか、後々トリセツをわたしてきたり、お金を渡し忘れていたとか…。
『いや~長く生きてると細かいことは抜けまくってるもんだよ?』
神様的には細かくてもそれは他者にとっては大きいものだ。
『まぁ流石に僕がお金あげるわけに行かないからさぁ~もともとの君の全財産をこの世界のお金にして送ってあげるよ。』
「それで構いません…むしろ助かります。」
『いえいえ~異世界ライフを楽しんでいるようで何よりだよ♪』
その言葉はネメシスが騎士で実験していたことも指しているのだろう。
普段はほんとに神様なんだろうかと疑問に思うが、こういうところは神様らしいと思う。
「あ、あと聞きたいことがあるんですが」
『うん、なんだい?』
「神獣人とはなんですか?」
『なるほど彼らのことか。いいよ、教えてあげよう。』
まず、神獣っていうのが僕の眷属なんだよ。
で、その眷属が引退してその後に他種族…今の話で言うと獣人と恋に落ちて産まれたのが神獣人ね。
世界に強い影響力や力を持っている者たちは繁殖能力がその分低いんだよ。
獣人は環境の変化に対する適応力が本能に刻まれている。
子である二人が神獣に適応した結果、神獣人なんだよ…。普通はできたとしても、弱い種族の方に引っ張られるんだけどね。
おまけ情報として、獣人は神獣を崇拝しているんだ。だから、君が最初に出会った彼以外の者たちも神獣人を守ろうと激しい抵抗を見せたんじゃないかな?
その激しい抵抗のすえに全滅したんだろうね…獣人が神獣を崇拝しているのは結構知られていることだから。
神さまの言うとおり、激しく抵抗したあとはありありと残っていた。
村のあちこちに獣人以外の武装した騎士の死体もたくさん転がっていたし、生き残った騎士の殆どが無傷ではなかった。
ネメシスは村の者たちは弔ったが騎士たちの死体は全てあの花たちの栄養になっている。
『君の魔王ぷりは最高だよね♪死者にすら無慈悲なところとか…僕の目に狂いはなかった。』
『いやぁ~さすが僕だよね~自分で自分の才能がこわ…
プツ…ツーツーツー…
「さて、二人のところに戻るか。」
テケテッテッテッテテ♪
「なんですか神様…。」
『なんですかじゃないよ!君ねぇ~』
『お金、いらないのかい?』
「いります。」
『文字通り現金なやつだな君は…転送っと。』
目の前にぼとりと小さめの巾着が落ちてきた。
「横領…?」
『違うからっ!その袋は空間魔法がついていてお金をいくら入れても軽くて持ち運べる便利な袋だから!!』
『それに盗難防止、盗まれても手元に戻るようにしたよ。気遣いのできる素敵な神様でよかったね。』
「気遣いはできてないですけど、正直助かります。ありがたくもらいますね…。」
『いつか君に神様ありがとう♪大好き♡ていわせ…
プツ、ツーツーツーツー…
「さて、戻るか。」
今度こそ魔法を解除したネメシスはアグニールを呼び戻し二人のもとへと足をすすめる。
もどると、干し肉をもぐもぐしているヒスイと
コウモリから何か報告を受けているシーヴァルがいた。
二人はタイプが違いすぎて合わないのだろうが…一文無し問題はまずかったのでそちらを優先させた。
「ヒスイここから近い町や村なんかはどれくらい距離がある?」
「獣人は人間に迫害されてるからだいぶまだ先だ。あと5日ってとこだと思う…。」
「その間にお前の弟が目覚めてくれることを祈るよ。」
「あぁ…俺も早くコハクと話がしたい。」
「そういえばお前たちはいくつ歳が離れているんだ?」
「俺とコハクは双子だよ。」
双子の神獣人…激レアなだけに相当に狙われるだろう。
ゼファーとの出会いももともと拉致られたときだと聞いたし…
「とりあえず、お前はもう寝ろ。」
あれだけ歩いたのにネメシスとシーヴァルはケロッとしている。
アグニールはそもそも飛んでいるので疲労はなさそうだ。
これが種族の差ってやつか…ていうか魔王様はなんの種族なんだ?いや、きいたらまずいか…。
「わかった、先に寝かせてもらう。」
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