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果たされた誓い
しおりを挟む痛そうにうめきながら狼獣人のほうが起きたようだ…。
「こ、こは…なにを…」
「お前が帰りたいと言っていた村で、今は絶賛火葬のために準備中だ。」
ばっ!と起きやがり周囲を見渡し…シーヴァルがコウモリを使って死体集めをし、アグニールも一人ずつ一か所に集めていた。
なんで…と吹いた声はすごく小さいものだったが聞き漏らすものはここにはいなかった。
悔しそうに奥歯を噛み締め
両手を血が流れ出るほどに握り…
「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
大声で叫びながら、瞳から大粒の涙が湧き出た。
「わかりきっていたことでしょうに…」
「シーヴァルお前は私以外の者にももう少し寛容になれ。」
アグニールもシーヴァルの発言はないと思ったのか、キュルルゥと呆れた感じのニュアンスで鳴いている。
なんで、なんでこんなことに…肉屋のおじさんも八百屋のおばさんも…あそこにいるのは、サーシャじゃないか!!
なんで子供まで殺すんだよ…おかしいだろ!!
みんな、みんな死んでる。
どうしてだよ…
いつもみたいに笑ってくれよ
なんで、誰も何も言わないんだよ
ねてるだけなんだろ?
なぁ…お願いだから…。
いくら思ったところで、叫んだところで現実は変わらない。
狼獣人の少年とコハクと呼ばれた狐獣人の少年以外、生存者は存在しないのだから。
次々と運ばれる村のみんなを見て思いのままに泣き叫んだ…ただ攫われ何もできなかった無力な己に吐き気がした。
みんなを、サーシャを…ゼファーを殺した人間たちを何回殴ろうともこの気持ちは晴れないだろう。
だてもうみんなかえってはこないのだから…
アグニールとシーヴァルは死体を集め終わると、今度は物資を一か所に集めることをしはじめる…
もうすでに生きているものは二人の子供をおいて他にいないため物資はありがたく頂戴することにしたのだ。
そんな二人を見たあと、ネメシスは未だ泣き叫び続ける狼獣人の少年を…
鎖魔法で簀巻にしてある場所まで連れて行く。
「私も人ではないのでだいぶあれですが…ネメシス様も元人でありながらだいぶ変わっていらっしゃると思いますがね…」
「キュルル…」
「おや、あなたはそうは思わないと?」
シーヴァルとアグニールがそんな会話をしていることは知らず…ネメシスはある場所へたどり着く。
そこには、安心したように息を引き取っている狼獣人がいた。
「いい加減一旦落ち着け、そして目を背けずに見ろ。」
「っ…!ぜ、ゼファー!」
たくさんの怪我が痛むだろうに今はそんな怪我忘れたかのように必死で、狼獣人ゼファーのもとへ行き…
抱きしめ
さらに泣き叫んだ。
ネメシスはそんな少年をただじっと見ていた。
泣き叫び続けて枯れた頃…ネメシスは少年に話し掛けて説明する。
ネメシスたちがここに来た頃にはもう狼獣人以外のものは死んでいたこと
狼獣人、ゼファーは偶然立ち寄ったネメシス達に二人を救ってほしいと頼んだこと
その頼みをうけ、二人を救ったことを…
「その者、ゼファーといったか?そいつに頼まれた私はお前たちを救った。」
ゼファーは死にかけていたのに、必死でお前たちを救おうと相手を追おうとしていた。
ボロボロで、血だらけで…生きているのが不思議なくらいなのに必死で動いていた。
それだけ…お前たちが大切でかけがえのない存在だったのだろう。
「そんなこと言われたら、枯れた涙が絞り出てきそうだぜ…。」
たくさん泣き叫んだからか、狼獣人の少年は少しだけ前を向いていた。
「ゼファー、いや、親父。今まで俺達を育ててくれてありがとう。」
もう一人の狐獣人、コハクは怪我が怪我のためまだ意識が戻っていない。そんな中、みんなの弔いを見届けるのは狼獣人の少年だけだった。
コハクもすごく悲しむ、あまり表に出ないようにするだろうが間違いなく荒れるはずだ。なにより…
「人間の…あいつらぜってぇ許さねぇ!!」
地をはうような唸り声を鳴らしながら、怒りと憎しみの表情をあらわにした。
「お別れはまだすんでないだろう?狐獣人のほうは意識はしばらく戻らないからあきらめてくれ…そいつの分まで済ませたら…」
ゼファーと村人を火葬すると告げると、ネメシスはその場を去るぐらいは空気が読めた。
本来ならもっと、ちゃんと別れさせてやりたいが何より時間がない…。
集められた物資、食料や日用品その他諸々などをシーヴァルの空間魔法にいれ、狐獣人の少年の手当をして…ネメシスが最初に寝かされていた綺麗な寝台へと寝せる。
誓いは果たされた
ゼファーの願い通り二人の少年を救ったが、色々と謎めいたこともある。
狐獣人の方は間に合わないだろうが、狼獣人の方がおちついたら諸々再開する。
生け捕りにした二名の尋問と
ゼファーが言っていた神獣人について
異世界にきてまだ3日と立っていないのに色々イベントがおこりすぎしじゃないか?
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