魔王なんだから人を殺しても合法だよね!!〜クズな神様に無茶振りされた人間嫌いの魔王がおりなすダークな物語〜

残念な隣人さん。

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名付けと誓い

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 意識がゆっくりと浮上するのに身を委ね、まぶたをゆっくり開く…
 寝かされていた寝台から起き上がり周囲を確認すると、どうやらここはつい最近放置された建物らしい。

未だ濃い血の匂いがただよっている。

 血の匂いに眉をひそめていると、どうしたの?とつぶらな瞳で見つめてくるチビドラが、近寄ってきて膝に頬すりをしてきたので指で軽く喉をくすぐる。

「キュルルルゥ♪」

 嬉しそうに喉を鳴らすチビドラを見てクスリと笑みを浮かべていると…

「龍や竜は喉の付近に逆鱗があるのですが、そこは随分と硬い鱗で覆われているようですね…」

 いつの間にか部屋の隅にびっくりするくらいのイケメンが控えていた。

 確かに喉の付近にやたら硬そうで茜色の宝石のような鱗がとても綺麗だ。

 ふと二人には名前があるのか聞いてみると、まだないためぜひつけてほしいと言われたが…
 私は神様ほどではないが正直ネーミングセンスには自信がない。

 キラキラした目を向けてくる吸血鬼とチビドラにたじたじになりながらも必死で考える。

「ドラゴンの君は、アグニールと言う名前はどうだろうか?」

 インドの火の神アグニからつけてみたのだが気に入ってもらえるだろうか?

 名前の由来を教えると、とても嬉しそうに首を上下に高速でふって頷いてくれた。
 とても気に入ったようでホッとした…次は吸血鬼の彼だ、う~ん…むぅ…。

 悩みに悩んで同じインド神話からとって、シーヴァルというのはどうだろうか…シーヴァとは破壊と再生を司っている。

 明らかに腹黒そうな吸血鬼にはぴったりではないだろうか?

「そのような名をいただけるとは…歓喜に心臓を止められそうですねぇ~」

 笑えない冗談は…目が笑っていないから本気かもしれないので落ち着けとなだめたあと改めて周囲を…

「失礼ながら申し上げます。魔王様のお名前をぜひ、私めとアグニールにお教えいただけないでしょうか?」

 シーヴァルの発言でふと思う、前世の名前はこの世界にそぐわないだろうしせっかくだから私も新しい生だし新しい名前にしようと…

「決めた。私の名前はネメシスだ…。神の憤りと罰の体現者のネメシスを名乗る。」

 名を決めるとアグニールは嬉しそうに私の周囲を飛び回り、シーヴァルは恍惚としつつ「ネメシス様…」と呼んでいるのを見て何故か背筋がゾワッとした。

 テンションが高くなった一人と一匹を放置して改めて周囲を確認する。

 寝台から立ち上がり、ドアノブに手をかけ扉を開けると…













 どうやら数日ではなく今日、放置されたらしい。

 床にはまだ若干乾ききっていない赤い液体がぶちまけられており、その中心地には獣人の大人二人…しかも片方は完全になぶり殺しといったところだ…。

 神様は人以外は搾取されていると言っていたのであまり驚かないが、だからといって気分がいいものではない。

濃い血の匂いはこれだったのだろう…

「ネメシス様、この村全体がこうなっており…一名のみ、ぎりぎり生存していますがどうされますか?」

 シーヴァルに言われて驚いた…明らかに誰も生かす気のない殺し方をしているのに生存者がいたことに。

「わかった案内を頼む…。」

 家から出てそう遠くないところに、赤く引きずったあとが地面に現れた。
おそらくシーヴァルの言うとおり生存者がいて、その者が何か必死で追っているというところだろうか?

 その引きずったあとを辿っていくと、そう遠くない位置にもう間もなく事切れそうな狼の武装した獣人がいた。

 腕が立ちそうなのにこちらの気配にも気づかないところを見ると、もう手遅れだろう。

「何か…言い残すことはあるか?」

 初めてあった存在だからかなんとなく、叶えてやってもいいと思った。

 声が聞こえていたのか光を失っている瞳をむけ、血を吐きながら

「ど…か、神獣人の子らを…すく…」

 必死で伸ばされた血だらけの手を握りしめ…もう何も写してないだろう瞳と目線を合わせ…告げる。

「それがお前の残すこのならば、ネメシスの名において誓おう。必ず救ってみせる…。だから…「ネメシス様、もうすでに事切れているようです。」そうか…。」

 必ず救ってみせるという言葉を聞いたから逝ったのか、苦しみながらもがいていた先ほどとは違い…安堵したような顔をしていた。

 弔いや調べものは後だろう…今はこの狼の獣人が必死で行こうとした方角に行けば何かあるはずだ。

 アグニールを呼び、軽くくっしんしたあと地をかける。そこまで本気ではないもののものっすごい早い…。

 アグニールはかなり上空から追尾しているようだ…シーヴァルは、言うまでもなく普通についてきている。

 数分ほど移動したとき、まとまった生き物の気配を感じスピードを落とした。
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