前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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噛み合わない二人

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数日しかココにいないのか……思っていたよりも短い。
そもそも、信頼関係だけじゃダメだ。
俺との記憶が戻るには、前と同じ友達だと思って貰わないといけない。
数日でバーンと友達か……うん、まぁ、なれるか!
前もすぐ仲良くなったしなっ。
どんな感じで仲良くなったかとか全然覚えてないけど。
とにかく、会えさえすれば大丈夫だろ。

「大貴族のご子息は、明日こちらに来られる予定になっているから、よろしく頼むね。ちょっと突然のことだからそのご子息の情報もないし、どこまで補助しないといけないのかは分からないけど、望まれることは全て叶えたい。この聖教にとって、とても大切なお方だからね。そこは、お願いね?」
「もちろんです。心得ています」
セシルが恭しく頷いた。

なんか、こんな風に言われるバーンは本当に大貴族なんだなって改めて感じる。
寄宿学校は特殊な環境だから。
前は俺も貴族で、そうされる立場でもあったがそんな媚びは嫌っていたし、だったこともあって、あからさまなものはなかった。

「ええっと、シュフォテフトくん?君も分かっているよね?君ができる全てのことはして差しあげて欲しい。どんなことでも。……まぁ、君の方はたぶん大丈夫だろうけどね」

俺の方は大丈夫って?
いや、まず俺はシュフォテオフトだしな。 
本当の名前じゃないからどうでもいいし訂正しないけど。
もしかして、俺の優秀さに気づいたんだろうか?
「もちろん、大丈夫ですっ」
元気よく答えると、なんか苦笑いされた。
なんでた?

「まぁ、いい。明日は聖教に帰依する許しを与えるために大神官様もそのご子息と会われる。その後は君たちに任せるとしよう。セシル君ならばきっとお気に召すだろうし」
セシルはニコニコ笑いながら頷いた。
おいおい、俺はお気に召さないってことか?
バーンと大親友までなったのは俺!
お気に召すに決まってるだろ!
いや、まだ問題起こすのはダメだ。
明日会えることが決まったんだから、暴れるのは最終手段だ。

「炊事や洗濯などは平民の神官見習いが全て取り行うから、君たちはする必要はない。ただ、料理を運んだり、部屋を清拭したり、ご子息の目に触れる行為は必ず二人のうちどちらかが行うように。その経験は?」
「大丈夫です」
「俺も全部大丈夫ですっ」
今回はちゃんとセシルと同じように答えられたな。
しかし、平民が目に触れるのがダメな理由は何だ?
どこまで階級差別をするのか……。
平等を謳う宗教が聞いて呆れる。

「ご子息もお若いから、セシルくんは連日で疲れるかもしれない。日常の身の回りのお世話はシュフォテオフくんがやるといい」
「はいっ」
よっし。
身の回りの世話をしていたら、自然と仲良くなれるな。
セシルは華奢だから、肉体労働は無理するなってことか?
まぁ、料理とか汁物だと重いしな。
俺は全く問題ない!
セシルは気遣いが嬉しかったのか、同じようにニコニコ微笑んだままだ。

「君たちも長い旅で疲れただろう。今日は休むといい。何か質問などあれば、この建物内にいる者に聞くといい。これで失礼する」
「ありがとうございます」
「ありがとうございまーす」
セシルと同じように頭を下げ、その男性を見送った。

「ふぅ」
セシルはため息をつくと、寝台に早速寝転んだ。
「あ、そっち使うのか。じゃあ、俺はこっちを使うなー」
部屋は対の造りになっているため、セシルと反対側の壁に面した寝台に座った。
どんな物が入っているのかなー?と寝台に置かれていた袋をのぞくと、見事に下着まで白だった。
徹底してるなー。

「セシルー、お前のもやっぱり全部白?ここまで統一する必要あるのかなー?」
「……」
ん?
返事がない。
もう寝てるのか?
とりあえず、寝てるなら身体が冷えちゃいけないし、セシルの足元にある寝具でもかけておいてやろうかな。
セシルの寝台に近づくと、セシルは普通に目を開けていた。

「何だ、起きてるのか。返事ないから寝てると思った。どうした?ぼーっとしてるが、疲れたのか?」
「はぁっ……。お前は気楽でいいな」
セシルは再びため息をついた。 
「いや、別に気楽じゃない。俺は俺でいろいろ、あるからな」
バーンと仲良くなれる自信はあるが、やっぱり少し気負い過ぎてはいると思う。 
でも、ここまでお膳立てしてもらったんだから、バーンと一緒に寄宿学校に帰らないと。
「いろいろねぇ。こっちは明日のことで気が滅入って仕方ないのに」
気が滅入る?
セシルもやっぱり貴族だから他人の世話とか嫌なのかな?
別に俺がやるけど。
「嫌なことはやらなくていいぞ。俺がやるから」
「お前が?はっ、無理だろ」
親切心で言ったら、鼻で笑われた。
「いや、俺はけっこう体力あるし」
「体力の問題じゃない。まず、選ばれない」
セシルは呆れ顔で向こうへ行けとばかりに俺の寝台を指さした。
納得がいかない。 
何で俺が選ばれないんだ?
「俺が選ばれない訳ない。俺には技術もある」
セシルと違ってこちとら平民だからな! 
料理も一気に運べるし、なんなら部屋の整理整頓だっておまかせだ!
クリフトにも素早いし丁寧だと褒められたことがある。

「はぁ?技術がある?見かけによらないな?でも、そもそもお前じゃあ勃たないだろ。勃たなければその技術も活かせない」
俺で立たない?
何の話だ? 
まさか、高位貴族は手を貸さないと立つこともしないと思ってるのか?
そんなことないぞ! 

セシルはうっとおしそうに寝台に寝転んだまま俺に背を向ける。
「セシル、心配しなくても勝手に立ってくれるぞ?」
「はぁ?勝手に勃つって何言って……あぁ、技術ってそう言うことか。なるほどね。お前みたいなのがなぜフォルクス様の密偵役に選ばれたのかと思ったら……ふぅん。まぁ、まずお身体に触れられなければその技術とやらも活かせない」
俺に背を向けたセシルは俺の言葉になぜか驚きこちらを振り返ったが、一人納得すると、寝台の上で足を組み、背は壁にもたれかかったまま、また馬鹿にしたように鼻で笑った。
いや、バーンはどんな高慢貴族設定にされてるんだ?
そりゃ、俺が身体に触らなくても普通に立つだろ。
意味がわからん。

「だから、俺が身体に触らなくても勝手に一人で立つって」
「はぁ!?勝手に勃つって……そこまで言うなら僕を勃たせてみろ。できるのか?……いや、そうだな。お前の技術とやらも気になるし、僕の身体に触れてもいい。どう、勃たせる?」
「普通に、でいいか?」
「好きにしろ」
良く分からないけど、セシルは俺に立たせて欲しいらしい。
バーンは一人で立つからこんな技術の習得なんていらないけど、普通でいいならまぁいいか。

俺はセシルに近づき、寝台に片膝をつくと座っているセシルに手を伸ばす。
セシルの身体が一瞬強ばったが、気にせずに両脇に差し込むとそのまま上へと持ち上げると同時に自分も立ち上がった。
あー、これはけっこう筋力使うな!
セシルが無理だろって言ってたのはこのことか。
ま、俺は出来ちゃうんだけどなっ。
俺は自信満々の顔で俺に立たされたセシルを見ると、ポカンとしていた。

「そんなに驚いたのか?出来たぞっ。これでも鍛えてるからな」
「た、たせ、る……ふっ、はははははははっ」
セシルはなぜか呆然とした後に大爆笑を始めた。
「ふっ、ふふっ、おっまえ、全部分かってないじゃないか!ふざけるなっ」

へ?
何で怒られてる??
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