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信頼~バーン視点~

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「ルカ!それでは、俺と結婚して頂けますか?」

「え?」
「はぁ?」

「あっ!」
そうだった!
ルカが趣味で古代語を覚えたという話を聞いて、ルカの努力家な所を知れた喜びに感じ入っていてその話を忘れてしまっていた。
そもそもは、禁書に書かれている古代語を読める相手をクリフトの兄上に引き合わせるのが目的だ。
クリフトの予想ではフォルクス様ではないかとのことだったが、まさかルカだとは!
しかし、ルカだとクリフトの望んでいた地位も名誉もない。
兄上が結婚を認めない場合は、禁書が手に入らない!?

他に古代語を読める者を探せるだろうか。
クリフトはどうする……ん?
思案しているだろうと思って見たクリフトはニコニコ笑いながら、ルカの手を握っている。
ルカは困惑気味だ。

「突然、結婚って、この大変な時にどうしたんだ?クリフト」
「俺ではダメですか?ルカと結婚したいです」
いやいや、そんな話じゃなかっただろ!
クリフト!!

「その手を離しなさい、クリフト」
地の底から響くような声音でシュラ先生がクリフトを睨み付ける。
テオドールが大変な時なのに、クリフトがふざけていると思って怒っているんだろう。
「えぇ?ルカへ求婚しているんで手は離せません」
クリフト!
空気を読め!

シュラ先生は怒りを抑えることもなく二人の間に入ると、無理矢理引き離す。
「何、舐めた真似してるのかしら?」
「シュラ先生……そのようなお怒りの表情は美容に良くないのでは?」

えぇ!?
なぜそこでシュラ先生を煽るようなことを?
二人の間に火花が散っているようだ。
その間にルカは何が起こっているのか分からないと言った表情でオロオロしている。

……愛らしいな。

いや!
そんなことを考えている場合ではない。
二人に説明せねば。

「クリフト。突然そのようなことを言うと二人が話が分からず困るだろう。説明を」
「あぁ。俺としたことが申し訳ないです」
クリフトは一転ルカと距離を取り、先程の兄上とのことを二人に説明した。

「なるほどな。確かに門外不出であっても、家族ならばってことか。クリフト、すげぇ交渉だな。よし。じゃあ、俺と一緒に行こう」
確かに、クリフトの交渉術には感心した。
しかし、相手がルカとなると問題が残ったままだ。
このまま転移しても……止めなければ。

「待ちなさい」
制止の言葉を紡ごうとした私よりも先にシュラ先生が二人を止めた。
「先程のクリフトの話だと、セリアン商会にとって何の旨味もないルカとの結婚なんて、許すわけないでしょう?結婚が許されなければ、禁書は手に入らない。意味がないわ。別の手を考えましょう。セリアン商会にフォルクス様から直々に交渉を……」
「いえ。必ず、兄に認めてもらいます」

え?
クリフトは先程、ネラル先生くらいだと難しいと言っていた。
それでは、ルカだと無理なのでは?
しかし、その顔は自信に満ちている。

「俺はこの国の宰相になろうとしているんです。自分の兄の説得くらい、してみせます。信頼してください」
「……」
シュラ先生もクリフトの言葉にぐっと黙る。
「大丈夫だ。俺はクリフトを信じてる」
ルカは笑顔で頷く。

シュラ先生はそんなルカの笑顔に仕方がないといった体で渋々了承した。
「……分かった。結婚ので交渉がどこまで進められるか、お手並み拝見としましょう」
フリだけ強調したな。
シュラ先生も寄宿生の結婚を交渉の材料とすることに反対なのだろう。

ルカは転移が得意ではないので、シュラ先生がルカを伴って転移することになる。
私はさすがにルカとクリフト二人を共に転移する魔力は残っておらず、そのまま寄宿学校に残るように言われたが、とても待ってはいられない。
それに、クリフトがあの屋敷の中にシュラ先生は入れられないと言う。
やはり、セリアン商会にとっての機密を外部に漏らしたくはないそうだ。
俺のことは、信じてくれている。
もちろん、裏切るつもりはない。
まさか、兄上が小鳥姿、とは。
クリフトに言われ、そのことはシュラ先生にもルカにも伝えてはいない。
ルカはこれから見ることになるだろうが。
結局、何のために小鳥姿なのかも聞けていない。
この件が落ち着いたら、聞いてもいいのだろうか?

とにかく、私が見届けなければ。
何か交渉の場で私にできることがあるかもしれない。

屋敷の前に転移する。

「では、シュラ先生はここで吉報をお待ちください」
心配そうなシュラ先生を前に自信満々にそう告げるクリフトの後に続いた。
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