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古代魔法~テオドール視点~

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「……治せないわ」

やっぱり……。
僕はそっと自分の喉に触れる。
薄々、治らない気はしていた。
地下で白装束の男に声を奪われた後、自分で何度も治癒しようとしたが出来なかった。
ルカは僕の魔力が減っていたせいだと思っていたみたいだけど、僕は微量であっても治癒に全く反応しないのはおかしいと思っていた。

あれからフォルクス様と寄宿学校に転移して、すぐ医務室に運ばれた。
ネラル先生に身体の小さな擦り傷などはすぐに治してもらったが、声だけは戻らない。
シュラ先生が直々に診て戻らないのであれば、もうどんな魔法士にも無理だ。

「これは古代魔法ね……禁じられているはずなのに……」
そうか。
あの白装束の男が何か唱えていたが全く分からなかった。
勉強不足なのかとも思っていたけど、古代魔法だったのか。
古代魔法は禁じられているから、使い手がいない……つまり解呪の方法も分からない。
もう、手の施しようがない。

不思議だ。
思っていたより、衝撃を受けていない自分がいる。
少し前に、足を切断されるかもしれないという恐怖の中にいたため、麻痺しているのかな?

いや、違う。

あの時も僕は訪れる痛みと足を失う恐怖に震えていたけれど、心の中で思ったんだ。

これで、ルカは僕から離れていかない。

優しいルカだから、目の前で僕が足を失えば自分を責めて、きっと僕の側から離れない。
声もそうだ。
治らないと聞かされても、心の底でほの暗い感情が湧く。

でも、違うんだ。
僕の父上が蒔いた種で、僕の声が出なくなってもルカに何の責任もないし、責任を感じて欲しくない。
ルカには、笑っていて欲しい。
出会ったあの時の「木こりになりたい」と笑ったあの笑顔を見て、僕はルカを好きになったんだから。

なのに。

ルカの隣に別の誰かがいてあの笑顔を見せるくらいなら、声が出ない僕の隣でずっと……。
そんな思いが涌き出てくるのを止められない。

こんな僕のことを、ルカに知られたくないな。

「解呪方法は……あるわ」
えっ!?
僕が自分の声を完全に諦めていた時に、シュラ先生は真剣な顔で僕を見つめた。
「一つは、もちろん古代魔法を使った本人に解呪させること。私からでもフォルクスからでも、話をもちかけることはできるわ……応じるかどうかは分からないけれど。あと、見返りも望まれるでしょうね」
あの白装束の男はルカに執着を見せていた。
僕を害しようとしたのも、その方がルカにとって有効だと判断したから。
きっと、見返りはルカに絡めてくるはず。
僕は首を横に振った。

「そうね。害した本人に救いを求めるのは不本意よね。あと一つは、古代魔法の解呪について書かれた書物を手に入れることよ」
解呪について書かれた書物?
そんな書物がどこに?
それに、古代文字の解読は?
シュラ先生は僕の心を読んだように疑問に答えくれた。
「古代魔法の解呪について書かれた書物はあるわ。昔、見たことがある。その書物さえ見つかれば、古代文字なら読める人を知ってる」

古代文字が読める人がいるのか!
でも、まずはその書物が手に入るかどうか……。

「俺に、やらせてくれませんか?」
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