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再会~バーン視点~

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「お前は本当に運が良い。まだ、お前の友は無事なようだ。ちゃんと話しておいたから、迎えに行くが良い。そこまで転移させてやろう」

その言葉と共に右手に触れられ、一瞬にして転移させられる。
正直、助かった。
もう、魔力もほぼ尽きかけていた。
結局、あの人物が何者なのか分からないままだったが、言葉通りだとすればルカは無事にこの場所にいるということになる。

転移した先は、居た場所と代わり映えのしないような部屋の一室。
特に家具などはなく、窓と扉がいくつかあった。
周囲に人の気配はしない。
ルカとテオドールはどこに……。

とりあえず、建物内を探そうと目の前にあった扉を開けると、地下へと続く階段があった。
先は薄暗く見えないし、人の気配もないが、二人が地下牢のような所に閉じ込められている可能性もある。
周囲を警戒しながらも、少しずつ階段を降りる。
部屋から見た階段の先が薄暗かったため、下は暗闇かと思えば要所要所にランタンが壁にかけられ、明かりが灯っていた。
この地下が使われている、ということだ。
そのまま階段を降りていくと、地下独特の淀んだ空気が充満してきた。
先を見ると、最下段にはまた扉があるようだ。
そこから先に二人がいるかもしれないと思うと同時に、扉の先から人の気配を感じた。

ルカとテオドールだ!

二人を拐ったあの白装束の男がいるかもしれないという考えが一瞬頭を過ったが、とにかく早く二人を助けたくてそのまま勢いよく階段を降り、扉を開けた。

「無事か!?」
「バーン!」

扉を開けたと同時にルカと目が合うと、目を見開き驚いた表情を浮かべた後にふっと顔が緩み、そのまま気を失った。
「ルカ!」
慌てて駆け寄る。
隣にいたテオドールがルカの身体をそっと支えていた。
ルカの身体を確認するも、顔色はけして良くないが、脈は正常だ。
一見、大きな負傷も見当たらない。

無事で良かった……!
やっと、やっとルカに触れられた。
脈をみるために触れていた手をぎゅっと握り、固く目を閉じ神に感謝した。

ふっと息を吐き、隣にいたテオドールの安否も確認する。
「テオドール、お前も無事で良かった!怪我や痛みなどはないか?」
テオドールは軽く頷いた。

そこで改めてこの地下の部屋を見ると、目の前に鉄格子があり、その中に数人の男達が倒れていた。
警戒するも、誰も起き上がる様子はない。
「この男達は何だ?鉄格子の中にいるが皆死んで……いや、息があるようだ。お前達が?」
テオドールは首を横に振る。
違うのか。
元々この中にいた罪人だろうか?
二人はこの地下に逃げてきたのか?

……まぁ、いい。
二人が無事なら。
しかし、何かいつもと違う違和感を感じた。
この地下の空気感のせいか……。
「お前が転移した後の経緯はまたゆっくり聞かせてくれ。とにかくここから出よう。動けるか?」
テオドールは頷いた。
「転移したいが、ルカが気を失っているからな……お前は一人なら転移できるか?」
テオドールは首を横に振る。
「魔力が尽きているのか?」
テオドールは首を横に振る。

どういうことだ?
魔力が尽きていないのに、転移できない?
「なぜだ?」
テオドールは困ったような顔をし、喉に手を置いた。
「?」
なぜ、テオドールは転移できない理由を何も言わないのだろう?
「テオドール、理由を話せ」
テオドールは相変わらず喉に手を置いたまま、苦笑している。
「なぜ、何も言わないんだ?」
テオドールは困り顔のまま、口を開いたり閉じたりしている。

……何をしているんだ?
テオドールは口元を指で指しながらまた同じように開いたり閉じたりしている。
「だから、話せと……もしかして、話せないのか!?」
テオドールが大きく頷いた。
「なっ……お前、どうして!魔法か?」
テオドールは頷く。
そうか……何か違和感があると思っていたが、ルカの声を聞いただけでテオドールは何も発していなかった。
この空間に自分の声しかなく、何も音がしなかった違和感か……。

「すまん、気づいてやれなかった。回復させてやりたいが、魔力があまりない。まずはここからの脱出を優先したいが、良いか?」
テオドールは力強く頷いた。

「よし。ルカは私が運ぼう」
気絶したルカを運ぶために横抱きに抱えようとしたが、ルカがテオドールの手を握ったまま離さない。
その光景に眉間に皺がよりそうになったが、ぐっとこらえる。
そんな私にテオドールは勝ち誇った顔をしてこちらを見ている……気がした。
本当はルカの顔を見ながらより近い横抱きで運びたかったが、あの階段は狭くテオドールと並んでは通れないので仕方ない。
ルカを背におぶる形で、テオドールには手を握ったまま後ろからついてきてもらおう。

あらためてルカを背に負う。
右手はそのままだらんと肩から前に垂らし、左手はテオドールと繋いだままに、足をしっかり私の両手で背に固定した。
脱力しながらもその身体は軽く、目を覚ましたらもっと良い物をたくさん食べさせなければ、と思いながら薄暗い階段を上がる。
ゆっくり階段を上がりながら、呟くような声でテオドールに話す。
「テオドール……お前が咄嗟にルカと転移したことは正しくないのかもしれん。それでも、お前はその行動を誇れ。私は……何もできなかった。ルカを守ってくれたことを、感謝する。……忘れろ、一人言だ」

テオドールがその時どんな顔をしていたかは分からない。

最初に転移した場所まで上がってきた。
どの扉が外に繋がっているか、とりあえず別の扉を開けてみて……と思っていると、フォルクス様とシュラ先生?が転移してきた。
「無事か?」
「良かった……!」
お二人は安堵の息を溢された。

「あの、フォルクス様と、シュラ先生?ですか?」
フォルクス様の隣にはシュラ先生と同じ赤髪の男性が立っていた。
声はシュラ先生よりも低く、顔は似ているがより洗練された硬質な男性の顔だ。
しかし、その雰囲気はシュラ先生そのもの。
「あぁ、この姿のままだったわ。そうよ」
そう言うと、いつものシュラ先生の姿に戻る。
どういうことだ?
「そんなことより、ルカは大丈夫なの?」
はっとして、とりあえず知り得る現状を説明する。
「そう……。とりあえず、寄宿学校に戻りましょう。テオドールはすぐに医務室で声を診るわ。転移するから、テオドールはフォルクスに……って、なぜテオドールはルカの手を?」
シュラ先生が私とルカ、フォルクス様がテオドールを共に転移させようと分けた所で、二人が手を繋いでいることに気づく。
「あぁ、ルカは気絶する前にテオドールと手を繋いでいたみたいで、そのまま握って離さないんです」

チッ……。

ん?
今、シュラ先生、舌打ちしなかったか??

困惑していると、フォルクス様がスッとテオドールに近づき、ルカと繋いでいたその手に触れ、何か唱えるとテオドールの手を引いた。
するり、とルカの手も離れた。

え?
フォルクス様、二人の手を魔法で無理やり引き剥がした??

ますます困惑し、目を泳がせたまま寄宿学校へと転移した。
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