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這い上がってくる感覚
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目を覚ますと、牢獄のような中にいた。
じめじめとした空気と粗末な寝台、目の前には鉄格子。
俺は寝台の上でもなく、地面に転がっていた。
気絶させられてそのまま放り込まれたんだろう。
体中に擦り傷がある。
起き上がろうとすると、首元に痛みが走った。
油断したな……。
背後に回られ、手刀でやられた。
あれが刃物なら死んでいたかもしれない。
ずっと怒涛の展開で、正直三人に会って気を抜いていた。
まさか、襲われるとは……。
ゆっくり起き上がり、首元に手を当て回復魔法を唱えようとしたが、魔法が使えない。
そりゃそうか……。
転移が使えたら、鉄格子で閉じ込めておく意味がない。
「あー、またみんなに心配かけるな」
誰もいない牢獄で独り言を呟く。
足元からぞわぞわと何かが這い上がってくる感じがする。
何だろう……。
改めて周りを見回すも、見覚えがあるはずもなく、場所の検討もつかない。
鉄格子から見えるのは灰色の壁。
鉄格子の近くまで歩き、痛む首を押さえながら覗き込み先を見ようとしても周囲は壁ばかりで手がかりもない。
諦めて、寝台の上に腰かける。
あの、白装束の男……何者だろう?
あまりに異様で、その姿に動揺したことも遅れをとった一因だ。
目、以外はすべて白い布で覆われていたので姿では分からなかったが、声に聞き覚えはなかった。
俺に直接恨みがあって拉致したとは考えにくい。
それに、俺のことを「黒髪黒目」と確認していた。
つまり、名前も知らない初対面。
では、なぜ?
誰かに、依頼、された……そう考えるのが妥当だ。
こんな平民を依頼してまで拉致する?
……分からない。
とりあえず、あの瞬間に殺されなかったということは、拉致することが依頼内容のはず。
つまり、当分は安全だ。
あの場には三人がいた。
きっと今頃はシュルツが探してくれているはず。
……いや。
あれから、どれほど時が過ぎているか分からない。
そもそも、俺は気を失っていた。
その後の事など、分からない。
気絶させられた瞬間に転移したことを想像していたが、俺を気絶させた後に三人を襲うこともできる。
簡単にやられる三人ではないが、あの白装束の男はかなりの手練れだった。
もしかしたら、三人は今頃……。
傷ついた三人の影像がよぎる。
それと同時に、また足元からぞわぞわと何かが這い上がってくる感覚。
いや!ダメだ!
悪い想像をして、動けなくなっている場合じゃない!
大丈夫だ。
皆を信じよう。
俺が今できることは、何もない。
身体を休め、動きを待とう。
そのまま寝台に横になる。
少しうとうとしていると、数人の足音が聞こえる。
来たな。
とりあえず、そのまま気絶したふりをした。
「話が違うではないか!黒髪黒目の者のみを拉致してくるという依頼だったはずだ!」
……この声は!
「そうしようとしていた。最後に邪魔が入ったのが貴様の息子だったというだけだ。そうでなければ転移後にこちらで処分していた」
やはり。
テオの父さん……。
ってことは、テオは一緒に転移してるのか。
無事だろうか……テオの父さんが依頼主なのだから大丈夫だとは思うが、酷いことをされてなければいいが……。
俺はそのまま気絶したふりをする。
鉄格子の前まで二人が来た。
「間違いないか?」
「あぁ、こいつだ。テオドールを悪の道に引きずり込もうとしている。こちらとしてはこのままここに幽閉しておいてもいいが」
「この者は魔力量が多い。こちらで使いたい」
「分かった。好きにしろ。ただし、二度とテオドールの前には現れないようにしてくれ。それでテオドールの洗脳は解けるはずだ」
洗脳!?
テオの成長は洗脳扱いか!
怒りがふつふつと沸く。
一人、鉄格子の前から去っていく足音がする。
鉄格子の前にいるのはどちらだ……テオの父さんなら話がしたいが……。
「いつまでそうしているつもりだ?」
……声が違う。
白装束の男か。
俺はゆっくりと起き上がる。
「話は分かった。テオは無事なんだな?」
「あぁ。転移の瞬間に紛れ込んだだけだ。あの男が連れ帰るだろう」
とりあえず、ほっとした。
「それよりも、自分の身を心配したらどうだ?依頼としてはこのまま幽閉でもいいが、お前は魔力が多いからな。こちらで使う」
使う?
ふざけるな!
「俺が簡単にお前らに使われると思ってるのか?」
「気づいているだろう?ココは魔力が一切使えない。お前は体術もある程度使えるのかもしれないが、そんなものは数人でかかれば良いだけのこと。嬲るのが好きな者もいる。お前の精神がいつまでもつかな?」
白装束の男の背後には数人の男たちが無表情で立っていた。
まただ。
足元からぞわぞわと何かが這い上がってくる感じ……。
そうか。
これが『恐怖』か。
初めて体感する恐怖に、ぐっと奥歯を噛み締めた。
じめじめとした空気と粗末な寝台、目の前には鉄格子。
俺は寝台の上でもなく、地面に転がっていた。
気絶させられてそのまま放り込まれたんだろう。
体中に擦り傷がある。
起き上がろうとすると、首元に痛みが走った。
油断したな……。
背後に回られ、手刀でやられた。
あれが刃物なら死んでいたかもしれない。
ずっと怒涛の展開で、正直三人に会って気を抜いていた。
まさか、襲われるとは……。
ゆっくり起き上がり、首元に手を当て回復魔法を唱えようとしたが、魔法が使えない。
そりゃそうか……。
転移が使えたら、鉄格子で閉じ込めておく意味がない。
「あー、またみんなに心配かけるな」
誰もいない牢獄で独り言を呟く。
足元からぞわぞわと何かが這い上がってくる感じがする。
何だろう……。
改めて周りを見回すも、見覚えがあるはずもなく、場所の検討もつかない。
鉄格子から見えるのは灰色の壁。
鉄格子の近くまで歩き、痛む首を押さえながら覗き込み先を見ようとしても周囲は壁ばかりで手がかりもない。
諦めて、寝台の上に腰かける。
あの、白装束の男……何者だろう?
あまりに異様で、その姿に動揺したことも遅れをとった一因だ。
目、以外はすべて白い布で覆われていたので姿では分からなかったが、声に聞き覚えはなかった。
俺に直接恨みがあって拉致したとは考えにくい。
それに、俺のことを「黒髪黒目」と確認していた。
つまり、名前も知らない初対面。
では、なぜ?
誰かに、依頼、された……そう考えるのが妥当だ。
こんな平民を依頼してまで拉致する?
……分からない。
とりあえず、あの瞬間に殺されなかったということは、拉致することが依頼内容のはず。
つまり、当分は安全だ。
あの場には三人がいた。
きっと今頃はシュルツが探してくれているはず。
……いや。
あれから、どれほど時が過ぎているか分からない。
そもそも、俺は気を失っていた。
その後の事など、分からない。
気絶させられた瞬間に転移したことを想像していたが、俺を気絶させた後に三人を襲うこともできる。
簡単にやられる三人ではないが、あの白装束の男はかなりの手練れだった。
もしかしたら、三人は今頃……。
傷ついた三人の影像がよぎる。
それと同時に、また足元からぞわぞわと何かが這い上がってくる感覚。
いや!ダメだ!
悪い想像をして、動けなくなっている場合じゃない!
大丈夫だ。
皆を信じよう。
俺が今できることは、何もない。
身体を休め、動きを待とう。
そのまま寝台に横になる。
少しうとうとしていると、数人の足音が聞こえる。
来たな。
とりあえず、そのまま気絶したふりをした。
「話が違うではないか!黒髪黒目の者のみを拉致してくるという依頼だったはずだ!」
……この声は!
「そうしようとしていた。最後に邪魔が入ったのが貴様の息子だったというだけだ。そうでなければ転移後にこちらで処分していた」
やはり。
テオの父さん……。
ってことは、テオは一緒に転移してるのか。
無事だろうか……テオの父さんが依頼主なのだから大丈夫だとは思うが、酷いことをされてなければいいが……。
俺はそのまま気絶したふりをする。
鉄格子の前まで二人が来た。
「間違いないか?」
「あぁ、こいつだ。テオドールを悪の道に引きずり込もうとしている。こちらとしてはこのままここに幽閉しておいてもいいが」
「この者は魔力量が多い。こちらで使いたい」
「分かった。好きにしろ。ただし、二度とテオドールの前には現れないようにしてくれ。それでテオドールの洗脳は解けるはずだ」
洗脳!?
テオの成長は洗脳扱いか!
怒りがふつふつと沸く。
一人、鉄格子の前から去っていく足音がする。
鉄格子の前にいるのはどちらだ……テオの父さんなら話がしたいが……。
「いつまでそうしているつもりだ?」
……声が違う。
白装束の男か。
俺はゆっくりと起き上がる。
「話は分かった。テオは無事なんだな?」
「あぁ。転移の瞬間に紛れ込んだだけだ。あの男が連れ帰るだろう」
とりあえず、ほっとした。
「それよりも、自分の身を心配したらどうだ?依頼としてはこのまま幽閉でもいいが、お前は魔力が多いからな。こちらで使う」
使う?
ふざけるな!
「俺が簡単にお前らに使われると思ってるのか?」
「気づいているだろう?ココは魔力が一切使えない。お前は体術もある程度使えるのかもしれないが、そんなものは数人でかかれば良いだけのこと。嬲るのが好きな者もいる。お前の精神がいつまでもつかな?」
白装束の男の背後には数人の男たちが無表情で立っていた。
まただ。
足元からぞわぞわと何かが這い上がってくる感じ……。
そうか。
これが『恐怖』か。
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