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恋敵~シュルツ視点~

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「さて、説明してもらえる?」
フォルクスは寝台の上でルカの出ていった扉を幸せそうな顔でずっと見ている。
舌打ちしそう。

ようやくこちらに向き直ったフォルクスは、泰然としている。
「説明、とは?」
「なぜ、あんなことをしたの?突然ルカと転移して、どれだけ私や他の寄宿生たちが混乱したか。そんなこと、分からない貴方じゃないでしょう?」
「……お前は、どんな気持ちだった?」
「え?」
「もう、会えないと思っていたあの方にこうして会うことができた時の気持ちだ」

……やはり、ルカのことを気づいたのね。
誤魔化しきれる気はしなかったけど……願わくば、気づいて欲しくなかった。
フォルクスが確信している以上、もう、下手な誤魔化しは無意味ね。
寝台の横の椅子に座り、威圧的に足を組む。
「なぜ、ルカだと?それは転移前に気づいたということよね?」
「お前だよ、シュルツ」

アタシ!?

「お前は自分が思っている以上に他人に興味がない。あの方がいなくなってから、よりそれは増した。そんなお前が、あのルカに対してだけは違った。今回の件で排除しようとしたロレーヌ辺境伯から庇い、私からもなぜか遠ざけようとした。そして、あの手合わせ……お前は昔と同じ顔をしていた。楽しくて、仕方ないといった……少年の頃の……ルカといたお前と」

ルカが何か仕出かさないかと心配していたのに……まさか私の態度でだなんて……。
「まだあるぞ?お前が我を失った時のルカの行動、そして口付け。お前が真っ赤になって狼狽える姿を見る日が来るとはな」
くっくっとさも可笑しそうに笑う。
こんなフォルクスを見たのも……あの日以来よ。

「今でも、信じられない。これが夢ならば醒めたくない。見た目も、美しいあの方ではないのに。……どうしようもなく、惹かれる」
……同じね。
私も、もしルカがあのルカでなかったとしても、同じ時を過ごせば、きっと、惹かれた。

「ルカに言われたのだ。ルカが崩れ落ちる悪夢ばかり見ていた私に、そんな思い出ばかりじゃないだろうと。そんなこと、望んでいないと。……そうだな。ルカはそんなことを望んでいない。そんなことのために、自らを犠牲にした訳ではない。……ルカは笑っていたんだ。とても美しい顔で。私は……そんなことも忘れていた。ずっと、長い間」
過去のことを思い出しているのか、フォルクスが遠くを見るような目をしている。
私は少し息を吐いた。

「……私も、謝らなければいけないと思っていたの。ルカの死を知って、貴方のことを罵ったわ。貴方のせいだと。ルカの友達なのに、ルカにこの選択をさせた貴方が許せなかった。でも、分かってたの。どこで知ったとしても、ルカは結局、この道を選んだ。……そういう、人だもの」
心の行き処がなくて、フォルクスを責めた。
誰かのせいにして、憎んでいなければ自分を保てなかった。
同じように愛する人を失い苦しんでいると分かっていたのに……。

「私もお前も、あの方という光を失って、暗闇にいたんだ。何も見えなくて仕方ない。そんなことにすら、気づかなかったが。そんな中で、また光に照らされたら……焦がれずにはいられない」
……こうなることも、分かっていたけど。

「どうする、つもり。ルカを」
「どうする、とは?」
フォルクスと視線を交わし合う。
お互い、譲らないという想いを込めて。
「渡さないわよ」
絶対に。
「……連れ去るつもりはない。ルカも望んでいないだろう。しかし、不安定すぎる。今のルカは、害しやすい。その辺りは見極めなければ」

そう。
以前のルカと同じくらい強大な力があったとしても、制御しきれていない。
それはこれから……。
「私も指導しよう」
「宰相閣下のお手をわずらわせるつもりはないわ」
「ならば、中央に」
「ダメよ」

ふっ……。
どちらともなく、笑みが溢れる。
「こんなに堂々と、貴方とルカを取り合う日がくるなんてね」
「そうだな。恋敵、というやつか」
恋敵、ね。
「恋敵なら、いっぱいいるわよ?ルカは相変わらず人たらしなの。ルカと一緒に学ぶ子達も、みーんなそう」
「そうか……年齢的に我々は不利だな?」
「あら。貴方と一緒にしないで?私はそこまでじゃないわよ……って、何言ってるのかしらね、私達」
「ふっ……」

「失礼しますっ!」
クリフト?
入室の許可なく入ってくるなんて……何事?
「ルカとテオドールがっ……何者かに……」

「「!?」」
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