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悪夢の果てに~フォルクス視点~
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「ふーん」
ルカは少し考え込むような顔をした後、満面の笑みを見せる。
「よし、まかせとけ!ちょっと時間かかるけど、明日までには俺がなんとかする」
「いや、なんとかって……」
さすがのルカでも、なんとかできる問題では……。
「大丈夫だ!フォルクス、相談してくれてありがとな。お前に頼ってもらえて……俺は嬉しい」
去り際にその銀糸の髪を揺らしながら振り返ったルカの笑顔は……本当に美しかった。
この後の悲劇を微塵も感じさせない、神々しい笑顔。
「ルカ!」
笑顔で去るルカを止めたくて手を伸ばす。
その手を取りたくて。
「ルカー!」
叫びながら飛び起きると、そこは見知らぬ一室の寝台の上だった。
寝て……いたのか。
「起きたか」
声のする方を見ると、今のルカが寝台の横の椅子に座っていた。
「けっこう、深く眠れていた。良かった」
安心した顔で頷いている。
「側に……いてくれたのか」
「離してくれなかったしな?」
私がルカの手を握りしめたままだったらしい。
「すまない」
「いーよ。少し隈も薄くなった、かな?やっぱり、悪い夢は見たのか?」
「悪い……夢では、なかった。お前に私のせいじゃないと、ルカ自身が決めたことだと言われて、最後に話したときのことを思い出していた。ルカは……美しかった……」
そうだ。
崩れ落ちるルカの夢ばかり見ていた。
何度も何度も。
眠る度に飛び起き、またあの夢を見るくらいなら、と極力眠りにつくことをやめた。
ルカは毎日あの悲惨な姿で長年私の側にいた。
そうではない。
ルカはあんなにも美しかったんだ。
「美しいかどうかはちょっと分からないけど、嫌な思い出ばかりじゃないよな?そっちを思い出してやった方がルカ?も喜ぶ」
「そうだな……」
やはり私は貴方には敵わない。
もう、悪夢など見ない。
今日からは、今の貴方の夢を見よう。
「ルカ。この国を救ってくれて、ありがとう」
「へ?」
「貴方にそう、伝えなければいけなかったな」
「いや、あのっ」
ルカがオロオロし始める。
「俺は、その救国の騎士ではなく、平民のただのルカなのでっ……」
「今さらか?」
私への対応も過去のことの言及もルカ本人でなければ無理だ。
なぜ、それで誤魔化せると思っているのだろう?
慌てているその姿が少し可笑しくて、思わず笑ってしまう。
「あのっ」
「いや、いい。貴方が……いや、お前が救国の騎士でも、ただのルカでも」
「はぁ」
「私はこの国の宰相になった。もう、誰の隣にも、立てる」
私の発言の意味が分かっていないのだろう。
小首を傾げている。
もう少し、分からないふりをしていてあげよう。
「……しかし、ルカ。シュルツを止めるための口付けはダメだ。お前ならば、テオドールの側まで転移して防護壁を張れば良かっただろう?」
「いや、あの……転移、得意じゃなくて。確実な方法をって……」
言いにくそうな顔でルカが額を掻く。
あの、ルカが、転移が不得意……思わず吹き出してしまう。
「ちょっ、そんな笑うこと……」
「すまない」
良いことを聞いた。
私が分からないふりができなくなったら……連れ去ってしまおう。
転移でしか逃げられないような、遠くまで。
「迷惑かけておいて、楽しそうね?」
シュルツが部屋の入り口に仁王立ちしている。
「ルカ、少し席をはずしてくれる?二人で……話があるの」
「あ、あぁ。あの、手を……」
まだ、私はルカの手を握ったままだった。
離しがたいな。
握ったルカの手をすっとあげ、その掌に口付けする。
「え?」
「ちょっ……」
「今は、ここで」
そう、今はまだ。
ゆっくりその手を離す。
困惑した表情のまま、ルカは部屋を後にし、睨み付けたシュルツと二人になる。
「さて、話を聞きましょうか?宰相閣下」
ルカは少し考え込むような顔をした後、満面の笑みを見せる。
「よし、まかせとけ!ちょっと時間かかるけど、明日までには俺がなんとかする」
「いや、なんとかって……」
さすがのルカでも、なんとかできる問題では……。
「大丈夫だ!フォルクス、相談してくれてありがとな。お前に頼ってもらえて……俺は嬉しい」
去り際にその銀糸の髪を揺らしながら振り返ったルカの笑顔は……本当に美しかった。
この後の悲劇を微塵も感じさせない、神々しい笑顔。
「ルカ!」
笑顔で去るルカを止めたくて手を伸ばす。
その手を取りたくて。
「ルカー!」
叫びながら飛び起きると、そこは見知らぬ一室の寝台の上だった。
寝て……いたのか。
「起きたか」
声のする方を見ると、今のルカが寝台の横の椅子に座っていた。
「けっこう、深く眠れていた。良かった」
安心した顔で頷いている。
「側に……いてくれたのか」
「離してくれなかったしな?」
私がルカの手を握りしめたままだったらしい。
「すまない」
「いーよ。少し隈も薄くなった、かな?やっぱり、悪い夢は見たのか?」
「悪い……夢では、なかった。お前に私のせいじゃないと、ルカ自身が決めたことだと言われて、最後に話したときのことを思い出していた。ルカは……美しかった……」
そうだ。
崩れ落ちるルカの夢ばかり見ていた。
何度も何度も。
眠る度に飛び起き、またあの夢を見るくらいなら、と極力眠りにつくことをやめた。
ルカは毎日あの悲惨な姿で長年私の側にいた。
そうではない。
ルカはあんなにも美しかったんだ。
「美しいかどうかはちょっと分からないけど、嫌な思い出ばかりじゃないよな?そっちを思い出してやった方がルカ?も喜ぶ」
「そうだな……」
やはり私は貴方には敵わない。
もう、悪夢など見ない。
今日からは、今の貴方の夢を見よう。
「ルカ。この国を救ってくれて、ありがとう」
「へ?」
「貴方にそう、伝えなければいけなかったな」
「いや、あのっ」
ルカがオロオロし始める。
「俺は、その救国の騎士ではなく、平民のただのルカなのでっ……」
「今さらか?」
私への対応も過去のことの言及もルカ本人でなければ無理だ。
なぜ、それで誤魔化せると思っているのだろう?
慌てているその姿が少し可笑しくて、思わず笑ってしまう。
「あのっ」
「いや、いい。貴方が……いや、お前が救国の騎士でも、ただのルカでも」
「はぁ」
「私はこの国の宰相になった。もう、誰の隣にも、立てる」
私の発言の意味が分かっていないのだろう。
小首を傾げている。
もう少し、分からないふりをしていてあげよう。
「……しかし、ルカ。シュルツを止めるための口付けはダメだ。お前ならば、テオドールの側まで転移して防護壁を張れば良かっただろう?」
「いや、あの……転移、得意じゃなくて。確実な方法をって……」
言いにくそうな顔でルカが額を掻く。
あの、ルカが、転移が不得意……思わず吹き出してしまう。
「ちょっ、そんな笑うこと……」
「すまない」
良いことを聞いた。
私が分からないふりができなくなったら……連れ去ってしまおう。
転移でしか逃げられないような、遠くまで。
「迷惑かけておいて、楽しそうね?」
シュルツが部屋の入り口に仁王立ちしている。
「ルカ、少し席をはずしてくれる?二人で……話があるの」
「あ、あぁ。あの、手を……」
まだ、私はルカの手を握ったままだった。
離しがたいな。
握ったルカの手をすっとあげ、その掌に口付けする。
「え?」
「ちょっ……」
「今は、ここで」
そう、今はまだ。
ゆっくりその手を離す。
困惑した表情のまま、ルカは部屋を後にし、睨み付けたシュルツと二人になる。
「さて、話を聞きましょうか?宰相閣下」
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