前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる！はずが囲われてます！？

懺悔

「許してくれ…ルカ」

気を失ってるフォルクスが、なぜか俺のことを呟いている。
少し、意識が浮上してきているのか？
それにしても……さっきのこと、そんなに後悔してた？
なんだ……やっぱり何かあって機嫌が悪かったのかな……。

それなら、許すわ！

「気にしてねーよ、フォルクス」
「は？」
「え？」

驚いた顔のフォルクスと、笑顔の俺がばっちり目が合う。
ヤバい。
気を失ってると思って気安い態度だったのに、普通に目を覚めした。

「た、倒れてたので、驚いたんですけど、大丈夫ですかー？」
必死で誤魔化す。
フォルクスは上体を起こそうとしていたので、背を支える。
「すまない……大丈夫だ。少し、寝不足だとは思っていたが……まさか気を失うほどとは……」
えっ、寝不足で倒れるって、かなりだな！？
確かに、目の下に隈はあると思ったが……よっぽど忙しいんだろうな。

「宰相って、寝る時間もないくらいなんですね」
クリフトのことも心配だな……宰相になったら、クリフトも寝る時間もなく国に尽くすのか……。

「いや、宰相の仕事で寝る間もなかった訳ではない」
俺の顔がよっぽど悲痛そうだったのか、フォルクスは少し慌てて弁明した。
「毎日、夢を……見るんだ。その夢を見たくなくてな……つい、眠りたくないと思ってしまう」

フォルクスが苦笑している。
悪夢を見るのか……それはつらいな。
ん？
もしかして、さっきのルカって……。
毎日ってことは、今日会ったばかりの俺のことじゃない。

もしかして、前の？

「あの、さっき、ルカって……」
「……お前のことじゃない。もう、失礼する。迷惑をかけたな。また礼はしよう」
「いや、そんなのはいいです。……早く、眠れるようになるといいですね」
フォルクスは薄く笑い、去っていった。

俺はまた一人、先程まで座っていた庭園のベンチに戻った。

フォルクスの悪夢の原因は自分にある。
正確には、前の。
最後の姿だろうか……。
確かに、人間がボロボロと崩れていく様は……見るに耐えなかっただろう。
あれから、長い年月……ずっとフォルクスを苦しめていたなんて。
シュルツの時にも感じた、自分の身勝手さ。
自分の命を軽んじたことによって、ここにも苦しめていた人がいた。

どんなに悔やんでも、戻ることはできない。

今の俺に、何ができる？

一人、ベンチで頭を抱えていると、その横に誰か座る気配がした。
横を見ると、テオだ。

「どうしたの？こんな所で」
「テオ。父さんとはもういいのか？」
「あぁ、授業の様子は後で見に来るみたいだけどね。フォルクス様に対する態度が見てられなくて……自分の父親の矮小さが嫌になるよね」

自分の父親に辛辣だな……！
テオはベンチに腰掛けながら、空を見上げている。

「もう、家なんか出ようかな……」

えぇ！？