前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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実力の差~バーン視点~

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「貴方……手を抜いたわね?」

シュラ先生が笑顔でルカに詰め寄っている。
その瞳は真剣だ。

「て、手は抜いてません」
「へぇ?」

問いに反したルカに対し、見下す瞳に変わる。
答えは分かりきっているというように……。

「クリフトの目は誤魔化せても、私の目は誤魔化せないわよ?貴方、バーンに斬り込んで行く途中で、木剣の持ち手を変えたわね?バーンが左手に木剣を持っているのを見て、止めやすい左側に打ち込めるように」

ルカは何も答えない。
図星なのだろう。

「まぁ、残念ながらバーンは左側でも貴方の速さに遅れてしまって木剣が当たったけれど、それも寸前で力を抜いたわね?あんなに斬り込む体勢で打ち込んで、痛みでその場にうずくまる程度で済むはずがない」

そうだったのか。
私はそんなことにも気づかずに……!

ルカはそんなことでは互いに成長にならないとシュラ先生に叱責されている。

すべて、私が不甲斐ないせいだ。

シュラ先生に言われた通り、ルカのことを侮っていた。
手合わせをしろと言うシュラ先生に対し、ルカのような剣術を知らない相手にこの私の相手をさせるなど、どういうおつもりなのかと思っていた。
しかし、指導には従わねばならぬと剣を構えたが、そこからはルカの動きに全くついていけなかった。

シュラ先生が先ほど言われていた動きも見えていない。
ルカは瞬時に私の動きを見て対応したと言うのに……。
なぜだ……剣術には自身があった。
故に驕っていたことも認める。
だが、ここまでの差が……。

自分が侮っていた相手に手を抜かれていたなど……とんだお笑い草だな。

自嘲気味に笑う。

「バーン。別に手を抜いた訳じゃないんだ。でも、確かにテオもついてくれていたのに、なるべく威力を落としてって思ったのは違うよな。ごめん」
ルカが頭を下げる。
さっきと反対だな。

「いや、謝罪する必要はない。すべて私が未熟だからだ。改めて、手合わせをしてくれるか?」
「……!やろう!」

ルカの瞳が輝く。
あぁ、本当に楽しんでいるんだな。

改めて、お互い木剣を構える。
ルカの構えはとても美しかった。隙がない。
先程とは違い、近距離で向かい合い、互いの木剣を軽く当てる。

「私からいこう」
ルカの右肩口目掛けて木剣を振りかぶったが、軽く弾かれる。
「やっぱり、バーンは重いな」
笑いながらルカは剣を構え直す。
「どんどん来いよ!バーン!!」

なんて……楽しそうな顔で笑うんだ。

「いくぞ、ルカ」

それから角度も場所も変え、幾度ルカに打ち込もうと、私の木剣がルカの身体に触れることはなかった。
ひらりと躱したり、自分の木剣で弾いたり。
ルカに必死になって挑むも、軽くいなされた感じだ。
現に、ルカは一度も打ち込んでこなかった。

まるで、歯が立たない。

息を乱しながら、また剣を構える。
それでも、私は……。

「終わりー!もう無理だー!」

突然ルカは叫ぶと、その場に仰向けになった。
大の字になると、「疲れたー」と叫んでいる。
私も剣を置く。
まだ息も乱れたままだ。

ルカがむくっと起き上がると満面の笑みだった。

「バーン、体力すごいな!俺から止めたいって言ったの初めてだ!さすがだ!」

俺は呆気にとられた。
まさか、これだけ剣をあわせて体力を褒められるとは……。
他の者になら、侮辱されたと感じたかもしれないが、ルカらしい。

「褒めるのは体力だけか?剣筋は全くなのだな?」
「いや、違う、違う!お前は強いよ。それに、もっと強くなる」

少しからかった私の言葉に焦りながらも、ルカは真摯な言葉で返してくれた。

もっと強くなる、か。
明日から、朝練のやり方を考えなければな。
清々しい気持ちだった。

完敗だ。

「ルカ、どういうこと?」
「すごすぎませんか!?」

テオドールとクリフトに詰められているルカを見ながら笑っていると、スッと横にシュラ先生が立つ。

「どう?すごいでしょう?」
「はい」

二人に肩を捕まれ、オロオロしながらも返事に困っているルカは、先程まで剣を合わせていた人物と同じとは思えないほど、幼い。

「あれだけ楽しそうにされちゃあ、必死なこっちが馬鹿馬鹿しくなるけど、惹かれるでしょう?どうしようもなく」
「そう、ですね。敵う気がしなかった相手は初めてです。目指す相手は遠い。でも、手は伸ばします」

シュラ先生はふっと笑うと「気持ちが分かるわ」と言った。
先生にもそんな相手がいるのだろうな。
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