前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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侮り

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やばい。
久しぶりの打ち合いだと思って楽しくなってしまった。
テオが回復魔法を唱えてくれているからすぐ痛みはなくなるとは思うけど……かなり痛かったよな。
寸止めすれば良かった。
また、シュルツのお説教か……みんなの前ではやめて欲しい……。

「テオドール、もう大丈夫だ。すまない」
バーンがうずくまった状態からゆっくりと起き上がる。

良かった!
バーンに駆け寄る。
「バーン、ごめんな。俺……」

「ルカ。黙って」

シュルツの厳しい声が飛ぶ。
皆、その場で動きを止めた。

「まず、クリフト」
「はい!」
「状況を説明なさい」

少し呆然としていたクリフトがはっと気を取り直し、その場に立つ。
「ルカがまず剣を構え、その後にバーンも剣を構えました。それからルカが即バーンに走りより、左側面から木剣を打ち込み、バーンもそれに気付き対応しようとしましたが、ルカの方が早く、そのままバーンの左脇に一撃です」

シュルツが感心しながら頷く。
「よく、見てたわね。では、敗因は?」
少し困惑しながら
「速さ……でしょうか?ルカの速さがバーンを上回った、という」
「違うわ。ルカもバーンもクリフトの目が追える程度の速さだったし、まだ最初の一撃だから身体もほぐれてない。お互いね。通常のバーンなら対応できたはずよ。では、なぜ対応できなかったの、バーン?」

バーンもその場に立つ。
「……まだ、ルカと手合わせをする気持ちの準備ができていなかった。そのために、ルカの速さについていけなかった。それが敗因です」
「気持ちの準備……ねぇ」
シュルツのバーンを見る瞳が険しい。

「テオドール」
名を呼ばれたテオもスッとその場に立った。
「私はあなたにバーンの回復をしろと言ったのに、ルカに促されるまで何もしなかったわね?それは、なぜ?」

「目の前で起きたことが信じられなくて。まさか、と思っていたら初動が遅れました」
テオは項垂れている。

「バーン、テオドール。あなた達はルカを侮っていたわね?それが敗因のすべてよ」

えぇー!
俺、侮られてたの!?
ま、まぁ、そうか。
木こりの息子だしな。
バーンとも手合わせしたことないし。
なら、俺だけ張り切って斬り込んでいったの余計にマズイな。

「木こりの息子だから弱い?自分が鍛練してるから?まさか、あのバーンが負ける訳がない?そんな思い込みのせいで、ココが戦場ならバーンはとっくに死んでる。私は常に実戦の気概で臨めと最初に説明したはずだけど?」
二人ともうつむく。
シュルツの言う通りではある。
相手を侮り死んでいく奴をたくさん見てきたからな。

「相手が女だろうと、子供だろうと、剣を構えた以上は対等よ。相手が戦意を失い、降参するまでは」
「「申し訳ありませんでした」」
二人がシュルツに深々と頭を下げる。

「ルカ、お前にも謝罪しよう。すまない」
「俺にはいーよ。俺こそ、張り切っちゃってごめんな。痛かったろ?」
バーンは俺に向き直り、俺にも頭を下げた。
律儀な奴だ。

今回のことは怒られなくて良かった。
二人には良い経験になっただろうしな。
俺も二人の役に立てたなら、嬉しい。

次はバーンも本気でくるだろうからな。
よっし、手合わせ楽しみだ!

「……ルカ」
え。

「貴方……手を抜いたわね?」
シュルツ、いや、シュラ先生は、顔は笑っているのに目が怖い。

「て、手は抜いてません」
「へぇ?」
次はちょっとバカにした感じで笑ってる。
「クリフトの目は誤魔化せても、私の目は誤魔化せないわよ?貴方、バーンに斬り込んで行く途中で、木剣の持ち手を変えたわね?バーンが左手に木剣を持っているのを見て、止めやすい左側に打ち込めるように」
「……」
「まぁ、残念ながらバーンは左側でも貴方の速さに遅れてしまって木剣が当たったけれど、それも寸前で力を抜いたわね?あんなに斬り込む体勢で打ち込んで、痛みでその場にうずくまる程度で済むはずがない」
「……」

ば、バレてる……!
やっぱり、怒られるのは俺か!!
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