前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

文字の大きさ
上 下
57 / 146

面倒事~シュルツ視点~

しおりを挟む
「ちょっと、どういうこと!?」

執務室で書類を片付けていると、ネラルが来て明日からあの三人もルカと一緒に指導しろと言う。
「そのままの意味です。ルカだけに貴女の一日を割くのは過分すぎるでしょう?私の負担も大きすぎる」

確かに、顔色が悪い。
「だから、書類仕事はやってるわよ?」
「当たり前です。それは貴女の元々の仕事でしょう?ルカに着くことによって、私の負担が増えただけで、貴女の負担は減っている。貴女の我が儘のせいで、です。そもそも、落ちこぼれのルカなら、中央から誰か新任の教師でも送って貰えばいい。ルーツの出身の者なら、勝手も分かっていていいでしょう?それを断る意味は?」
「ルカは落ちこぼれではないわ」

今日の魔法も……正直、私も無詠唱であれほどの破壊力の魔法は……打てないかもしれない。
それを、あんなに簡単に……。
でも、それをネラルに知られる訳にはいかない。

「落ちこぼれではない?どの辺が?」
「知識はないけど、素養がある。伸ばしたいのよ。傑物になるかもしれないわよ?」
「はっ、冗談を」

まぁ、そうなるわよね。
どこが、落とし所か……。

「とにかく、あの三人は特別優れています。だからこそ、このままでは授業に弊害が出る。突出した才能は他の者の成長の糧にはなりません。それに、あの三人は確実に中央に行くでしょう。貴女が指導すべきだ」
ネラルの意見が正しい。
ルカの事情を話せないのだから、仕方ない、か。

「分かったわ。じゃあ、明日から私が四人を指導する。それでいいのね?」
「節目には、それぞれにも顔を出して下さいよ。貴女に指導して欲しくてここの寄宿学校に入れた貴族もいるでしょう。あの四人にかかりきりでは困る。特にルカはただの平民の子息。あの毒の一件で終息しないかもしれません」

はぁっ。
面倒。
もう、立場なんてどうでもいいから、ルカと田舎に引きこもりたい……なんて、ルカ本人が許してくれないでしょうけど。

「はいはい。分かった。もう休みなさい」
「失礼します」
一礼し、ネラルが退室した。

はぁっ。
今日はずっとルカを怒ってしまった。
自覚を持って欲しい。
自分が、稀有な存在であることを。
前も今も、ルカ本人が一番自分の価値を分かっていない。

自由奔放というか天真爛漫というか……。

前も振り回されていたが、結局大人になり地位を得ても、自分は振り回される運命なのか。
苦笑が漏れる。

コンコンコン。
執務室にまたネラル?
「どうぞ」

扉を開けたのはネラルではなく、文官の制服を着ていた。
中央からの通達?
「宰相閣下からの通達をお伝えに。明後日、ルーツ寄宿学校に視察に来られるそうです」
「視察!?なぜ……」

まさか、ルカのことが何か漏れたの?

「先日の毒の一件で、ロレーヌ辺境伯から視察の打診があり、宰相閣下が受け入れた形です」

ロレーヌ辺境伯にもオルレラ侯爵にももちろん、毒の一件は知らせた。
命に関わるものではなかったが、やはり伝えておかなければならないことだから。
もちろん、この一件で大切な子息を預けてはおけないと転校するかもしれないとは思ったが、特に何も連絡はなかった。
何かあれば私に連絡があると思っていたが、まさか直接中央に……!

「……分かったわ」
「失礼します」

次から次へと……!
明後日か。
ルカを……あの方の目から隠し通せるかしら……。
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

処理中です...