前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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光~シュルツ視点~

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ネラルから学生が毒に侵されたと連絡が入り、その中にルカの名前があった時には心臓が止まりそうだった。
慌てて転移して向かうと、まさかの加害側として疑われていて、少し笑ってしまった。

ルカが誰かに毒を……?
むしろ、そのくらい想われてみたい。
いつでも、そんな毒なら浴びるほど飲みたい。
そんなことを考えている自分に苦笑する。

それよりも問題はその毒だ。
テオドールとバーンを狙ったには稚拙すぎる。
そう思っていたら、ルカの話を聞くと狙われていたのはやはりルカだった。

ルカは光だ。
誘蛾灯のように、いろんなモノが引き寄せられる。
私やここにいる三人のように魅せられるモノもいれば、自分と比して苛立ちその光を消そうとするモノもいる。

前世のルカもそうだった。
以前はその地位もあり、手を出せる輩は少なかった。
でも、今は違う。
性質はそのままなのに、地位は平民。
いくらでも、害せる。

まさか、毒を使ってくるなんて……。

また、失うことになる。
そんなことになるくらいなら。

先に手を打とうかしら?
その子爵家の奴らを皆殺しにするくらい、なんてことはない。
でも、それをすると、ルカは私を許さない。
もう、側にいられない。
もちろん、生きていてくれるならそれだけでいいのだけど。

魔法や直接的な攻撃であれば、今のルカでも防ぎようがある。
以前ほどではないにしろ、素養はあるはず。
早く、身を守れるようにしなければ……。

ネラルから二人が目を覚ましたと連絡がある。
まぁ、昨日のルカの話で二人には関係ないと分かったから、特に話を聞く必要はないけれど。
あの毒なら抜けても身体はキツイだろうし、回復魔法ももう効かないから、一応様子を見に行こうかしら。

医務室に転移すると話し声が聞こえる。
ルカとクリフトがすでに来ているのね。

「でも、俺、そいつらとちょっと話しただけだぞ?何もやってないのに、毒なんか……」
「ルカ」
「貴族は、平民を害しても罪にはならない」

そう。
ルカにはそんな輩、理解出来ないでしょうね。

「でも……」
「目障りな平民を苦しめることなんて、遊びのようなものなんです。彼らにとって、悪ふざけにすぎない。それで死んでしまっても、特に何も心は揺れない。動物が消えたくらいの感覚です」
「そ、んな……」

ルカが、ショックを受けている。
貴族とはそんなもの。
生まれついての特権階級は悪弊ばかりを生む。
でも、私もそう。
まぁ、私は特殊かしら?
貴族、平民、どちらの命にも特に価値は見出だせないもの。

でも、ルカは違う。
すべての命は平等で、すべての命を救おうとする人だから。

「大丈夫。僕たちがこれから変えるんだ。そのために、ココに来たんだから。ね?」
「すべての貴族がそんな意識な訳ではない。だが、実態はこうだ。ルカ、お前が毒に触れなくて良かった。これは我々の受けるべき毒だった」

同世代の友情?
貴族の二人が平民のルカを庇うという美談ね。
そして悪しき慣習を変えてみせると?
ふっ。
可愛いこと。

「問い詰めても、証拠もなく、はぐらかされるだけです。むしろ、侮辱したと罪に問われる可能性もある。もしかしたら、そこまで考えて組まれているかもしれません。悔しいですが、なす術がない。でも、これで終わるとも思えません。また何か仕掛けてきた時に罪を暴くことができるかもしれない。待てますか?ルカ」

そうね。
ルカならば、正面突破でしょうけど、クリフトの言う通り意味がない。
ルカは何も言葉を発することなく、頷いている。
きっと、心中穏やかではないんでしょうけど、成長かしら。
それがこの子達三人の言葉からだと思うとちょっと、悔しいわね。

「大人になってるじゃない、ルカ」

ルカが、こちらを向く。
目が合うだけで、鼓動が早まる。
私も重症ね。

「二人、体調は大丈夫そうね?話は聞いたわ。賢い選択よ。貴方達の中でそう決めたのなら、こちら側からは何もしないわ。常に警戒を怠らないこと。特に、ルカ」
「分かってます」
「そう?」

本当に分かってる?
微笑み、ルカの近くまで歩みよる。
そして、その耳元で囁いた。
「ルカにもしものことがあったら、この寄宿舎にいるガキは全員殺すわ」
「なっ……」

驚きの声をあげたルカ。
冗談じゃないのよ?

「みんなを守るためにも、自分のことを大切に、ね?」
驚いた顔のルカに満足しつつ、転移魔法で執務室に戻る。

ふっ。
あのルカの驚いた顔!
きっと、今頃は三人に必死で言い訳してるのかしら?

あぁ、ガキどもだけじゃない。
ルカに何かあったらもちろん私も生きてないもの。
置いていかないって約束したものね?
次はどこでも連れていってもらう。

コンコン。
部屋をノックする音。
「誰?」
「私です」
「どうぞ」

ネラルが書類を携えて入ってきた。
「また貯まってますよ。早々に処理して下さい」
「はいはい。」
ちゃんとお仕事もしなきゃね。

「あぁ、明日からのルカの個人指導、やはり私がやるわ」
「シュラ先生が直接ですか?さすがにそれは贔屓だと不満が出るのでは?また今回のようなことに……」
「いいのよ、その方が。早く処理してしまった方が気にならなくていいでしょ?」
ネラルがため息をつく。
「分かりました」
一礼して退室していった。

明日から、私がルカの先生。
楽しくなるわ。
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