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救国の騎士ルカ

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講堂に着くと、三人は後方の席に着いていた。
その隣の空いてる席に座る。
「遅いぞ、ルカ」
「わりぃ」
今にも授業が始まるのか講堂は静まり返っていて、小声で話す。

俺が席に着くのとほぼ同時くらいにネラル先生が登壇した。
ギリギリだ~危なかった!

「今日は基礎的な授業の最終日ということで、特別授業です。歴史的な人物になってみましょう」

歴史的な人物になる?
どういうことだ?

「救国の騎士、ルカ。みなさん、ご存知ですね?貴方たちが生まれた年にルカはディーグからの攻撃魔法から国全土を守るため、防護魔法をかけました。たった一人が国全土に防護魔法をかけるということが、どれほどの偉業か……分かりますね?」

俺、いや、前のルカの話か?
でも、そのルカになる……とは?

「ここで皆に考えて欲しいのは、もし自分がルカだった場合、ということです。これから先、我が国がどんな危機に陥るか分かりません。その時の皆の判断を問いたい。自分がルカだったと仮定し、行動を各自考えて下さい」

なるほど、そういうことか。
それぞれの立場で行動は変わってくる。

「ここで一つ。魔法、剣術、国政、それぞれの立場から、ではありません。ルカだったら、ということを忘れないで下さい。自分をルカ本人に置き換えて、最善の行動を考えるのです。状況も全て当時のまま、とします」

えぇ!?
難しいな。
あの時、いろんな道があったが、これが最善だと思って選びとったんだ……他と言われてもな……。

暫く、沈黙の時間が続く。
俺も必死で考えるが、特に思いつかない。
まぁ、俺が思いついてちゃダメなんだけど。

でも、俺はみんなの意見が楽しみだった。
あの時の俺は、ディーグの情報を得てから判断するまで一瞬だった。
誰にも相談せず、そのまま実行した。
どうしても、シュルツのことだけが心配で、その根回しはしたが、行動を決めてから実行に移すことに迷いはなかった。
俺にとって、この道が最善だったからだ。

だが、改めてネラル先生に問われると、他の道が最善だったのかもしれないという揺らぎを感じた。

「休憩をはさみます」

ネラル先生の言葉に、重い雰囲気からふっと解き放たれる。

「難しいね」
テオは苦笑しながら立ち上がって伸びをした。
「ルカと同条件となると、事前に何か予防策を、ということができません。ディーグの情報を得てから数時間で……何ができるのか……」
「……」
クリフトもバーンも良い案がうかばないのか、顔を曇らせる。

俺は複雑な気持ちだった。
あの選択は間違いではなかったと思っているが、心の何処かで間違いだったと否定してもらいたいと思っている自分もいる。
アクラムとフォルクスの最後の叫び声は今でも耳に残っているようだし、長年シュルツも苦しめた。

そんな俺の選択は……正しかったのか?

「ルカまで思い悩まれると、調子が狂うね?」
テオがおどけて言う。
そんなに俺の顔は暗かったのか。
「そうですか?ネラル先生の宿題をやっている時のルカの方が悲壮感漂ってますよ」
「違いない」
クリフトもバーンも、わざとおどけて明るくしてくれようとしている。

「お前たち!俺が真剣に考えてるのに、バカにしてるなー!」
四人で笑う。

「そうだな……俺がもし救国の騎士のルカで、お前たちが側にいたら……全員でディーグに乗り込むか!」
「いいね!」
「アリ……ですね」
「必ず勝つ」
四人で不敵に笑う。

そうだ。
今なら、俺はそうするかもしれないな。
最善の道は、一つじゃない。
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