前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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キラキラした世界~クリフト視点~

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「なぁ!みんなで食堂にご飯食べに行こうぜ」

ルカの眩しい笑顔とこの一言で、先ほどまで三人で醜いルカの奪い合いをしていた俺たちは一時休戦で食堂へ向かう。

「クリフトは食堂へ行く意味あります?食べないんでしょう?」
テオドール様……まだ続けるのか?

「なぜ食べないんだ?」
「昔いろいろあって、ちょっと潔癖症なんですよ。まぁ、全く食べられない訳ではないんですけど、基本的に知らない人が作った物はあまり。まぁ、栄養素は薬で摂ってますのでご心配なく」
バーン様に今まで何度もしてきた説明を繰り返す。

ルカは先頭でウキウキと食堂へ向かっているのでこの会話は聞こえていない、か?
あまり、心配はさせたくない。
朝食を食べないと伝えた時でさえ、何か言いたそうな顔だった。
ルカにとって、食事は楽しい時間なんだろう。
俺にとっては苦痛でしかないが、ルカにあんな笑顔で誘われたんだから答えたい。

先ほどの三人の会話ではっきりしたが、テオドール様とルカの不可侵の約束をした時よりも、焦りが強い。
首席を、ということもそうだが、お二人が強敵すぎる……。

テオドール様は見た目は可愛らしく、庇護欲をそそられる。そして、聡明だ。
腹黒い。が、ルカの前では出さない。

バーン様は見た目は美丈夫、雄々しく、統率力に優れ、全ての面で完璧。
ただ、高位貴族ゆえの傲慢さがある。が、ルカは気づいていない。

その点、俺は……。
見た目は、まぁ悪くはないが、テオドール様やバーン様のような輝かしさはない。
金はあるが、地位はなく、能力としてもお二人には劣るだろう。
何よりも、魔力がない。
努力は……してきたつもりだが、それはお二人も同じこと。
首席を取る自信はある。バーン様にも他の奴らにも負けない。

だが、思いを伝えたとしても……ルカに受け入れて貰える自信がない。

同室という、お二人よりも長くルカと共に在ることができる分有利なはずが……。
今朝の体たらくを思い出し、ため息をこぼす。

幼い頃から潔癖症だったせいで、性的な接触を避けてきた。
セリアン商会の子息だということで言い寄ってきた奴らは女も男も掃き捨てるほどいたが、一切興味はなかった。
それが、ルカを性的な目で見ていると自覚したことで、ふとした仕草だけで高ぶってしまう。

むしろ、同室ということで、これから支障がでることばかりじゃないかと気が重い。
それでも、この幸運を離したいとは思わないが。

鬱々とした気持ちで歩みを進めているうちに食堂に着く。
人が多い時間帯だと思ったが、食堂はぐっと人が少ない。
シュラ先生の脅しともとれる話で、早速辞めたり、転学したりしたんだろう。

「おっ、今日は少ないな!」

ルカはそんなことには気づきもせず、ただ人が少なくて良かったと言っているが、テオドール様とバーン様は気づいたようだ。
残っている者は少なくとも卒業できるという自信がある者達、これから自分達が争うことになる者達のため、周囲を見回し品定めしている。
テオドール様は無表情だが、バーン様は明らかに侮った顔だ。
敵はいないとの判断だろうな。

ルカは嬉々として盆を持ち、いろいろな料理を乗せている。
厨房にメインを注文している間、俺が席を取っておこうと、とりあえずの軽食を盆に乗せ移動する。

窓際の席を確保し、お二人にも座って頂く。
風が涼やかでいい。

「やっぱり、食べないんじゃないか」
「まぁ、そこまで食指が動くような品はないが、所詮は寄宿舎の食事だ。致し方ない」
豪華だろうが、結局は同じだ。
人が触れた物に不快さを感じるのだから。

ルカもようやく大量に料理を乗せたお盆を持ち、席に座る。
目をキラキラさせながら、お盆の料理を見つめている。

可愛い。

思わず口に出してしまいそうだった。
テオドール様もバーン様も同じことを思っているのだろう。
お二人とも目が優しい。

ルカはふと俺のお盆を見ると眉間に皺を寄せる。

「クリフト、やっぱりダメなのか?」
あぁ、先ほどの話を聞いていたのか。

「心配しないで下さい。食べられないというより、食べたくないというだけなので。それより、冷めてしまいますよ?」
「あぁ……いや、ちょっと待ってくれ!」
ルカは立ち上がると、突然厨房へ向かう。

三人で顔を見合わせる。
どうしたんだろう?

「思ったよりも減ったね」
「情けない。残っている連中も覇気のない奴らばかりだ」
ルカが席を離れている間、お二人はまた周囲に目を光らせる。

「あと、心配なのはルカに対しての嫌がらせだね。僕らは目立つ。その僕らと一緒にいるんだから、ルカを邪魔に思う連中がいるはずだよ」
「ふん、下らない」
「まぁ、ルカが一人になることはあまりないでしょうが、気をつけておいた方がいいかと。ルカはその辺は疎そうですから」

好意にも悪意にも疎そうだ。

しばらくして、ルカがお盆に何か乗せて戻ってきた。
まさか、足りなかったのか?

「クリフト、知らない奴が作った物は食べたくないって言ってたから、知ってる俺が作った物は美味しく食べられるかもと思ってな!試しに俺が厨房のおばちゃんに頼んで作らせてもらったんだ。どうだ?味見もしたし、なかなか上手くできた!村にいた時は作ってたから心配するな!」

三人とも目を見開く。
わざわざ?
貴族のお二人にはより信じられないだろう。
ルカの手元を見ると、肉と野菜を炒めたような物を皿にもっている。

「俺のために?作って……くれたのか……」

ルカは満面の笑みで頷く。
「食べるって、幸せだって思って欲しかったんだよ!」

胸が熱い。
その無償の行動力。

ルカの作った料理を一口食べる。
口の中に甘い肉汁と野菜の食感……噛む毎に旨味が広がっていく。

あぁ、これが美味しいってことか。
俺があの時なくしたモノ。

「どうだ?」
「美味しい。幸せな味だ」

2人で破顔する。
ルカのキラキラした世界だ。

「この先もずっと、ルカの作ったご飯が食べたいです」
「クリフト!そんなにうまかったのか~!嬉しいな!卒業したら、一緒に暮らすか!」

「なっ……」
「ちょっ……」

お二人の焦った声。
「ふはっ」
思わず、吹き出してしまう。

ルカの冗談に、本気で焦っている。
自信がないのは、 俺だけじゃない。

「僕も食べたい」
「私のはないのか?」
「これはあげませんよ?」

まだ、勝負は始まったばかりだ。
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