前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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過去との邂逅

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「宰相閣下、ルーツ寄宿学校より火急の問い合わせがあり、判断を仰ぎたいとのことですが……」

閣議の書類に目を通していると、技官が封書を持って執務室に走り込んでくる。

火急の問い合わせ……?
ルーツ寄宿学校はシュルツの管轄か。
シュルツが判断できない案件とは……。

技官から封書を受け取り、目を通す。

「水晶玉が、割れた?平民の少年?」

まさか。
かなりの魔力量がなければ、なし得ないことだ。
しかも、それが平民。
高位の貴族ならば、まだ考えられる。
両親ともに魔力量が多い場合、子供も準じて多い。
禁じ手ではあるが、魔力量を高める方法もある。

平民から突然魔力量の多い者が生まれるとは……考えにくい。

なぜ、割れたのか。

平民ならば、尚更何か術を用いることもできないだろうし、元々そのような不正ができないようにしてあるはず。

……分からない。
シュルツが判断を投げてくる訳だ。

「とりあえず、その少年を入学させ、自由に振る舞わせろ。行動に注視し、逐次、報告するように伝えろ」
「御意」

技官が去り、執務室に静寂が訪れる。

魔力量の多い少年、か……。
ふと、あの方を思い出す。
あの方ならば、面白がってすぐその少年に会いに行っただろうか。
その様子がありありと浮かび、思わず笑む。

書類から目を離し、ゆっくりと目を瞑る。

あの方が命を懸けて救ったこの国を、自分は導けているだろうか?
褒めて、頂けるだろうか?

あの日のことをいくら悔やんでも、もう在りし日は戻ってこない。
奥歯を噛みしめ、ぐっと瞑った眼に力を込める。

ふっと力を抜き、再び閣議の書類に目を通し始める。
問題は山積みだ。
シュルツに任せ、報告を待とう。




「シュルツ様、宰相閣下よりご返答です。『その少年を入学させ、自由に振る舞わせろ。行動に注視し、逐次、報告するように』とのこと」

「分かったわ」

もしかしたらココまで視察に来るかも、と思ったけれど、さすがに忙しい、か。
名前まで、伝えれば良かった?
そうすれば、宰相閣下も目の色変えて来たかしら?
わざわざ、私が指示を仰いだんだから少しは気にしたはず。
まぁ、名前はたまたまだとは思うけれど、私でも驚いたんだもの。

「ルカ……」

久しぶりに、その名を口にする。
貴方のいないこの世界で生き続けることが、残された私達の罰だもの。
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