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テオドールと従者~バーン視点~

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水晶玉が光を放つ……かなりの光量に会場がどよめく。

「さすがです~バーン様~」
「今年一番はやはりバーン様ですね!」

下級貴族の媚びへつらう態度はもう飽き飽きだ。
私はすぐさま会場を後にし、自分の寄宿舎の部屋へ向かう。

寄宿舎は基本、二人部屋だが、侯爵以上の貴族には個室が与えられる。

魔力量測定が終われば、あとはコース選択……私は魔法も剣術も極めたい。
かの、救国の騎士のように……。

私ならば、可能なはすだ!

事前に知らされていた部屋へ向かう。

そこは自室よりは質素だが、十分な広さがあり、屋敷から運ばせている書籍なども置く場所には困らなそうだ。

ここで一年間、様々なことを身に付け、いずれこの国に名を馳せるのだ。

母上もきっと、喜んで下さる。

……部屋の外が騒がしい。
何事だ?

「すごい光量だった!」
「従者を従えていたが、名のある貴族だろうか?」
「バーン様とどちらが上だろうか?」

私と同じレベルの者が?
誰だ??

このまま自室で休もうと思っていたが、どんな奴か気になる。

もう測定は終わっているだろうから、寄宿舎に来るな。

見に行ってみるか。

自室を出て、入り口の方へ向かっていると、二人の人影が見えた。

一人は……ロレーヌ辺境伯テオドールか。
もう一人は、黒髪黒目の質素な身なりの男。
テオドールの従者か?
ということは、さっきの話はテオドールのことか!

こやつならば、分からなくはない。
同年のため、何かと父上に同行したパーティーでは比べられてきた。
いつも飄々とした態度にイライラしていたものだ。

「私と同じ光量の者がいると聞いたら、お前かテオドール」

二人が驚いて振り返る。

「……バーン様」

テオドールは私に気づくと、すっと頭を下げる。

ん?従者は無反応だ。
侯爵子息を前に驚いているのか。

「お久しぶりです。同じ寄宿学校なのですね?中央へ行かれるとばかり思っていました」

相変わらず、慇懃無礼な男だ。
お前など血筋だけだと目が訴えかけてくる。

「ふん。私はお前のことなど気にしてなかったが、光量が強い者がいたと聞いてな。まぁ、お前なら私の次には魔力があってもおかしくないな。わざわざ、あんな訓練までしたのだから。私には必要ないが」

自らの命を賭けるような訓練をしているとテオドールの父親が自慢げに話しているのを聞いた。

私は魔力量には元々自信があり、魔力量測定は特に何も対策などしていない。

あのような過酷な訓練をしたのだから、テオドールは私に迫るほどの魔力量を得るのは当然だ。

「褒めていただいて、ありがとうございます。バーン様が耐えられないような訓練を経てこられたことを誇りに思います」

私には必要なかっただけで、耐えられないとは言っていない!

「誰が耐えられないなどとっ」

「おい、お前」

突然従者に声をかけられ、驚いて振り返る。
しかも、私をお前だと?

「お前、態度デカイな」

従者が私をお前と呼び、態度がデカイなどとっ……

「なっ……貴様、私を誰だとっ」

「知るか。テオは俺の友達だ。テオをバカにするな」

テオドールの友達?
従者ではないのか?
私はテオドールをバカにしたつもりはないのだが、そう捉えられるような言動だったのかもしれない。

自分の失態に眉間に皺がよる。

「バーン様、彼は平民ですので、ご容赦を…」

テオドールがこの男を庇う……ということは、やはり従者ではなく同年の寄宿生か!

「テオ!様をつけるな!ここでは身分差は関係ない。じゃないと、俺たちも友達になれない」

この男の言うことは正しい。
この寄宿学校は身分差関係なく学ぶ場だ。
皆、自らの力のみで切磋琢磨し、本来の立場を越えた絆を結び合う。

私はその理念を誰よりも理解していると思っていたのに……テオドールや他の者に様を付けて呼ばれることに対し、何も思っていなかった。

本来、私のような上の者が示すべきことを、平民に諭されるとはっ……。

「……っ、そのようなことを言われなくとも、分かっている!テオドール、お前もここにいる間は好きに呼ぶといい。……お前、名は?」

この者の名前が知りたい。

「ルカだ!よろしくな、バーン!」

ふわりと、抱き締められる。
私の肩に優しくトントンと触れる。

誰かの体温をこんなに近くに感じるのは……母上以来だ……。

温かい……もっと触れていたい……もっと近くに……。

!!
私は…何ということを思って……!


「な……なっ……」

ルカが美しい黒曜石のような瞳で見上げてくる。
これ以上見つめられると、強く抱き締めてしまいそうだ!

「わ、私は、これで失礼するっ」

早く、早くこの場から去らないと。
醜態をさらしてしまいそうだっ。
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