前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる！はずが囲われてます！？

穏やかな毎日

「おはよう、ルカ」
「おはよう、父さん」

朝早く目覚め、父さんと朝の挨拶を交わす。
それから、ためていた水で顔を洗い、朝ご飯の準備だ。

主に森で採ってきた果物やキノコ、野草などを食べる。

たまに仕掛けた罠にかかった兎や野鳥を夕食に食べることもあるが、それは本当に稀で、そんな時は二人で小躍りするくらいだ。

その後は父さんの木こりの仕事を手伝う。
と、いっても、子供の俺にはたいしたことはできない。
家の竈に使う小枝を集めたり、食事用のキノコや野草を採ったりするぐらいだ。
父さんは村で自由に過ごしていいと言うが、俺は早く仕事を覚えたかった。

父さんに楽をさせてあげたい。

そもそも、家にいてもやることがない。
このキキの村には、俺と同年代の子供がいない。
なので、一緒に遊ぶ相手もいない。

精神年齢が25歳の俺にはむしろ、ありがたかった。
村の人達も俺を自分の子供や孫のように大切にしてくれる。

悪い人もおらず、犯罪もない。

村全体が裕福ではないが、ゆっくりとした時間が流れ、心地よい。

幸せだな、と思う。

前世とは全く違う生活だ。
この生活を守ろう。


そんな穏やかな暮らしが続いたある日、俺は、16歳になった。

「ルカ、おはよう。誕生日おめでとう」
「父さん、おはよう。ありがとう」

16歳はこの国の成人だ。
一応、成人すると決められた地区の寄宿学校に一年間通うことになっている。
でも、俺の夢は父さんの跡を継いで木こりなので寄宿学校に行く意味がない。

「ルカ、寄宿学校に行かないか？」
「へ？」

いつもの朝の挨拶からの朝ご飯の支度中、突然の父さんの言葉に驚いた。

「いや、僕は特に行きたくないんだけど……」

「母さんと父さんが出会ったのが、寄宿学校だったんだ」
「えぇっ！？」

驚いた。
父さんもてっきり行ってないと思ってた。

「父さんは魔力もないし、勉強もダメでな？結局、木こりになったんだが、アイラと…母さんと出会えただけで行った意味あるだろ？」

照れ臭そうに笑う父さん。

「ルカは父さんと違って、何か才能があるかもしれないだろ？もしかしたら父さんと母さんみたいに、運命の出会いがあるかもしれない！一年間だ。行ってみろ」

「父さん……」

正直、興味ない。
知識はたぶん、この地区の寄宿学校の教師よりある。
それにそんな知識、木こりには必要ない。

あとは女の子か……前世では誰も近寄って来なかったな……。

可愛い女の子と寄宿学校生活……分からないことを教えてあげたり、一緒に課題に取り組んだり……

アリ、だな。

「父さん、俺、行くよ！」