運命なんていらない

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「……ぐっっ」

何度目かの精を放つ。
ティッシュで拭くのもおっくうで、そのまま手をシーツに擦り付けた。

「まだかよ……くそがっ」

放ったばかりなのに、また緩く芯を持ち始める自分のペニスを忌々しく握ると、荒々しく擦り上げる。
気持ちよくもない。
ただの、作業。
やらなければならない。

ハァハァと息は上がり、早く終わらせたくて上下のスピードを上げる。
頭の中は出すことだけで、目をきつく瞑り、歯を食い縛る。

「あーあ、またそんなにして」

弾かれたように目を開けると、蒼が目の前に立っていた。

「なっ、なん……でっ……来るなって」
「ごめんね……でも、約束守ってもいいことなかったしね?」

前回のヒートはひどかった。
薬があまり効かず、一週間苦しみ続け、擦りすぎた俺のペニスは精液と血にまみれていた。
食事も水分すら取っていなかったため、即入院。
蒼にひどく怒られた。

「あ、れは……薬が効かなかったか、らっ……もう薬も変えたっ帰れ!!」
「帰らない」

一気に部屋に充満する匂い。
息ができないっ!
αのフェロモン……欲しい……思考が溶ける……

「あ、あおっ……」
「カナ、おいで」

甘い声。
吸い寄せられるように蒼の足元にしがみつく。

「いい子……」
「あおっ、欲しいよぉ……イキタイッ」
「いくらでも」

蒼が左手の親指ででそっと頬を撫でる。
俺は顔を動かし、赤子のようにその親指に吸い付いた。
夢中でしゃぶりつく。
そんな俺を食い殺しそうな目で見ている蒼のことなど見ていない。

「美味しいの?可愛いけど、煽られるとどうなるか分からないよ……ひどくしちゃうかも……」

左手の親指をしゃぶり続ける俺の頭を数回右手で撫で、器用にはいていたジーパンのボタンを外す。
ジーパンごと、ボクサーパンツを下ろすとフェロモンの匂いがより濃くなった。
俺の目の前には自分のペニスとは比べ物にならないほど太く、赤黒いペニスが勃ち上がっていた。

俺は恍惚として、親指から離れその雄にむしゃぶりついた。

「指よりそっちの方が美味しいの?」

咥えながら、素直にコクコクと頷く。

「いい子だね……」

優しく頭を撫でられる。
夢中で咥えていると、優しく頭を撫でていた手に力がこもり、ぐっと喉の奥に押し込まれ、腰を引かれ、また押し込まれる。
苦しくて、えづきそうになるが、カリの部分を何度も上顎に擦り付けられ、体がビクビクと反応する。

「出すよっ」

酸欠で頭が真っ白になりかけた時に、喉に大量の精液が流し込まれる。
引き抜かれたペニスの代わりに流れ込んでくる空気と精液にむせる。

「げっぇっ、ごっっうっ、はっふっっ」
「ゆっくり息して。大丈夫?」

吐き出しきれず、空気と共に飲み込んでしまった精液の生臭い味で意識が少し覚醒する。

「上手にイケたね?」

言われて下を見ると、自分のペニスからも何度も出したため薄くなった精液がチョロチョロと出ていた。

「もう強く擦っちゃダメだよ……赤くなってる」

蒼にそっと触れられた俺のペニスは赤く爛れ、ピリッと痛んだ。

「今はちょっと落ち着いてる?水分摂らないと」
「……あぁ」

渡されたスポーツドリンクを飲む。
口がすっきりした。

「軽く食べられる?まだ二日目くらいでしょ?食べられる時に食べておいた方がいいよ」
「いらねぇ」

ヒート中は食欲がでない。
せめて水分だけでも、とスポーツドリンクを飲みきる。

「もう、帰れ」
「帰らない。まだ治まってないでしょ?仕事は休みをもらってきたから大丈夫だよ」
「いいから、帰れ」
「帰らない」

蒼からαのフェロモンが香る。
やばいっ……意識が溶けるっ。

「てっめぇ……」
「おいで。今度は僕が舐めて上げる」

ふらふらと蒼に近寄る。
俺はまるで、誘蛾灯に群がる蛾だ。

蒼に抱きしめられ、濃いフェロモンを感じ、意識は溶けた。
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